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コールドプレイのクリス・マーティンにバンドの大切さを伝えたU2と「ワン」

2017.06.13

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2000年代にもっとも成功したロックバンドの1つ、コールドプレイ。
彼らの音楽にはレディオヘッドやトラヴィス、R.E.M.など様々なバンドの影響が垣間見えるが、それらと並んで多大な影響を与えているのがU2だ。

ボーカルでソングライティングも手がけるクリス・マーティンが、U2のアルバムを初めて聴いたのは1991年、14歳のときだった。
そのアルバムとは、発売されたばかりの新作『アクトン・ベイビー』。このときの衝撃について、クリスは2004年にローリング・ストーン誌で以下のように語っている。

彼らが生み出すサウンド、つまりはドライブ感のあるベースと地の底から響くドラム、そして上空で漂うこの世のものとは思えないギター・エフェクト、それらはこれまで聴いたことがないものだった。
こんな賛美歌のようなロックバンドは他にないんじゃないかな。
間違いなく彼らは最高だよ。


クリスは半年に1枚のペースでU2が過去に発表したアルバムを購入していき、全ての作品の名前を暗記してしまうほどU2に夢中になった。

ところで『アクトン・ベイビー』は、それまでのU2のサウンドから大きく舵を切り、ダンス・ビートを取り入れたりしたことでU2の新たな方向性を示した作品だ。



しかしこのアルバムを制作しているとき、バンドは解散の危機にさらされていた。

1990年の10月、U2のメンバーは、東西再統一されたばかりのベルリンにあるハンサ・スタジオに集まっていた。
新しいアルバムを制作するにあたり、ボノとエッジはエレクトロニック・ダンス・ミュージックを取り入れることで、さらなる進化を目指すべきだと考えていた。

それに対しベースのアダム・クレイトンとドラムのラリー・マレン・ジュニアは、これまでのサウンドを維持するべきだとして、真っ向から対立した。
特にラリーからすれば、打ち込みのビートを取り入れると自分の役割はなくなるのではないかという危惧もあった。

両者の意見はなかなか一致せず、メンバー間には常に緊張が走っていた。
ある日、不満が限界に達したクレイトンは、自分のベースをボノに差し出してこう言った。
「どう弾いたらいいのか教えてくれよ、俺はその通りに弾くからさ。お前は自分の思い通りにやりたいんだろ? さあ、やってくれよ」

このままU2は解散してしまうのか、険悪なムードの漂う中で、誰しもがそう感じるのだった。

そんなバンドの危機的状況を救ったのが、「ワン」という曲だった。
それは「シック・パピー」という曲のセッションをしているときのことだ。
エッジがアコースティック・ギターでコード進行を模索していると、ふと「Am → D → F → G」というのを思いついて弾いてみた。
2番目のコードを、本来ならDmにいくところをDにすることで、独特の浮遊感と高揚感を感じさせるこのコード進行は、他のメンバーの心を掴み、すぐにメロディと歌詞が付けられて「ワン」という1つの曲になった。ボノによれば15分足らずのことだったという。
それはバラバラの方向を向いていたメンバーの意思が、再び1つになった瞬間だった。



クリス・マーティンは、解散もメンバーチェンジもせずに続けていることがU2の魅力だと説明している。

U2のどこが好きかって、彼らが曲とかアルバムよりもバンドであることを重視していることだよね。親友同士のように、それぞれが欠かせない役割を持っているところが好きなんだ。


コールドプレイもまた、結成からおよそ20年ほどが経っているが、メンバーチェンジは一度もしていない。
それはU2のようなバンドでありたい、という意思もあってのことだろう。


U2 『アクトン・ベイビー』
Island

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