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トム・ヨークにロックの道を指し示したブライアン・メイ

2017.09.05

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のちにレディオヘッドを結成することになるトム・ヨークは7~8歳の頃、音楽の先生にこう言い放った。

「僕はロックスターになりたい」


1968年の10月7日、グレートブリテン島のほぼ中央に位置するノーサンプトンシャー州のウェリングボローで生まれたトムは、生後間もなくしてスコットランドへと引っ越し、そこで幼少時代を送っている。

初めてギターを手にしたのは4歳頃、母親に買ってもらったのだが弦を押さえる痛みに絶えられず、壁に投げつけて壊してしまった。
しかし7歳の誕生日に、今度は弦高の低いフラメンコギターを買ってもらう。

それから少しの月日が過ぎたある日、トムの人生を変える出来事が起きた。

「テレビで初めてブライアン・メイを見た時、ああなろうって決めたんだ」


クイーンのギタリスト、ブライアン・メイ。彼がトムの最初に憧れたロックスターだった。
10歳の頃には、雑誌か何かでブライアン・メイは10代で自分でギターを作り、それをずっと使っているということを知り、トムもそれを真似てギター作りにも挑戦している。
トムの音楽性はその後に出会うピクシーズやR.E.M.、エイフェックス・ツインなどの影響が大きいが、その最初のきっかけ、ロックの世界へと足を踏み入れるきっかけを作ったのは、クイーンとブライアン・メイだった。

トムがテレビでクイーンを見たのは、4枚目のアルバム『オペラ座の夜』とそのリードシングル、「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットしていた頃だ。

「ボヘミアン・ラプソディ」は、クイーンがお金と時間、そして様々なアイデアを存分に注ぎ込んで完成した大作だった。
美しいコーラスとピアノによって静かに幕を開けるこの曲は、途中からオペラ・セクションが展開するが、エンジニアのロイ・トーマス・ベイカーによれば、オペラの箇所はレコーディングの日々の中で、徐々に継ぎ足されていったのだという。

「私たちは毎日、もうこれで完成だと思った。
するとフレディがまた別の歌詞をどっさり持って現れて、『ガリレオをもうちょっと増やしたんだ』と言う。それでますます壮大になっていったんだ」


こうして完成した「ボヘミアン・ラプソディ」だが、当初はそのままシングル化することに対してレコード会社は首を縦に振らなかった。
6分以上もある曲をラジオ局でかけてもらえるはずがない、というのがその理由だった。
しかしメンバーは一歩も譲らず、最終的にはレコード会社側が折れて、そのままシングルとしてリリースされる運びとなった。

「ボヘミアン・ラプソディ」をシングルにする上で、もう一つ問題が浮上した。
それはテレビのスタジオで簡単に再現できるような曲ではないということだった。そこで彼らはテレビ番組に出演して演奏する代わりにプロモーションビデオを制作し、テレビ局はそれを流したのである。

まだMTVが始まっていないこの時代に、映像が付けられるのはきわめて稀なことだった。それ以前にもビデオクリップは少ないながら存在していたが、初めから宣伝目的で作られたものという意味では、「ボヘミアン・ラプソディ」が最初のPVだという見方もある。

トム・ヨークがテレビで見たクイーンは、時期的に考えてこの「ボヘミアン・ラプソディ」の映像だったかもしれない。



ちなみにレディオヘッドの楽曲の中には、「ボヘミアン・ラプソディ」とよく比較される曲がある。
『OK コンピューター』に収録されている大ヒット曲、「パラノイド・アンドロイド」がそれだ。
6分超の曲である点や、予想もつかないドラマティックな展開をする点など、両者の間にはいくつかの共通項を見つけることができる。
トムは2017年の6月、『OK コンピューター』が20周年を迎えたことを受けてのローリング・ストーン誌のインタビューで、「パラノイド・アンドロイド」と「ボヘミアン・ラプソディ」の関係について、このように明かしている。

「50%が『ボヘミアン・ラプソディ』で、それはあれだけたくさんの声を重ねられたならって話なんだけど、残りの50%は(ビートルズの)『ハピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン』なんだ」






参考文献:
『トム・ヨーク すべてを見通す目』トレヴァー・ベイカー著 丸山京子訳(シンコーミュージック)
『クイーン 果てしなき伝説』ジャッキー・カン&ジム・ジェンキンス 著 東郷かおる子 訳(扶桑社)

参考サイト:
Here’s The Thing: Thom Yorke Transcript – WNYC
Radiohead’s ‘OK Computer’: An Oral History – Rolling Stone

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