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カントリーのアウトローたち③〜エミルー・ハリス/ウィリー・ネルソンほか

2019.11.27

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「TAP the COLOR」連載第393回〜BROWN〜


カントリー・ミュージックにはアウトローの系譜がある。酒のせいでナッシュビルの聖地グランド・オール・オプリーから締め出されたハンク・ウィリアムズ。ドラッグやアルコール中毒の伝説となったジョージ・ジョーンズ。ジョニー・キャッシュはレコード会社の反対を押し切って刑務所での荒々しいライブを録音した。刑務所上がりで有名なのはマール・ハガードやデビッド・アラン・コーだ。一匹狼ならタウンズ・ヴァン・ザントが深い印象を残す。

キース・リチャーズにカントリーの良心を伝えたグラム・パーソンズ。ナッシュビルのシステムと折り合いがつかなかったウィリー・ネルソンやウェイロン・ジェニングス。他にもクリス・クリストファーソン、ジェリー・ジェフ・ウォーカー、マイケル・マーティン・マーフィ、ビリー・ジョー・シェイヴァー、ガイ・クラークなどが思い浮かぶ。また、ジョン・プレイン、スティーブ・グッドマン、シェル・シルヴァスタインらの曲はアウトローたちが何度も取り上げる。

1980年代後半からはドワイト・ヨーカムやトラヴィス・トリット、2000年代以降ではライアン・アダムスにも同じスピリットが感じられる。共通する一番大切なことは、アウトローたちが素晴らしい曲を作ったり歌ったりするということだ。

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エミルー・ハリス『Elite Hotel』(1975)
ソプラノ・ヴォイスを持つエミルー・ハリスは、カントリー・ロックの創始者グラム・パーソンズによって見出された。以降、流行に左右されないトラディショナリストとして本物の音楽を届け続ける。本作は彼女のキャリア初期における傑作。アウトロー・カントリーの美学を受け継いだカバーも秀逸で、バック・オウエンスやハンク・ウィリアムスをはじめ、ドン・ギブソンの「Sweet Dreams」、そしてグラム・パーソンズの「Sin City」などを収録。「私の人生で大切な仕事は、歌を見つけ出してそれを自分なりに歌うこと」と言うように、エミルーは自分のアルバムをリリースする度にグラムの曲を今でも取り上げている。泣ける。

ウィリー・ネルソン『Red Headed Stranger』(1975)
1950年代後半からのキャリアを誇るリビング・レジェンド。70年代半ばまではヒットは少なかったが、ソングライターとしてはその後のカントリー・スタンダードを続々と発表。そんなウィリーに転機が訪れたのはコロンビアに移籍した1975年。コンセプト・アルバムの本作とシングル「Blue Eyes Crying in the Rain」がカントリー・チャートのトップに立ったのだ。「僕の作品の99%は自己の体験に基づいている。僕のことを知りたければ、僕の曲を聴いてくれれば十分だ」

ウェイロン・ジェニングス『Greatest Hits』(1979)
ヒッピー運動やベトナム戦争の挫折を経たアメリカ建国200年を背景に、「レッドネック・ロック」「アウトロー・カントリー」と呼ばれるシーンが1970年代半ばに確立。全米規模でムーヴメントを起こすことになる。ナッシュビルの保守的な音楽産業と商業主義に反旗を立て、長髪にカウボーイハットを被ったミュージシャンたちが新たな拠点テキサス州オースティンに集まり始めた。その中心となったのがこのウェイロン・ジェニングスやウィリー。ネルソン。本作はウェイロン全盛期のヒット曲集で、「Good Hearted Woman」「Luckenbach, Texas (Back to the Basics of Love)」「Mammas Don’t Let Your Babies Grow Up to Be Cowboys」といった不滅のカントリー・スタンダードを収録。2002年死去。

『Wanted! The Outlaws』(1976)
ウィリー・ネルソンやウェイロン・ジェニングス、その妻ジェシー・コルター、トムボール・グレイザーらによるコンセプト・アルバム。タイトル通り、自由と孤独を貫くアウトロー・スピリットを刻み込んだ1枚。それぞれが歌う曲、デュエットなどが並ぶ。中でもウィリーとウェイロンによる「Good Hearted Woman」が心に響く。







*参考・引用/『カントリー・ミュージックの巨人』(東亜音楽社)

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