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カントリーのアウトローたち④〜ルシンダ・ウィリアムズ/ライアン・アダムスほか

2019.12.04

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「TAP the COLOR」連載第394回〜MONOCHROME〜


カントリー・ミュージックにはアウトローの系譜がある。酒のせいでナッシュビルの聖地グランド・オール・オプリーから締め出されたハンク・ウィリアムズ。ドラッグやアルコール中毒の伝説となったジョージ・ジョーンズ。ジョニー・キャッシュはレコード会社の反対を押し切って刑務所での荒々しいライブを録音した。刑務所上がりで有名なのはマール・ハガードやデビッド・アラン・コーだ。一匹狼ならタウンズ・ヴァン・ザントが深い印象を残す。

キース・リチャーズにカントリーの良心を伝えたグラム・パーソンズ。ナッシュビルのシステムと折り合いがつかなかったウィリー・ネルソンやウェイロン・ジェニングス。他にもクリス・クリストファーソン、ジェリー・ジェフ・ウォーカー、マイケル・マーティン・マーフィ、ビリー・ジョー・シェイヴァー、ガイ・クラークなどが思い浮かぶ。また、ジョン・プレイン、スティーブ・グッドマン、シェル・シルヴァスタインらの曲はアウトローたちが何度も取り上げる。

1980年代後半からはドワイト・ヨーカムやトラヴィス・トリット、2000年代以降ではライアン・アダムスにも同じスピリットが感じられる。共通する一番大切なことは、アウトローたちが素晴らしい曲を作ったり歌ったりするということだ。

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ルシンダ・ウィリアムズ『Lucinda Williams』(1988)
フォーク、カントリー、ブルースといった“アメリカの土”を踏み続ける女性シンガー・ソングライター/ギタリスト。ルイジアナ州生まれのルシンダは幼少時代、父親の仕事について回った影響で自然と南部のルーツミュージックに慣れ親しんだ。1979年にアルバムデビューするが、その名が知れ渡ることも注目されることもなかった。本作は当時8年ぶりにリリースされたサード作であり復活作。なお、ゼロ年代以降は以前の寡作ペースが嘘のようにコンスタントに新作を発表し続けている。

ライアン・アダムス『Follow the Lights』(2007)
1990年代半ば、ウィスキータウンというオルタナ・カントリーのバンドでデビューするもあえなく解散。2000年の初ソロ作『Heartbreaker』ではオン・ザ・ロードとロスト・ラヴの極致を描いてみせた。本作は多作家としてゼロ年代を駆け抜けたライアンの隠れ名作の一つ。カーディナルズと組んだ全7曲のEPで、ロンリー・プレイスとアウトロー・スピリットがジャケット写真から漂ってくる。アリス・イン・チェインズの「Down in a Hole」のカバーも収録。

エミルー・ハリス『Duets』(1990)
カントリー・ロックの創始者グラム・パーソンズによって見出されたエミルー・ハリス。流行に左右されないトラディショナリスト。本物の音楽を歌い続ける伝承者。本作はそんな彼女がアウトローたちとデュエットした曲だけを集めた編集盤。ジョージ・ジョーンズ、ロイ・オービソン、ウィリー・ネルソン、ザ・バンド、ニール・ヤング、そしてグラム・パーソンズ……顔ぶれだけでも本物たちから愛されてきたことが分かる。

ドワイト・ヨーカム『Last Chance for a Thousand Years: Dwight Yoakam’s Greatest Hits from the 90’s』(1999)
ホンキートンク・カントリーの正当な伝承者であるドワイト・ヨーカムは、本物であるがゆえに当初はなかなか受け入れられず、デビュー作をリリースした1986年当時でさえ「2年で終わる」と酷評された。あれから35年。ヨーカムは誰もが認めるカントリー界のレジェンドとして君臨。本作はタイトル通り、90年代の足跡をまとめたベスト盤。「You’re the One」「Ain’t That Lonely Yet」など全盛期のナンバーを収録。







*参考・引用/『カントリー・ミュージックの巨人』(東亜音楽社)

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