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カントリーのアウトローたち⑤〜ハンク・ウィリアムス/ジョージ・ジョーンズほか

2019.12.11

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「TAP the COLOR」連載第395回〜YELLOW〜


カントリー・ミュージックにはアウトローの系譜がある。酒のせいでナッシュビルの聖地グランド・オール・オプリーから締め出されたハンク・ウィリアムズ。ドラッグやアルコール中毒の伝説となったジョージ・ジョーンズ。ジョニー・キャッシュはレコード会社の反対を押し切って刑務所での荒々しいライブを録音した。刑務所上がりで有名なのはマール・ハガードやデビッド・アラン・コーだ。一匹狼ならタウンズ・ヴァン・ザントが深い印象を残す。

キース・リチャーズにカントリーの良心を伝えたグラム・パーソンズ。ナッシュビルのシステムと折り合いがつかなかったウィリー・ネルソンやウェイロン・ジェニングス。他にもクリス・クリストファーソン、ジェリー・ジェフ・ウォーカー、マイケル・マーティン・マーフィ、ビリー・ジョー・シェイヴァー、ガイ・クラークなどが思い浮かぶ。また、ジョン・プレイン、スティーブ・グッドマン、シェル・シルヴァスタインらの曲はアウトローたちが何度も取り上げる。

1980年代後半からはドワイト・ヨーカムやトラヴィス・トリット、2000年代以降ではライアン・アダムスにも同じスピリットが感じられる。共通する一番大切なことは、アウトローたちが素晴らしい曲を作ったり歌ったりするということだ。

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ハンク・ウィリアムス『40 Greatest Hits』
わすが6年間しかレコーディングを行っていないにも関わらず、ハンク・ウィリアムスの歌は今も多くの人々の心に哀切な響きを突き刺してくる。1947年にデビュー。「ラヴシック・ブルース」「ロング・ゴーン・ロンサム・ブルース」「なぜ愛してくれないの」「コールド・コールド・ハート」「泣きたいほどの淋しさだ」「ユア・チーティン・ハート」などのカントリースタンダードを放つ一方で、背骨の痛みを和らげるという理由で続けていた長年の飲酒、荒れた結婚生活は確実にハンクの才能を脅かしていた。エルヴィスがまだ登場する前夜、彼こそがスーパースターの未来だったのだ。1953年、29歳で死去。
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ジョージ・ジョーンズ&タミー・ウィネット『Super Hits』
ボブ・ディランもキース・リチャーズもみんな影響を受けたカントリー歌手。カントリー・ミュージックの素晴しき解釈者であるばかりでなく、音楽そのものにも多大な貢献を果たした人物。特にカントリー・バラードにおけるジョージの情感は特筆すべきものがある。1954年にレコードデビュー後、80年代のアルコール中毒や経済トラブルを乗り越えて半世紀以上に渡って活動。本作は一時期、妻でもあったタミー・ウィネットとのデュエットをまとめたもの。こちらも偉大なる音楽遺産だ。2013年、81歳で死去。
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ザ・バーズ『Sweetheart of the Rodeo』(1968)
本作はグラム・パーソンズ在籍時のザ・バーズによるカントリー・ロックの金字塔。グラムが歌う「Hickory Wind」を収録。親友だったキース・リチャーズが言うように、グラム・パーソンズの声や歌は“ハイロンサム”そのものだった。人の痛みを持った心の風景を想うその感覚。ミュージシャンにとって最も神秘的な才能。寂れたクラブではベテランのウェイトレスを釘付けにした。1973年、26歳で死去。
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タウンズ・ヴァン・ザント『Legend』
酒場のステージ、モーテル、ファミレス、トレーラーハウスといった場所を渡り歩きながら作られた曲の数々。1980年代前半、森の生活を送っていたタウンズの曲にスポットライトが当たる。81年にエミルー・ハリスとドン・ウィリアムスが歌う「If I Need You」がカントリーチャートの3位、83年にウィリー・ネルソンとマール・ハガードが歌う「Pancho and Lefty」が1位になったのだ。1997年、52歳で死去。
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*参考・引用/『カントリー・ミュージックの巨人』(東亜音楽社)

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