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ジャズ・ヴォーカルへの誘い〜フランク・シナトラ/ジューン・クリスティほか

2017.04.26

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「TAP the COLOR」連載第183回

1950年代半ば。ティーンエイジャーたちがロックンロールに熱狂していた一方で、都会の夜のサウンドトラックであるモダンジャズは全盛期を迎え、ジャズ・ヴォーカルの世界にも名盤が続々と誕生。LPが普及したことや洒落たジャケットデザインも見逃せない。ロマンティック&スインギン。大人の世界へようこそ。

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フランク・シナトラ『In the Wee Small Hours』(1955)
ジャズ・ヴォーカル史に輝く永遠の失恋名盤。フランク・シナトラのキャピトル時代の最高傑作だ。真夜中の静寂に漂うブルーな声。このムードを表現できる歌い手はいるかもしれないが、その舞台となる都会の風景までも完璧に見せてくれる歌い手は当時シナトラ以外にいなかった。黄金期のパートナーである指揮・編曲のネルソン・リドルのオーケストラも色彩豊か。大人なら、この時期のシナトラは1枚は持っておきたい。


ジューン・クリスティ『Something Cool』(1954)
女性ジャズ・ヴォーカルの中で「ハスキー・ヴォイス」で最初に成功した歌手として忘れてはならないジューン・クリスティ。本作は彼女の代表作かつコンセプトアルバムの傑作。タイトルにあるように「何か冷たいもの」が見事に表現された歌の世界が染み渡る。とは言っても決して汗を垂れ流さず、都会のクールが風に舞って流れていく感じ。1940年代後半にスタン・ケントン楽団の専属歌手として活動。49年に独立して人気を確立。独特の声でモダンジャズ・ヴォーカルのスターとなった。

ヘレン・メリル『Helen Merrill』(1955)
洗練されたテクニックと抜群のセンスで「ニューヨークのため息」として知られたヘレン・メリルのデビュー作にして大名盤。ジャズ・ヴォーカルの入口としてこのアルバムを聴きこんだ人は数知れず。ハスキーな声によるオープニングの「ドント・エクスプレイン」や代名詞となった「帰ってくれたら嬉しいわ」などは強烈なインパクトを残す。天才トランペッター、クリフォード・ブラウンの味わい深い響きも本作の聴きどころ。

サラ・ヴォーン『Sarah Vaughan with Clifford Brown』(1955)
1950年代半ばのモダンジャズ・シーンは、クリフォード・ブラウンという天才トランペッターに夢中だった(56年6月、25歳で事故死)。そんな彼が女性シンガーとエマーシーで立て続けに共演。54年8月にダイナ・ワシントン。12月には上記のヘレン・メリルや本作でサラ・ヴォーンと録音を残した。まさにジャズ・ヴォーカルの極致。50年代には本当に優れたジャズやヴォーカル作品が次々と生まれていた。

*参考/『ジャズ・ボーカル名曲名盤』(別冊スイングジャーナル/1993年)

【執筆者の紹介】
■中野充浩のプロフィール
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