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マイケル・ジャクソンの命日~残された率直な言葉に向き合ってみてはどうだろうか

2019.06.25

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没後10年、亡くなった後も多くのファンを魅了するマイケル・ジャクソン。
彼は常に自分自身の経験を踏まえながら、人権の平等や人種差別の撤廃を作品を通して訴え続けた。

キング・オブ・ポップと呼ばれた不世出のスーパースターが残した言葉には、世界中の為政者たちにも届いてほしいと思うことがある。

僕にとって真の勇気とは、暴力をふるわずに、難しい問題を解決できたり、あるいはまた、実現可能な解決を引き出すだけの知恵を持っていることなのです。


幼い頃からエンターテイナーを目指したマイケルは練習を繰り返し、努力を重ねることで、自分の才能をできうる限り鍛えて生きていた。

ジャズやブルース、R&B、ロック、ヒップホップ等のポピュラーミュージックがすべて、ブラックカルチャーに由来していることに、マイケルはいつも誇りを持っていた。
そして日々の厳しい現実や暮らしに追われる人々に、少しでも夢を見る時間を与えることができることを何よりも大切に考えた。

1985年初頭、エチオピアとスーダンの人たちが飢えに苦しんでいるニュース・フィルムを見たマイケルが、ライオネル・リッチーと書き上げたのが「ウィー・アー・ザ・ワールド(We Are The World )」であった。

このプロジェクトはアフリカの飢餓と貧困のドキュメントを見て衝撃を受けたベテラン歌手のハリー・ベラフォンテが発起人となり、クインシー・ジョーンズがプロデューサー役を引き受けたことから始まった。

楽曲を誰に依頼するかを検討したクインシーが最終的に選んだのは、ライオネルとマイケルだった。
クインシーと話し合ったコンセプトに基づいて、最初にメロディーを書いたのはライオネルだったらしいが、それにインスパイアーされてマイケが一人で一気にデモ・テープを仕上げた。



マイケルはスーパースターとなったがゆえに、メディアによる心ない誹謗や中傷、悪意あるデマなどに傷つけられることが多かった。
それでも自分が生きていることの意味について、30歳の時に出した自伝「ムーンウォーク」のなかで率直にこう語っている。

人間は真実と接していたいと望んでいます。
また、その真実を他の人に伝えたいとも思っています。
たとえ絶望であっても、喜びであっても、自分が感じたり経験したことを生かすことが、
その人生に意味をもたらし、他の人々に役立つことにもなるでしょう。
これこそは芸術の姿です。
こうした啓蒙の瞬間にためにこそ、僕は生き続けているんです。


完璧主義者であることを自認していたマイケルは、「死ぬまで努力し続けるのです」と宣言していた。
そして音楽とエンターテインメントに生命を捧げて、2009年6月25日に50年の生涯を終えたのである。

僕にとって一番大切なのは、人々を幸せにさせたり、いろいろな問題や悩みから解放してあげたり、彼らの道を照らす手助けをしたりすることです。
彼らに「すばらしかった、また来たいな。楽しかったよ」と言われながら、ショーの会場を後にして欲しいのです。僕にとっては、それがパフォーマンスです。


人間には音楽やダンスから生まれる喜びが必要で、それを果たすのは自分の大切な役割であると信じていたマイケルが残した歌や映像は、発達したテクノロジーのおかげで死後も生前と変わることなく、これからも永遠の作品として輝いていくに違いない。

マイケル・ジャクソンの命日に、あらためて彼の率直な言葉に向き合ってみてはどうだろうか。

もし、あなたが世界をもっとすばらしいものにしたいと考えているのだとしたら、まず、自分を見て、自分から変えていくべきなのです。
鏡の中の自分から始めるのです。
あなた自身から始めるのです。



<参考文献>マイケル・ジャクソン著 田中康夫訳「ムーンウォーク マイケル・ジャクソン自伝」新装版(河出書房新社)http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309290270/

(2014年6月25日公開/2019年6月25日改訂)




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