TAP the DAY

耽美な歌〜オスカー・ワイルドの美学に共鳴したグラムロック〜

2016.09.16

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「けばけばしい俗物だ!」
「病的で有害だ!」


そんな罵声を浴びながら誕生したグラムロックの歴史は、T・レックスの1sシングル「Ride A White Swan」がリリースされた1970年10月に幕を開けたと云われている。
時を同じくして“ビートルズ”という一つの時代のアイコンを失ったロンドンの若者たちは、新たなポップスターの出現を待望していた。
そして彼らが選んだのは、妖艶なメイクを顔に施し、ラメやスパンコール、孔雀の羽根などを身にまとう中性的な男たちだった。
突如として出現したマーク・ボランやデヴィッド・ボウイの姿は、かつてのビートルズのマッシュルームカットなどを“昔のもの”にしてしまう程のインパクトを持っていた。
彼らの存在は、世間に衝撃をあたえ議論の的となった。
保守的な者たちは「俗悪」「異端」として彼らをなじった。
メディアもまた「一時的なファッションで終わる」として一笑していた。
だがこの“悪の華”は、後に時代を超越し、ロックの流れを大きく変えてしまう原動力となってゆくのだ。


「16歳のときに魔法使いと出会い、一緒に旅行をして魔術を教わったんだ」
これはマーク・ボランがあるインタビューで語った言葉である。
若い頃からファッションモデルの仕事など通じてショービジネスと関わっていたマーク・ボランは、華やかな業界の“裏の世界”で複数の男性と性的関係を持っていたとも云われている。

Oscar

有用なものを造ることは、その制作者がそのものを賛美しないかぎりにおいて赦される。
無用なものを造ることは、本人がそれを熱烈に賛美するかぎりにおいてのみ赦される。
すべて芸術はまったく無用である。



19世紀に活躍したアイルランド出身の詩人・作家・劇作家オスカー・ワイルドが1890年に発表した長編小説『ドリアン・グレイの肖像』の序章にある有名な一節だ。
ドリアン・グレイという男の肖像画に魂が宿り、本人ではなく肖像画が歳をとり、本人が悪事を重ねるごとに絵が醜く変貌していく、というゴシックホラーのような物語である。
この作品は彼の代表作『サロメ』へと続く“耽美(たんび)小説”と呼ばれ、デヴィッド・ボウイの愛読書でもあったため、1970年代に一世を風靡したグラムロックに多大な影響を与えた原点として知られている。
ワイルドが貫いた美学とも云える耽美主義とは「精神より官能を重んじ、自然や人生より芸術人為を尊び、美を善悪を超えた境地におき、平凡を嫌い奇異・異常を喜び、内容よりも形式に関心を持つ」といった主張を重視した芸術運動であった。

「けばけばしい俗物だ!」
「病的で有害だ!」


今から約125年前、異端の作家オスカー・ワイルドが世間から浴びた言葉は、1970年代の初期にイギリスのマーグ・ボランやデヴィッド・ボウイ、そしてアメリカのイギー・ポップ、ルー・リード、ニューヨーク・ドールズたちがメディアから浴びた言葉と同じだった。


映画『ベルベット・ゴールドマイン』(1998年)日本予告編
8535
https://www.youtube.com/watch?v=bYnMf613hnw

T.レックス『T.Rex(Deluxe Edition)』

T.レックス
『T.Rex(Deluxe Edition)』

(2014/Polydor)


『ベルベット・ゴールドマイン』

『ベルベット・ゴールドマイン』

(2012/角川書店)

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