TAP the DAY

奇妙な宇宙船に乗って旅立っていった男〜ジャズ界の鬼才エリック・ドルフィーを偲んで〜

2016.06.29

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「A great solo on Take the A Train」/エリック・ドルフィー


今日は、ロサンゼルス生まれのジャズ・サックス奏者エリック・ドルフィー(享年36)の命日です。
卓越した技巧と独特のアドリブフレーズで知られるサックス演奏の他に、フルートやクラシックにおいて使用されるのが主だったバスクラリネットをジャズの独奏楽器として用いたことで、後のジャズ奏者に多大な影響を与えた男である。
1958年、長い“下積み生活”を経てきた彼は30歳にしてチコ・ハミルトン楽団に参加。
程なくして、あのジャズ界の巨人ルイ・アームストロングのバンドのベーシストとして活躍していたチャールズ・ミンガスの楽団に加わる。
同時期にソロ活動も開始。
1961年にはトランペット奏者ブッカー・リトルとの双頭コンボを組むも、同年10月のリトルの急逝で頓挫。
1961年~62年まで、ジョン・コルトレーンのグループに参加し、1964年には再びミンガス楽団に加わった。
そして同年、ミンガス楽団のヨーロッパツアーに参加中、糖尿病による心臓発作のためベルリンにて他界。
遺品となったバスクラリネットとフルートは、ドルフィーの両親からコルトレーンに贈られたという…。

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彼が32歳の時に発表したアルバム『Out There』(1960年)のジャケットには、サルバドール・ダリ風の奇妙な絵が描かれている。
空中に浮かんだコントラバスの船にドルフィーが乗って、なんだか難しい顔でサックスを吹いている。
船の帆はチェロ、屋根はシンバル、側壁からはホーンが突き出ており、船底にはフルートがへばりついている。
航跡には楽譜が漂い、丘の上には灯台のかわりにメトロノームが立っている。
それはまるで“宇宙の場末”を彷徨いつづける心を表現しているかのようだ。
また、このジャケットの裏にはドルフィー自身による、こんな言葉が書き記されている。

何か新しいことが起きようとしているんだ。
それが何であるか僕にはわからない。
でもそれは新しいものであり、優れたものなんだ。
そして、それは今まさに起ころうとしている。そのまっただ中に、ここニューヨークにいられるというのは本当に素晴らしいことだよ。


このアルバムは録音されたのは1960年の8月。
保守的な50年代もようやく終りを告げ、ジョン・F・ケネディが大統領に選出される少し前のことである。
長年に渡って薄暗い場所で下積み生活を余儀なくされていた彼にも、この頃からスポットライトがあたりはじめ、音楽的にも大きな飛躍を遂げるのだ。
しかし、彼がその才能をフルに発揮できた期間はあまりにも短かった。
1964年6月29日、彼はあの奇妙な船に乗って…宇宙の果てへと旅立っていった。
36年の生涯を一気に駆け抜けていった彼が遺した旋律は、ジャズファンの心の中で永遠に生きつづけている。

『Out There (1960) [Full Album]』/エリック・ドルフィー


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エリック・ドルフィー『Out There』

(1960/Prestige)

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