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四人囃子~伝説的な存在として日本の音楽史に刻まれることになったロックバンド

2017.03.03

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高校生だった森園勝敏と岡井大二が出会ったことで始まったバンド「ザ・サンニン」が1971年から「四人囃子」として活動を始めたとき、彼らは”ピンク・フロイドの「Echoes」を完璧に演奏できるバンド”として、その印象的な名前とともに一部の音楽ファンの間では知られていたという。

1973年に東宝映画『ある青春/二十歳の原点』の音楽制作に参加し、サウンド・トラック盤のアルバムを発売してプレ・デビューした四人囃子は、 1974年にファースト・アルバム『一触即発』を東宝レコードから発売した。
オリジナルメンバーは岡井大二(リーダー、ドラムス)、森園勝敏(ヴォーカル、ギター)、坂下秀実(キーボード)、中村真一(ベース)の4人。

四人囃子を代表する作品となる「おまつり (やっぱりおまつりのある街へ行ったら泣いてしまった) 」と、12分を超える大作「一触即発」が収録されているこのアルバムを作った時、メンバーは21歳から22歳の若さであった。

ヤードバーズやクリーム、ジミ・ヘンドリックスなどのブリティッシュロックと、ピンク・フロイドやイエスなどのプログレッシブロックから影響を受けた四人囃子の音楽は、個人のすぐれた演奏力だけでなく、バンドとしてのオリジナリティと世界観を持っていた。

だから四人囃子はこのアルバムだけで、日本における伝説的な存在として音楽史に刻まれることになった。




しかし日本にもプログレッシブロックのバンドが登場したと一部で評判になった割に、四人囃子の実力と魅力はなかなか外に伝わっていかなかった。
その原因の多くは彼らでなく、所属したレコード会社にあった。

東宝はエンターテイメントの企業として1950年代から最大手の存在であり、東宝映画と宝塚映画を製作して配給するほかに、関西では宝塚歌劇団を経営していた。
東京でもエンタメの殿堂といわれた日劇や、宝塚劇場などを運営して東宝ミュージカルを手がけるなど、映画と演劇ではメジャーそのものの企業である。
だがレコード産業への参入は遅く、東宝レコードは後発の地味なマイナーレーベルだった。

音楽事業を手掛ける子会社として発足した東宝芸音が東宝レコードの始まりで、1970年10月に宝塚歌劇団の加茂さくら「夢は今も」などのレコードを発売してスタートした。
したがって宣伝や営業の現場には革新的なロックバンド、四人囃子の魅力を外部に伝えるだけの十分な能力が備わっていなかったのだ。

新人歌手の第一号として売り出されたのは研ナオコだったが、「大都会のやさぐれ女」でデビューしたものの、まったくの不発に終わっていた。
ちなみに研ナオコは東宝レコード時代はヒット曲が出ないまま1975年にキャニオン・レコードに移籍、第1弾の「愚図」(作詞・阿木燿子 作曲・宇崎竜童)が大ヒットした。続いて1976年に「あばよ」(作詞作曲・中島みゆき)も大ヒットし、人気歌手の仲間入りすることができたのだ。

その後も東宝レコードからは一度もヒット曲が生まれず、10年後には事業停止に追い込まれている。

四人囃子の場合も十分なプロモーションが行なわれず、レコード店への販売力も弱かったので、彼らの卓越した音楽性が一般の音楽ファンの間にまで広まっていかなかった。

またバンドへのサポート体制もしっかりしていなかったために、経済面をふくめてバンド自体の存続が不安定だったと思われる。

ファースト・アルバムの発売後、キーボードに茂木由多加が参加して5人体制で活動していたが、まもなくベースの中村が脱退した。
そこでベーシストとして加入したのが、のちにプロデューサーとして活躍する佐久間正英である。

だが1975年に5人でシングル『空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ』を発売した後、今度は茂木が脱退した。
さらに1976年にセカンド・アルバム『ゴールデン・ピクニックス』を発売後、初期の代表曲を手掛けたヴォーカルとギターの森園が脱退してしまう。

そのため新たに佐藤ミツルがヴォーカルとギターで加わり、森園勝敏に変わって佐久間正英がサウンド・プロデューサーとして、リーダーの岡井大二とともに新たな四人囃子の方向性を作り上げていった。

そこからクロスオーヴァー的な要素も加えた彼らはポップ・ロックやニュー・ウェイブ、テクノといった先鋭的なサウンドを取り入れることで、時代とともにスタイルを変貌させながら、休止や再結成を経て21世紀まで創作活動を続けたのだった。








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