TAP the DAY

ザ・クラッシュの名曲「ハマースミス宮殿の白人」がリリースされた日

2017.06.16

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「いいメロディーは常に勝ち残る、そしていいメロディーにいいメッセージが乗っていれば、常にいつの時代でも絶対に勝ち残る。これは雑多とした録音だった。マーキーの裏にあるスタジオの薄暗い中でこそこそと録音してた。外で行列を作る大衆を避けながら、見つからないように車の後ろにうずくまったりしてね。でもそこから素晴らしい曲が出来あがった。呼びかけるような逸話を歌に入れたジョーのやり方はみんなの心を打ち、人々にとっての素晴らしい証言となった。ジョーの葬式でこの曲を流したのはとてもいい事だと思ったよ。」

(ジョニー・グリーン/当時のクラッシュのツアー・マネージャー)


1978年6月16日、ザ・クラッシュは「(White Man) In Hammersmith Palais(ハマースミス宮殿の白人)」という楽曲をリリースした。
7インチシングルとして発表されたその歌のクレジットには作詞作曲:ジョー・ストラマー/ミック・ジョーンズと記されている。
後に米国版のデビューアルバム『The Clash/白い暴動』にも収録されることとなったこの歌は、彼らが当時台頭してきていたパンクシーンから頭一つ抜きん出るきっかけとなった“重要な曲”としてファンから愛され続けてきたという。




「なぜクラッシュが特別なバンドなのか聞きたいかい?ジョーやミックや俺達の世代は本当に音楽にのめり込んでいたんだ。それは反体制の姿勢としての音楽だった。それがクラッシュのようなバンドと今の全てのくだらないバンドとの違いだ!もうクラッシュのようなバンドは現れはしない。クラッシュを真似するのは難しいよ…ほとんど不可能に近いね!」

(ドン・レッツ/DJ・映画監督)


この曲のタイトルにもなった“Hammersmith Palais(ハマースミス宮殿)”は、ロンドン西部ハマースミス・アンド・フラム・ロンドン特別区にある地区の一つシェパーズ・ブッシュにあった建物で、正式名称は“Hammersmith Odeon”だった。
1992年以降は正式名称が変更されてながらも、一般的には“Hammersmith Apollo”と呼ばれるイベント会場として現在も実在する。
歌詞には、デリンジャー、リロイ・スマート、デルロイ・ウィルソンというレゲエミュージック界のスターの名前が登場し、当時その会場で行なわれたオールナイトのレゲエショーをジョー・ストラマーが体験したところから始まる。
そこで観聴きしたポップでライトなレゲエは、彼が期待していたルーツロック色の強いレゲエの反逆心とはほど遠い単なるパフォーマンスショーだった。
商業化してしまったレゲエに対する失望を歌いつつ…当時のイギリスが抱えていた社会的なテーマに視点を移してゆく。
反暴力メッセージ、富の配分の状況、黒人と白人の協調への動き、同期のミュージックシーンへの疑問と批判…などなど。
当時、ザ・クラッシュと密接な関係にあったというジャマイカ系英国人ドン・レッツは、この楽曲にまつわる思い出をこう語る。

「この曲は特に聴くのが辛いよ…。なぜならあの夜ジョーと一緒にハマースミスに行ったのはこの俺だから。歌詞の通り、あの場でジョーが唯一の白人だったんだ。ジョーは本場のレゲエを観れると期待してワクワクしてたよ。彼は当時ジャマイカのゲットー(ユダヤ人を強制的に収容した居住区域)に住む人間達をちっとも理解してなかったんだ。連中が何を考えてるかって?彼らはゲットーから脱出してリッチになりたいと願っていた。それでジョーがあそこに行ったとき観たのは、ゲットー出身の本場のジャマイカの反逆者なんかじゃなく、その代わりにきらびやかなラスベガスのショーみたいなコンサートだったんだ。」



世代を超えて愛され、次世代に大きな影響を与えたパンクバンド、ザ・クラッシュがレゲエミュージックへのリスペクトを前面に押し出した最初の曲である。
ジョーはジャマイカ発祥の音楽レゲエの持つ新鮮なリズムと、パンクロックに通じる“レベル(反逆)”の精神に惹かれたという。
この曲には見えない権利への反発と共に、音楽ビジネスの被害者になりつつあったパンクバンドへの批判と皮肉が込められている。

「ジョーはあの夜、自分の勘違いに気づいたはずさ。俺は時々みんなに教えてやるんだ。ゲットーは自ら入って行く場所じゃないんだ。ゲットーとは“そこから抜け出す場所”なんだってね。あのゲットーのスタイルの流行は多くの誤解を招いたんだ。俺にとっては素晴らしいコンサートだったよ。だって俺にとってのレゲエのヒーロー達が観れたんだから。でもジョーは期待してたものと実際観たもののギャップでジレンマを感じてたと思うぜ。もちろんジョーは後になってそれをちゃんと理解した。だからこそこの曲が生まれたんだ。あのフィーリングはまさにレゲエだ。あれは当時みんなが予想していたクラッシュの方向性とは逆の展開で、それがまた彼らの良いところなんだ。毎回々あの曲を聴くと本当に鳥肌が立つんだ。」

(ドン・レッツ/DJ・映画監督)





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