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マイケル・ジャクソンがグラミー賞8部門を独占した歴史的な一日

2018.02.28

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それは1984年2月28日の出来事だった。
全米の音楽業界団体National Academy of Recording Arts & Sciencesが毎年開催する一大イベントGrammy Awards(第26回グラミー賞)において、マイケル・ジャクソンが8部門受賞という記録を打ち立てたのだ。

最優秀レコード
最優秀アルバム
最優秀男性ポップ歌手
最優秀男性ロック歌手
最優秀男性R&B歌手
最優秀R&Bソング
最優秀児童向けレコード
最優秀プロデューサー
(※受賞はクインシー・ジョーンズ個人)

一人のアーティストが一つの作品で、このような形で最優秀賞を独占するのはグラミー史上初のことだった。

「子供の無邪気さは想像力の種だ。子供はいろいろな事を我々に教えてくれる。」


この日、トロフィーを受け取ったマイケルが語った言葉は、彼の人柄のすべてをあらわしていた。
プロデューサーにクインシー・ジョーンズ、そしてポール・マッカートニーやエディ・ヴァン・ヘイレンなどの豪華ゲストを迎えた彼のアルバム『Thriller(スリラー)』は、タイトルナンバー「スリラー」、そして「今夜はビート・イット」「ビリー・ジーン」など7曲のトップ10ヒットを叩き出し、全世界で5,100万枚以上という驚異的な売り上げを記録した。


“ポップス史上最も売れたアルバム”として金字塔を打ち立てたこの作品は(売上枚数に関しては諸説あるものの)2012年のギネス世界記録において6,500万枚の売り上げ認定を受けており、現在も売上枚数を増やし続けているという。
また、大きな反響を生んだ「スリラー」のミュージックビデオに使われた予算は1億円を超えていたというから驚きだ。
当時、1本のミュージックビデオの製作にかけられる予算は1千万前後だったので…破格の値段である。
その13分34秒にも及ぶホラー映画風のショートフィルムでは、特殊メイクを施したマイケル扮する狼男や“ゾンビダンス”が話題となった。
カメラをズームインしながらトラックバックするという、ヒッチコック監督の映画『めまい』で使われた撮影方法が用いられており、「スリラー」は映像作品としても当時のMTVシーンに多大な影響を与えた。
また、このミュージックビデオのナレーションには、往年のホラー映画俳優であるヴィンセント・プライスが抜擢されている。
プライスの起用は親交のあったクインシー・ジョーンズの妻の助言によるもの。
わずかテイク2でこの仕事を完璧にこなした名優の仕事ぶりには、プロデューサーのクインシー・ジョーンズも脱帽したという。



ハリウッドを中心とした映画人にとって最大の栄誉がオスカー(アカデミー賞)なら、グラミーはアメリカの音楽界でもっとも大きな賞といえるだろう。
受賞者にグラモフォン(蓄音機)の形をしたトロフィーが贈られることから“グラミー賞”と呼ばれている。
授賞式当日は、ノミネートされた話題のアーティストが次々に登場し、豪華アーティストのコラボレーションライヴなどグラミーでしか実現できないパフォーマンスが繰り広げられる。


この日、マイケルはパフォーマンスをしなかった。
壇上にジャネット、リビー、ラトーヤの三姉妹を呼び、家族全員に対する感謝の言葉を伝えた。
客席では母親のキャサリンや兄のジャーメインも満面の笑みを浮かべていた。
そして…この日、会場が最高に盛り上がったのはマイケルがサングラスを外すシーンだった。

「本当は外したくないのですが…親友のキャサリン・ヘップバーン(演技部門においてオスカーを4回受賞したただ一人の女優・当時77歳)が外すべきだと言うので。彼女と2階のファンのために外します。」


キャサリン・ヘップバーンといえば、演技部門においてオスカーを4回受賞したただ一人の大女優(当時77歳)。
グラミー賞の一ヶ月前に開催された音楽賞The American Music Awardsの授賞式で終始サングラスをかけたままだったマイケルに対して「ファンはあなたの目を見たがっているわ」と、サングラスを取るように忠告していたという。

子供達の想像力を讃える彼。
家族やファン、そしてスタッフを心から気遣う彼。
そして親友からの忠告をちゃんと受け入れる彼。
そのすべてが“マイケル・ジャクソン”なのだ。





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