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イヴ・モンタンを偲んで〜34年間連れ添った最愛の妻と眠る墓地に、元恋人のエディット・ピアフも埋葬されている偶然と運命

2018.11.09

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1991年11月9日、フランスを代表する俳優・歌手として活躍したイヴ・モンタンがこの世を去った。
遺作となった映画『IP5/愛を探す旅人たち』の撮影直後に心臓発作で倒れ、パリから約40マイル北にあるサンリスという静かな町の病院で息を引き取ったという。
シャンソンの女王エディット・ピアフにその才能を見出され、一時期は彼女の恋人でもあったイヴ・モンタンが歩んだ人生をご紹介します。


1921年、彼はイタリアのトスカーナ州ピストイア県にあるモンスンマーノ・テルメという小さな町で産声をあげた。
農民だった彼の父は強固な共産主義支持者で、母は敬虔なカトリック教徒だった。
彼が2歳の頃、ムッソリーニのファシスト政権から逃れるために、一家はフランスのマルセイユに移り住む。
家庭が貧しかったこともあり、彼は11歳から働き出したという。
港で働いたり、美容師の見習いやトラック運転手など職を転々とし、18歳の頃からマルセイユの小劇場やキャバレーで歌い始める。
1944年、23歳となった彼は歌手での成功を夢見て単身パリに移り住む。
程なくしてその才能をエディット・ピアフに認められ、スターへの階段を駆け上ってゆく。
パリの老舗キャバレー“ムーラン・ルージュ”のステージにピアフの前座として出演するようになり、その名を知られるようになる。
当時既にスター歌手だったピアフは、彼を一流のシャンソン歌手に育て上げるための“特別なレッスン”を始める。
まずはジャズやポップス系といったアメリカ音楽から影響を受けていた彼の歌唱法とカウボーイファッションをやめさせ、口に鉛筆を喰わえさせて訛りを直したという。
一から歌を訓練して、一緒のステージに立たせて、彼にスター歌手としての“いろは”を教え込んだ。
そのやり方は、パリの名門クラブのオーナーだったルイ・ルプレがピアフの才能を見出し、作詞・作曲家のレイモン・アッソが厳しい特訓によってピアフを一流歌手に育て上げた手法と同じだった。
一つだけ違っていたのは…ピアフとモンタンは師弟にして恋愛関係にあったと言うところだった。
彼女は映画『枯葉〜夜の門〜』(1945年公開)にイヴ・モンタンを推薦し、映画の成功を願って2年間も酒を絶つまでして彼に入れ込んでいた。
彼女の願いは叶い、映画の主題歌は大ヒットを記録。
モンタンが世界的なスターになった頃「もはや彼には自分が必要ない」と悟り、ピアフは静かに身を引いたという。


この主題歌「Les Feuilles Mortes(枯葉)」は、後に彼の代表曲となり、フランスを代表するスタンダードナンバーとしても広く知られることとなる。
「Luna Park」「Barbara」「A Paris」など数々のシャンソンをヒットさせ、歌手としても俳優として圧倒的な人気を誇る存在となってゆく。
1951年、30歳を迎えた彼はいくつかの映画で共演をしてきた女優のシモーヌ・シニョレと結婚する。
二人は多くのデモや活動に参加するなどして、社会問題に関心を持ちながら夫婦としての絆を深めてゆく。
1957年、彼は妻同伴でヨーロッパ東側諸国を巡るコンサートツアーを行う。
1961年には、アメリカの映画『青い目の蝶々さん』撮影の為に初来日を果たしている。鎌倉、奈良、京都など、約2ヶ月間に渡って滞在したという記録が残っている。


その後、マリリン・モンローとのスキャンダルや、妻の自殺未遂など、仕事以外でも話題に欠かないトップスターとしての多忙な日々を送っていた。
40代の後半となった1968年頃からは、ステージからいったん離れて俳優業に専念することとなる。
1981年、還暦を迎えた彼は、パリの老舗劇場“オランピア”のステージに立ち、歌手として約13年振りのカムバックを果たす。


1985年、彼は34年間も連れ添った最愛の妻シニョレに先立たれてしまう。
その後1987年に仕事のアシスタントだった38歳年下のキャロル・アミエルと結婚。翌年には67歳にして唯一の実子ヴァランタンをもうけている。
その3年後…1991年11月9日に若い妻と幼い息子を残してこの世を去ってゆく。
彼は今、フランスのパリ東部にあるペール・ラシェーズ墓地で、元妻のシモーヌ・シニョレと一緒に眠っている。
偶然なのか運命なのか…同じ墓地には元恋人だったエディット・ピアフも眠っており、その他、音楽家のフレデリック・ショパン、レ・ミゼラブルのジャン・ヴァルジャン、マリア・カラス、そしてジム・モリソンも埋葬されているという…

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