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レッド・ベリーを偲んで〜フォークミュージックの源流“生けるジュークボックス”と呼ばれた男の数奇な人生と偉大な功績

2018.12.06

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1949年 12月 6日、アメリカのフォークミュージックの源流とも言える男レッドベリー(享年61)がニューヨーク市内でこの世を去った。
死因は筋萎縮症側索硬化症とされている。
彼の亡骸は、故郷ルイジアナ州ムアリングスポートのシロー・バプテスト教会墓地に埋葬された。
翌1950年、彼の弟子の一人だったピート・シーガー率いるウィーバースが「Goodnight Irene」をカヴァーして全米ナンバー1に輝く。
作者である彼はその吉報を生きて聞くことはなかった…



その後、アメリカではウディ・ガスリーなど彼から影響を受けたアーティストたちによるフォークブームが巻き起こり、さらに60年代にはボブ・ディランが活躍することで世界中にフォークリヴァイバルのブームが広がってゆく。


12弦ギター、ピアノ、マンドリン、ハーモニカ、ヴァイオリン、コンサーティーナ、そしてアコーディオンを巧みに奏でながら、数多くのトラディショナルソングやブルース、ゴスペル、そしてフォークソングを歌うそのスタイルは“生けるジュークボックス”とも呼ばれていた。
彼のギター演奏テクニックは、エリック・クラプトンやライ・クーダーといった後進達を大いに魅了したという。
彼が歌う曲には、男と女、酒、労働、友情、差別、船乗り、カウボーイ、刑務所など…あらゆる人物や風景、暮らしが描かれており、そのリアリティも魅力の一つだった。
また、彼はフランクリン・ルーズベルト大統領やアドルフ・ヒトラー、公民権運動に火をつけたスコッツボロ・ボーイズ事件、ウォーターゲート事件にも絡む億万長者ハワード・ヒューズなど、当時の“時の人”に関する曲も書いた。



前出の「Goodnight Irene」、そして「Rock Island Line」、「The Midnight Special」といった彼の十八番は、当時のフォーク歌手に欠かせないレパートリーとなっていた。
一般的に12弦ギターの名手として知られている彼の演奏ルーツを辿ると…
1906年(当時18歳)、地元ルイジアナ州の安酒場で聴いたブギウギピアノに惹かれ、ウォーキングベース奏法を自分のギタープレイに取り入れたことが原点だったという。
その後、20代の頃にダラスの街で盲目のブルースマン、ブラインド・レモン・ジェファーソンと出会い、本格的にブルースを教わることとなる。
音楽的には才能豊かな男だったが…
彼はその生涯の中で何度も刑務所のお世話になっている。
高慢な気性と、もめ事を好む性格は、しばしば彼を法に触れる問題に巻き込んだ。
1918年(当時30歳)、彼は喧嘩で自分の親戚を殺害した後、服役を受けることとなる。
テキサス州シュガーランドで投獄され、その服役中に「Midnight Special」のインスピレーションを受けたという。
釈放を懇願するために書いた曲が、パット・モリス・ネフ知事の好みに合ったため、35年の刑罰から(なんと!)2年で釈放されたと言われている。
1930年(当時42歳)、今度は殺人未遂の罪でルイジアナ州立刑務所に服役する。
服役している間、刑務所内では歌で他の看守や仲間の囚人を楽しませたり励ましたりして、まさにエルヴィス・プレスリーの「監獄ロック」を地でいくような男だったという。
そして1934年(当時46歳)、服役中に国会図書館の資料として黒人のフォークソングの収集に来ていた民俗音楽学者アラン・ロマックスのために録音をしたことが人生の転機となる。
その翌年、ロマックスがルイジアナ州知事に早期釈放を陳情し、彼はもう一度釈放される。
更生を誓った彼は、ロマックスのアシスタントとしてフォークソング収集の手伝いをはじめる。
そしてアメリカの各地を旅したのちに、ロマックスの計らいニューヨークに移住し、本格的に歌手活動を再開させる。
ARCと契約してレコードをリリースするもセールスは不十分で富も名誉も得られず…脅迫の罪で(またまた)刑務所に戻ってしまう。
1940年(当時52歳)、刑期を終えた彼を待っていたのは、当時アメリカを中心に盛り上がりつつあったフォークブームだった。
彼は白人フォーク歌手のウディ・ガスリーやピート・シーガーらに歓迎され、活躍の場を手に入れる。
1949年、彼は最初の欧州ツアーを始めるが…旅の途中に筋萎縮性側索硬化症と診断されツアーを中断。
その年の年末に帰らぬ人となる…
彼の死後、ジャニス・ジョプリンは彼の曲をレコードで聴いてブルースに目覚めたという。
その他、ウイリー・ネルソン、ジョニー・キャッシュ、フランク・シナトラ、ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、ドクター・ジョン、トム・ウェイツ、ジェリー・ガルシア、レスポール&メリー・フォード、レッド・ツェッペリンナット・キング・コール、カート・コバーンポーグス、高田渡などなど、彼をリスペクトするアーティストのリストを見れば、その功績の大きさは一目瞭然だろう…

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