「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the DAY

ビリー・ホリデイを偲んで〜波乱万丈な人生を生きた伝説のジャズシンガーの光と影

2020.07.17

Pocket
LINEで送る


1959年7月17日朝3時10分、ニューヨーク市ハーレムのメトロポリタン病院で伝説のジャズシンガーとして名高いビリー・ホリデイ(享年44)が死去した。
死因は腎臓の感染症と肺水腫とされている。
その美しい歌声の一方で、ドラッグに溺れ刑務所に服役するなど、激動の人生を送ったことでも知られる彼女。
1937年、22歳となった彼女は楽団の仕事を通じてサックス奏者レスター・ヤングと出会う。
彼女は10歳の時に強姦され、相手が白人だったために(彼女が被害者なのに)逆に売春容疑で逮捕されるという理不尽な経験を強いられ…以来、自暴自棄になり売春や麻薬にも手を染めていた。
二人はお互いに辛い過去を持つ者同士として意気投合し、仕事仲間から飲み仲間となり、後には麻薬仲間になってゆく。
心に傷を負いながらも、深い絆で結ばれていたレスター・ヤングとビリー・ホリデイ。
互いを「プレス」「レディ」と呼び合い、気持ちを通わせた彼らのプラトニックな関係は、死が二人を分かつまで続いたという。


44年間の生涯の中で、約25年も歌い続けた彼女。
その音楽人生はけっして順風満帆なものではなかった。
キャリア初期には驚くほどハリがあった声も、多量のアルコール・麻薬摂取により、晩年は別人のように枯れてしまい…声量も失われていった。


──1941年、当時26歳だった彼女は1930年代にハンガリー語から英訳された「Gloomy Sunday (暗い日曜日)」を歌った。
それは、自身最大のヒットとなった「Strange Fruit (奇妙な果実)」(1939年)に続く好セールスを記録した。
こうして彼女は成功への階段を着実に昇り詰めてゆく。
そんな中、トロンボーン奏者であり麻薬の密売人でもあったジミー・モンローと関係を深め、母親と住んでいた家を出て結婚することとなる。

「私たちの結婚生活は長くはなかった。私が麻薬の虜になったことをジミーになすりつけようとは思わない。自分のしたことは自分で責任を持つべきだから。誰もがこの習癖の虜になる時は同じような経過をたどるものよ。」


やがて彼女はビバップのトランペット奏者ジョー・ガイと出会い、彼の影響で今度はヘロインにも手を出すようになる。
黒人として初めて立ったメトロポリタン歌劇場での晴れやかな舞台でも、デッカと契約を交わしたときも、彼女はジョーの支配下にありヘロイン漬けだったと言われる。
彼女は当時の状況を振り返り、こんな風に語っている。

「私はたちまちのうちにあの辺で最も稼ぎのいい奴隷の一人になりました。週に1,000ドルを稼ぎましたが、私にはバージニアで綿摘みをしている奴隷ほどの自由もありませんでした。」


やがて彼女の周りでは「契約を守らない」「舞台に遅れる」「歌詞を間違える」といった悪評が囁かれ始める。
ある日、彼女は巡業先で最愛の母サディの訃報を聞くこととなる。
それ以来、鬱状態に陥りアルコールと麻薬への依存を深め、当時大掛りに行っていた『ビリー・ホリデイとそのオーケストラ』によるツアーも打ち切られてしまった。
1947年、32歳の時に彼女は大麻所持により逮捕される。
同年、モンローとの離婚を機にジョーとも別れた彼女は、ウェストヴァージニア州オルダーソン連邦女子刑務所で8ヵ月間の服役生活を送る。
その際にニューヨークでのキャバレー入場証を失効してしまい、それから12年もの間キャバレーへの出演ができなくなってしまう。
1950 年代はクラブや劇場で歌い続け、ノーマン・グランツのプロデュースによって多くの名盤を発表するが…彼女の身体は次第に病魔に蝕まれていく。
亡くなる2年前(1957年)、42歳となった彼女はマル・ウォルドロン・トリオを従えてニューポート・ジャズ・フェスティヴァルに出演する。


1959 年3月、生前最後のアルバムとなった『Last Recording』を録音し終えた4日後(1959年3月15日)にレスター・ヤングの訃報を聞くこととなる。
その頃には彼女の身体も病魔に侵され弱り切っていたのだが、他ならぬ友の旅立ちに“別れの歌”を贈ろうと葬儀に参列した。
埋葬のときにレスターの妻からビリーは歌うことを拒絶される。
深い悲しみに彼女は泣き崩れ…葬儀からの帰り道にこう呟いたという。

「あいつら、唄わせてくれなかった。この次はあたしの番だわ。」


4ヶ月後の7月17日、まるでレスターの後を追うように彼女もこの世を去った…



<参考文献『奇妙な果実 ビリー・ホリデイ自伝』ビリー・ホリデイ(著)油井正一(翻訳)大橋巨泉(翻訳)/晶文社>



こちらのコラムの「書き手」である佐々木モトアキの音楽活動情報です♪
宜しくお願い致します。


新作ミニアルバム『You』のタイトルナンバー「You」のミュージックビデオです♪
映像編集、ポートレート(写真)撮影共に、佐々木モトアキ本人が手掛けております。
とてもシンプルな技法ですが、何よりも登場する皆さんの表情が素敵です✨
人が“目を閉じている”表情。
その“瞼(まぶた)に浮かんでいる”誰かの顔。
繋がってゆく“一人ひとりの想い”が、100通りの、いや1000通りのドラマを描いてくれています。

「どんなに離れていても 何度生まれ変わっても 僕らは巡り逢う」

2020年4月22日リリース!!!
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12572525158.html

唄うたい佐々木モトアキの新曲「You」、山善の秀作「一本の赤い薔薇」のカヴァーを含む珠玉の作品集。
遠く離れて暮らす大切な人、男の友情、忘れられない場面、誰かの溜め息、出逢えた奇蹟、長く曲がりくねった道、喜びと悲しみ…どうしようもないこと。
7篇の歌物語に心を重ねて、あなたの大切な人(You)の名前を呼んでみてください。




【佐々木モトアキ独り唄いTOUR“歌ものがたり2020”春夏】

■7月18日(土)岩手(二戸) HOUSE OF PICNIC
■7月19日(日)秋田(能代) ハックルベリー 
■8月1日(土)群馬(渋川) Casa Midori
■8月22日(土)大阪 新世界ヤンチャーズ
■8月23日(日)徳島 デラシネ 
■8月24日(月)東広島 pasta amare
■8月28日(金)福岡 Bar KINGBEE
■8月29日(土)大牟田 陽炎
■8月30日(日)佐賀 RAG-G〜Que Sera ,Sera Vol.3〜

↓チケットご予約&公演詳細はこちら
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12576468028.html

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the DAY]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ