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ビートルズの「The Long And Winding Road」が日本で発売された日

2022.09.05

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1970年(昭和45年)9月5日、ビートルズの「The Long And Winding Road」(東芝音工)が日本で発売された。
同年の国内ヒットソングといえば…

1位「黒ネコのタンゴ」/皆川おさむ
2位「ドリフのズンドコ節」/ザ・ドリフターズ
3位「圭子の夢は夜ひらく」/藤圭子

大阪万博が開幕し、日本航空機よど号ハイジャック事件発生、空前のボーリングブーム、そして“ウーマン・リブ”(Women’s Liberation の略で女性自身の手による女性解放
運動を意味する)という言葉が流行した年でもある。


君の扉へと続く、長く曲がりくねった道
決して消える事は無い
以前にも訪れた道、僕をいつもここへ…
君の扉へ導いてくれる


この曲はビートルズのラストアルバムとなった『Let It Be』の10曲目に収められたバラードナンバーで、レコーディングは前作アルバム『Abbey Road』より前に行われている。
この曲の録音がアップルスタジオでの開始されたのは、1969年1月26日だったという記録が残っている。

クレジットには“レノン=マッカートニー”と書かれているが、実質的にはポールが作った楽歌詞はスコットランドにある農場で書かれたものだという。
ポールはこの曲を書いた時の心境をこう語っている。

「あの頃の僕は疲れきっていた。どうしてもたどり着けないドア、達し難いものを歌った悲しい曲だよね。終点に行き着くことのない道について歌ったんだ。」


レコーディング資料には録音時の楽器編成が以下のように記されている。

ポール・マッカートニー=ピアノとリードボーカル
ジョン・レノン=Fender6弦ベース
ジョージ・ハリスン=アコースティックギター
リンゴ・スター=ドラムス
ビリー・プレストン=ハモンドオルガン


ジョン・レノンはあるインタヴューでこんなことを語った。

「僕らが最終的に割れてしまう前のポールにはスパートがかかっていた。ヨーコと僕との間に起きていたことのショックが、彼にクリエイティヴなスパートをかけさせたのだと思う。それがLet It Beやこの曲を生んだんだ。この曲はビートルズにとって最後の輝きだ。」


アメリカと日本では、この曲が“ビートルズのラストシングル”として発表された。
ビルボード誌では、1970年6月13日に週間ランキング第1位を獲得。
キャッシュボックス誌でも2週連続第1位を記録し、アメリカだけで100万枚以上のセールスを記録している。
当時ポールは、もう一度シンプルな音楽を小さなライヴハウスで演奏していきたいという夢を抱いていたという。
しかしジョンは、そんなことすればファンが殺到し、混乱に陥る事態になるだけだと反対した。
世間のイメージとは逆に、ここではポールが理想主義者でジョンが現実主義者だった。

なぜ僕はここに立ち尽くしているの、行く道を教えてよ
僕は何度も一人きりになり、何度も泣いていた
君には決してわからないだろうけど、僕は様々な努力をしてきた
それでも長く曲がりくねった道が目の前にのびている
ずっと昔、君は僕をここに置き去りにした
僕をもう待たせないで…君の扉へ導いて


──それは1969年1月2日、年明け早々の出来事だった。
ビートルズのメンバーは、イギリス老舗撮影所トゥイッケナム・フィルム・スタジに姿を現した。
もはや先行きが見えなくなってしまっていたバンドの活動状況を打破する為に、ポールが打ち出したのは“ゲットバック(原点に帰る)”というコンセプトだった。
ポールは他のメンバーに対してコンサートツアーの再開を提案したが…ジョンもジョージもリンゴも難色を示したという。
話し合いの結果「リハーサルなどを含むドキュメンタリー映像作品を制作してテレビで放送する」という事で合意した4人は、このフィルムスタジオでリハーサルを開始したのだった。
しかし、いつも撮影されているというプレッシャーやポールとの気持ちのズレなどを理由に(一週間後には)ジョージがスタジオを出て行ってしまう。
数日後にジョージは復帰するが、当初の番組制作の企画は流れることとなる。
映像撮影、そして「オーバーダビング(重ね録り)をやらない」というコンセプトのアルバム制作は続行されるものの…同年1月30日のルーフトップコンサート、そして翌日に地下のアップルスタジオで行われたセッション(撮影)をもって、ビートルズはこのプロジェクトを放棄することとなる。
残された撮影・録音テープは、90時間を超えていたという…
その撮影テープは後に映画『レット・イット・ビー』となり、録音された音源はフィル・スペクターの手によってまとめられ、ビートルズのラストアルバム『Let It Be』として翌1970年5月8日に本国イギリスで発売される。


【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
http://www.tapthepop.net/author/sasaki

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