「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

Extra便

内田裕也語録その3~「男としていちばん輝いてる10年間は人のために尽くしました」

2019.12.14

Pocket
LINEで送る


内田裕也が1976年に出した初の単行本「俺はロッキンローラー」には、子どもの頃に思っていた「カッコイイニイチャン」になりたいという、素朴な憧れが語られている。

「見てるだけで、えれェカッコイイとかオモシロイなアッってのが、Rockなんだと思う」




大阪の堺市で裕福な家庭に育った子どもの頃、ユーヤさんの環境が大きく変わったのは、家の経済状態が次第に悪化していったからだった。
小学生のときに住んでいた豪華な邸宅から、小さな2階建建ての住宅に移ったものの、まもなく長屋住まいになった。

それにともなって引っ越しと転校が続いて、だんだん貧乏になっていく過程で、ユーヤさんは中学に入って反抗期をむかえている。

そこでストレス解消とか、フラストレーションの発散が、そのままロックンロールの起爆剤になっていく。

そのころだね、音楽に目覚めたのは。河内長野市のドブ板のある家で、ロックンロールを聴いていてから、なにかッていうと、ホウキもってきちゃア、やってたね、ギターのつもりで。
テレビなんてないころだから、本物は、もちろん見たことはないんだけどさア。踏み台の上に乗っかっちゃ、ホウキをギターにして、やってたね。なぜか、ロックンロール聴くと、落ち着いたんだよねエ。


ユーヤさんはその後、高校を中退して大阪のジャズ喫茶で唄ったり、司会をこなしたりして認められる。
だが2年で高校をやめた後も、ロックをやるためにとの思いから、小学生並みでいいので英語は一生懸命に覚えた。

自分が生きているという生命感、躍動感、存在感、世界に出たいという冒険心、それらはロックでしか考えられないからであった。  

しかし華やかなロカビリーブームからエレキブームの時代に東京に出てきて、レコードを出してデビューを果たしたものの、まったくといっていいくらい売れなかった。




そうした不遇の時期を経ることで、歌手としての限界を自覚したのかもしれない。

ユーヤさんは1964年に尾藤イサオとのツイン・ボーカルで、バックにはジャッキー吉川とブルーコメッツ、寺内タケシが率いるブルージーンズを従えて、アルバム『ロック・サーフィン・ホット・ロッド』を発表した。

1965年の雑誌「ミュージックライフ」のインタビューで、ボン青木の少しイジワルな質問にも、ユーヤさんは怒ったりせず、正直に本心を話していた。

青木:この頃の歌い手さんの中には、ハーモニーとか、メロディーというものが欠けている人が多いと思うんだが……?
内田:そうですね。確かに僕なんかもう自分で言うのもおかしいんですが、リズム感というものはあると思うんです。でもハーモニーとかメロディーとなると、むずかしいですね。


ユーヤさんはそのメンバーで、1966年6月のビートルズの日本公演で前座を務めたが、その後はアーティストを発掘して育てるプロデューサーの仕事に軸足を移していった。
きっかけは大阪のジャズ喫茶で、沢田研二がヴォーカルのファニーズを発見したことだったという。

そこからは見た目でなく、ロックを生き方として、自分のものにしていく道を選んだのである。
それから10年が過ぎて世に出た「俺はロッキンローラー」に、自分を飾らない素直な文章が出てくる。

俺の場合、邸宅からいきなり長屋住まいになったとき、ガキながらも、俺はなにかやってやろうと思ったんだと、いまになって思う。
そしてRockerになれたから、今生きていることを感じている!
自分自身を表現できる唯一のもの、それがロックだと俺は信じている。


それからさらに35年の歳月が過ぎて、2011年に行われたテリー伊藤との対談のなかで、ユーヤさんは「僕はヒット曲はないですけど、29歳から39歳までの10年間、タイガースも含めて、みんなを世に出す助産師をやった」と、裏方としての仕事を振り返っていた。
そして最高の発言を残している。

「男としていちばん輝いてる10年間は人のために尽くしました」





<参考文献>
・内田裕也著「俺はロッキンローラー」(廣済堂文庫)
・黒沢進・監修「ルーツ・オブ・ジャパニーズ・ポップス1955-1970 : ロカビリーからグループサウンズまで」(シンコー・ミュージック)

なお、最後の発言は「‪テリー伊藤 対談 内田裕也(4)」から引用させていただきました。・アサ芸プラス https://www.asagei.com/excerpt/1534 #アサ芸プラス



Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[Extra便]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ