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中村八大による” 変な歌 ”「じんじろげ」は、まるで意味不明の歌詞にも関わらず大ヒット!

2016.06.10

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俳優の火野正平がNHK-BSプレミアムでオンエアされている番組、「自転車こころ旅」で岐阜県恵那市にある大井ダムに行ったときのこと。

木曽川をせき止めた水で水力発電を起こす大井ダムは高さ53メートル、高所恐怖症の火野はダムの上を恐る恐る自転車を引いて進んでいたが、恐怖心を打ち消そうとしたのか急に歌を唄い出した。

日本における”変な歌”のなかでも、意味不明な歌詞としては筆頭格の「じんじろげ」だった。

68106510じんじろげ

ちんちくりんのつんつるてん
まっかっかのおさんどん
お宮に願かけた 内緒にしとこう

ジンジロゲーヤ ジンジロゲ
ドーレドンガラガッタ
ホーレツラッパノツーレツ
マージョリン
マージンガラチョイチョイ
ヒッカリコマタキ ワーイワイ

ヒラミヤパミヤア チョイナダディーヤ
ヒラミヤパミヤア チョイナダディーヤ
チョイナダディーヤ 
チョイナダディーヤ





「ちんちくりんのつんつるてん まっかっかのおさんどん お宮に願かけた 内緒にしとこう」までは日本語らしい。
だが、「お宮に願かけた 内緒にしとこう」が、なにを意味するのかはわからない。
その先からは何語なのかさえわからない。
しかしこの”変な歌”は、何やら楽しげなメロディとサウンドで大ヒットしたのである。

ロカビリー出身の森山加代子は前年の6月、イタリアのミーナが歌った『月影のナポリ(Tintarella di luna)』の日本語カヴァーでデビューして、一躍スターになった18歳のアイドル・シンガーだ。

「 月影のナポリ」

♪ティンタレラディルナ 蒼いお月様
 あの人に云って キスして欲しいって
 そしてお月様 ねェ 彼を返して

 ティンタレラディルナ あの人を街で
 初めてみたとき 月が出ていたっけ
 あのとき私は ねェ 恋をしたのよ

 ティン ティン ティンと 胸の鳴る
 ティン ティン ティン あまい恋よ
 お月様 その光で


こちらもまた歌の出だしが「ティンタレーラディルンナ」と聴こえるが、普通の人にはまるで意味不明のイタリア語である。
しかも途中からは英語の「キス」や「ティン」が出てくる、無国籍ソングだった。

英語で錫を意味する「Tin」をイタリア語の歌詞に取り入れて繰り返した「ティン ティン ティン」は、日本語にも通じる語呂で馴染みやすかった。
そもそもミーナの原曲は12小節のブルース・コードで、イタリアのカンツォーネとアメリカのロックンロールとの融合から生まれた。

イタリア製の西部劇映画マカロニ・ウェスタンならぬ、音楽のマカロニ・ロックンロールが日本語になって、さらに多国籍化してヒットしたのである。




森山加代子のセカンド・シングル「メロンの気持ち」も、キューバの「Corazon De Melon(メロンの心)」のカヴァーだった。
“♪コラソン デ メロン デ メロンメロンメロンメロンメロン~” のフレーズが、強く印象に残るラテン・ナンバーである。

いわば言葉遊びのような歌詞がヒットしたことから、マナセプロダクションの曲直瀬社長は「ヂンヂロゲ」という歌を思い出して、森山加代子の新曲に仕上げてほしいと作曲家の中村八大に相談した。
明治時代の末期から演歌師や学生に歌い継がれていた「ヂンヂロゲ」には、インドに由来する「ヒラミルパニヤ」という元歌があったらしい。

曲直瀬社長からうろ覚えだった歌を口伝てに教わった中村八大は、そこから摩訶不思議でごきげんな歌を誕生させたのだ。
これは新鮮さが注目されていた森山加代子という歌手から、ヴォーカルの魅力を最大限に引き出した作曲とアレンジの力によるものだろう。

日本語の意味とは無関係に「音」で覚えられたことで、「じんじろげ」は人々の心の奥底に記憶されていった。
恐怖心を打ち消そうとした火野正平が、急に唄い出したのはそういうことだったのではないか。

「じんじろげ」から半年後、中村八大はマナセプロダクションの新人歌手、坂本九のために「上を向いて歩こう」を作っている。
作曲家としての才能はもちろんだが、それ以上にプロデューサーとしていかに優れていたのかがよくわかる。




『明日があるさ~中村八大作品集』
EMIミュージックジャパン

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