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大竹しのぶと山崎まさよしの「黄昏のビギン」は忌野清志郎との縁から始まっていた

2014.10.21

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大竹しのぶと山崎まさよしが初めて同じステージに立ったのは、2013年4月2日のことだった。

忌野清志郎の誕生日にあたるこの日は、長年にわたってバンド・メンバーとして活動を共にしてきた三宅伸治が、”忌野清志郎の音楽に感謝しよう”という主旨のコンサート「感謝の日」を主催していた。

東京・下北沢のライブハウス「GARDEN」で開かれた「第4回 感謝の日」は、武道館で行われた完全復活祭で「何が嬉しいって、俺はバンドに戻って来れたことが嬉しい」と忌野清志郎に言わせたバンド、Nice Middle with New Blue Day Hornsが出演した。
そのほかにゲストとして山崎まさよし、石塚英彦、ユリア、元JAYWALKの中村耕一、さらには女優の大竹しのぶ、そしてCharが登場して観客をわかせた。

t02200165_0800060012486223966感謝の日

そして2014年の「第5回感謝の日」は東京・渋谷の「AX」で開かれたが、いつものようにNice Middle with New Blue Day Hornsが出演、RCサクセション時代からの朋友の仲井戸麗市、憂歌団の木村充揮、金子マリ、斉藤和義、大西ユカリ、ウルフルケイスケ、暴動(グループ魂)、ユウ(元・GOGO7188)、そして昨年に続いて山崎まさよしと大竹しのぶがゲストとして参加、それぞれに忌野清志郎の残した歌を歌い継いだ。

大竹しのぶはタイマーズがカヴァーした「明日なき世界」を歌ったが、出だしで歌詞を間違えてしまうハプニングが起こった。
その模様を公式サイトのスタッフ・ブログは、このように伝えていた。

「ごめんなさい!もう一度、最初からやり直しさせてください!」というお願いに、バンドの方々、お客様は「イェーイ!!」と盛り上げてくださいました!

清志郎さんも「まったく、しょうがねぇな~」と思ってくださったでしょうか。
仕切り直したあとは、跳んだり、走ったり、足を蹴り上げたり!ハイテンションで歌い切りました!


それから3ヶ月後、大竹しのぶと10人の男性アーティストによるデュエット・アルバムの制作発表があった。
タイトルは『歌心 恋心(うたごころ こいごころ)』で、「好きな歌と 好きな人」をテーマに10アーティストと10曲をデュエットする企画だ。

そもそものきっかけは1年前、泉谷しげるのアルバム『昭和の歌よ、ありがとう』で歌った「黒の舟唄」が、かなりの評判を呼んだことだった。
そこからシンガーとしての大竹しのぶに、アルバムの企画が持ち上がったのである。

「デビュー時からファンでした」という山崎まさよしと一緒に歌いたいと、大竹しのぶが選んだ曲はちあきなおみのカヴァーによってスタンダードとなった「黄昏のビギン」だ。

「死んでもいい」という昔、自分が出た映画で、ちあきなおみさんが歌っているのを初めて聞き、なんて素敵な歌なんだろうと思ったのが最初です。
大人の恋という感じで、大好きな歌のひとつになりました。(注2)


キネマ旬報ベスト・テンや毎日映画コンクールで大竹しのぶが主演女優賞に選ばれた映画『死んでもいい』(1992年)の中で、「黄昏のビギン」は実に効果的かつ印象に残るように使われていた。

作詞が永六輔・中村八大で作・編曲も中村八大という、いわゆる六・八コンビが1959年に作った「黄昏のビギン」からは、奇しくも忌野清志郎とのつながりが浮き彫りになってくる。

忌野清志郎がロック・バンドとしての新生RCサクセションを始動していた1979年に、最初のシングル盤として選んだ歌が六・八コンビの代表作「上を向いて歩こう」だったのである。

step 上を向いて歩こう RCサクセション

その当時から忌野清志郎はインタビューで、「ぼくはこの曲(「上を向いて歩こう」)をA面にしたかったんですけどね。強力な反対にあってB面にまわされてしまいました」と、当時の経緯を明らかにしている。(注1)

RCサクセションのライブではそれ以前からきわめて重要なレパートリーとなっていた「上を向いて歩こう」、そこから「雨あがりの夜空に」へと続く流れによって、ファンとバンドの両方に大きな盛り上がりをもたらしていた。

イントロが始まると必ず「日本の有名なロックンロール」と紹介してから歌った忌野清志郎は、坂本九によって国民的な愛唱歌になっていた懐かしい楽曲に、ロックのサウンドとグルーヴによって新しい命を注ぎ込んだと言えるだろう。

そんな先人をリスペクトする「感謝の日」で同じステージに立った二人が、同じく六・八コンビが残した名曲にふたたび新たな命を吹き込もうとしている。

ラジオやテレビなど各メディアから伝わってくる山崎まさよしの発言からも、歌と人との縁がどこかしらでしっかりつながり合っていたことで、このコラボレーションが実現したことが伝わってきた。

「黄昏のビギン」は、ちあきなおみさんが歌っているのを知っていて、すごくいい曲だなあと思っていたのですが、中村八大さんと永六輔さんのコンビだとは、知りませんでした。
大竹さんは、大女優なのに、無邪気に一生懸命、好きな事をやっているところがチャーミングで素敵です。
デュエットしてみて、歌に魂が入っているというか、一緒に歌う時も聞いているだけで気持ちよかったです。(注3)



(注1)引用元「清志郎が教えてくれたこと」(今井智子著 飛鳥新社)
(注2)および(注3)に関しては、ラジオやテレビなど各メディアでの大竹しのぶ氏と、山崎まさよし氏の発言から抜粋しました。
なお、ライブの写真は「三宅伸治オフィシャルブログ2013年4月3日『感謝の日』」(http://amba.to/12fDeUx)からの転載です。

<こちらのコラムもあわせてお読みください>

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「黄昏のビギン」
大竹しのぶ×山崎まさよし


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