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マライア・キャリーのクリスマス・ソングにオールド・ロックを盛り込んだ3人

2014.12.12

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12月になると必ず耳にするクリスマス・ソング。
定番の「ホワイト・クリスマス」や「ウィンターワンダーランド」、そしてジョン・レノンとオノヨーコの「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」やポール・マッカートニー&ウイングスの「ワンダフル・クリスマスタイム」など、温もりや雪景色などをイメージをさせるものが多いです。

しかし、マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」には、美しさよりも華やかでキラキラした印象があります。
他と比較するとかなりアップテンポで異色の存在にも感じられるかもしれませんが、多くの人に愛されて世界中のアーティストにカバーされています。
それほどに人を惹きつけるこの曲の魅力とは何なのでしょうか?

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マライア・キャリーは1990年にデビューしたときから、音楽プロデューサーのウォルター・アフェナシエフと共に楽曲を作っています。
1994年に発売されたアルバム『メリー・クリスマス』に収録されたこの曲も、ウォルターとの共作だったのですが、2人はこのアルバムのために全部で3曲のクリスマス・ソングを書きました。(※1)

1つ目は少し悲しいバラードの「Miss You Most (At Christmas Time)」、2つ目は、クラシックで宗教的な雰囲気も漂う「Jesus Born on This Day」、3つ目が「恋人たちのクリスマス」でした。

それぞれ雰囲気の異なる3曲ですが、マライアが一番やりたかったのは3つ目のタイプ、フィル・スペクターが作り出すような60年代のオールド・ロック風クリスマス・ソングを目指していたのです。(※2)

ウォルターがロックにブギのリズムを加えた旋律をピアノで奏でると、マライアが歌詞やメロディの一部を歌い始める。そうやって二人で一緒に、歌いながら作り上げたそうです。
メロディへのこだわりはもちろんのこと、歌の核となる部分は「歌詞」であるとマライアと二人は考えていました。

クリスマスにたくさんのものはいらない
ツリーの下に置いてある、クリスマスプレゼントにも興味はない
クリスマスに欲しいのは、あなただけ


こうしたストレートな愛の言葉が、オールド・ロックとブギの要素を取り入れたメロディに乗って、多くの人の心を捉えることになりす。

メロディや歌詞にアレンジを加えながら時間をかけて完成した曲は、1994年夏からレコーディングを始めて、その年のクリスマスシーズンに発売されました。

この曲を制作していた頃のマライアは23歳、所属レコード会社の重役であるトミー・モトーラと結婚したばかりでした。

マライアを成功に導くため、トミーは多くのことに干渉をしていた(と自叙伝でも認めている)ので、この曲にも大きく関わっているようです。
当時の2人の心境は本人のみが知るところですが、共作者のウォルター・アフェナシエフ、夫のトミー・モトーラ、そしてマライア・キャリーという3人の想いと才能が重なり合ったからこそ、この曲は多くの人たちの心を掴むような曲になったのでしょう。

『メリー・クリスマス』はアメリカで500万枚を売り上げ、クリスマス・アルバムとしては異例の記録を樹立しました。また、日本でもドラマで使用されたのがきっかけで250万枚を売り上げて、大ヒット・アルバムになりました。


クリスマス・ソングとして成功を収めた「恋人たちのクリスマス」のカバーが増えてきたのは、2000年代に入ってからです。

口火を切ったのは、2003年に公開されたイギリス映画「Love Actually」。クリスマスシーズンのイギリスを舞台に、恋する人々の姿をオムニバス形式で描いた映画です。
この中で10代前半の少女が学校の発表会で「恋人たちのクリスマス」を歌いますが、最後のフレーズを歌い上げる時、自分が想っている男の子を指さす仕草が、何とも可愛らしいシーンとして知られています。

その後、アメリカのパンク系バンド マイケミカルロマンスや、シンガーソングライターのジョン・メイヤー、そしてカナダ出身の人気アイドル ジャスティン・ビーバー(マライアとのデュエット)、同じくカナダ出身のマイケル・ブーブレなど多くのアーティストが、「恋人たちのクリスマス」をカヴァーしています。

どのヴァージョンにもアーティストの個性がよく表現されていますが、やはり「クリスマスに欲しいのは、あなただけ」という直球の言葉が胸に響き、気持ちが弾むようなメロディが奏でられています。

発表から20年が経った今も多くの人に愛される「恋人たちのクリスマス」。音楽のジャンルを超えて歌い継がれる、クリスマスの定番として、いつまでも耳にする歌となるでしょう。

<文・石井由紀子(MusicSommelier)>

【脚注】

※1  Mariah Carey’s ‘Merry Christmas’ 20th Anniversary: Find Out What Went Into Making a Modern Christmas Classic(ビルボードWeb版/ウォルター・アフェナシエフへのインタビュー:2014/10/30)
※2 フィル・スペクター:音楽プロデューサー、ソングライター。1960年代から数多くのヒット曲を手掛ける。ザ・ビートルズの「Let It Be」の他にも、ジョン・レノンやジョージ・ハリソンなど世界的なアーティストのプロデュースも行っている。


My Chemical Romance “All I Want For Christmas Is You”


Jonn Mayer “All I Want For Christmas Is You”


Justin Bieber “All I Want For Christmas Is You (SuperFestive!)”


Michel Bublé “All I Want For Christmas Is You”


【参考文献】
Mariah Carey’s ‘Merry Christmas’ 20th Anniversary: Find Out What Went Into Making a Modern Christmas Classic (ビルボードWeb版/ウォルター・アフェナシエフへのインタビュー:2014/ 10/30)
http://www.billboard.com/articles/news/6296926/mariah-carey-merry-christmas-anniversary-all-i-want-for-christmas

マライア・キャリーの元夫トミー・モトーラ氏、自叙伝でマライアに初めて謝罪。(Excite.ニュース 海外セレブゴシップ 2013/2/1)http://www.excite.co.jp/News/world_ent/20130201/Techinsight_20130201_71056.html

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