「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

Extra便

1989年のボ・ガンボス──時代に極彩色の衝撃を与えたロック・バンド

2024.01.28

Pocket
LINEで送る

変な髪の色をしてカラフルに着飾った国籍不明のボーカル/ピアノもギターも巧みにこなす貴公子のようなマルチプレイヤー/妖しげ存在感を醸しながらクネクネと身体を揺らすベース/どっしりと構えてソウルフルなビートを繰り出すドラム──初めて彼らのステージを体験した時の、目にも耳にも驚かされた感覚──ロックンロールを下敷きにしながら、ニューオーリンズ音楽やリズム&ブルース、ファンク、サイケ、フォークと、様々な音楽への扉を開いてくれたのが、ボ・ガンボスというバンドだった。

1989年にデビューした彼らだが、その活動期間は6年2ヶ月という短いものだった。しかし、ボ・ガンボスが日本のロックに与えた衝撃は、今も褪せることなく焼き付いている。

この度デビュー25周年を記念してリリースされた『BO GUMBOS 1989』は、1989年に発表されたファースト・アルバム『BO & GUMBO』の最新リマスター盤、未発表音源集、オリジナル・マスターテープから新たにミックスを施した音源、そして彼らのデビュー作であるビデオ作品『宇宙サウンド』の4枚組に84ページのブックレットが収録されたBOXセットだ。Dr.kyOnの監修の下、1989年のボ・ガンボスが、25年の時を経て鮮やかに蘇る──。

ボ・ガンボス「魚ごっこ」 from『宇宙サウンド 2014 EDITION』


ローザ・ルクセンブルグのメンバーとして活動していたヴォーカルのどんと、ベースの永井利充が、ドラムの岡地明(現・岡地曙裕/吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズ、ブレイクダウンなどで活躍)と1987年初頭からセッションを重ね、後にどんとの京都大学の先輩であるキーボード/ギターのKYON(現・Dr.kyOn)が加わり結成された、ボ・ガンボス。その名前は、どんとが敬愛するロックンロールの始祖であるボ・ディドリーと、KYONが心酔し、バンドが奏でるサウンドの核にもなったニューオーリンズ音楽のゴッタ煮感覚を象徴する、彼の地の郷土料理=ガンボを掛け合わせて生まれた。

1987年11月、明治大学・生田祭での初ライブ(w/JAGATARA、ばちかぶり)を皮切りに精力的にライブを展開して着実にファンを増やし、翌1988年にはレコード会社各社による激しい争奪戦が繰り広げられていたという。1988年10月にEPICソニーと契約。1989年2月にはメジャーデビュー前にも関わらず、ホールでの初単独ライブを中野サンプラザにて2日連続で行うなど、ボ・ガンボスに寄せられる期待度・注目度の高さは破格であった。ちなみに『BO GUMBOS 1989』封入のブックレットには、1989年当時の1年間のスケジュールが詳細に載っているのだが、連日に及ぶ取材、ライブ、リハーサル、レコーディングと、その過密ぶりにはあらためて驚かされる。

donto-no2_th nagai-no1_th

1989年4月21日、浅草・常盤座でライブ収録したビデオ作品『宇宙サウンド』と、シングル「時代を変える旅に出よう」の同時発売でメジャー・デビューを果たす。デビュー作が映像作品というのは、当時でもあまり類を見ない試みで話題を集めたが、それもボ・ガンボスの真髄はステージにこそあるという、ライブバンドとしての矜持の表れだったのだろう。時を同じくして、4月にはメンバーにとって憧れの地であるニューオーリンズに渡りファースト・アルバムの制作に取りかかり、敬愛するボ・ディドリーやシリル・ネヴィル(ネヴィル・ブラザーズ)らとレコーディング・セッションも実現。またニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテイジ・フェスティヴァルにも出演し、アラン・トゥーサンとも共演を果たした。

okachi-no1_th kyon-no1_th

帰国後すぐ、日比谷野音でのワンマンライブを開催。同年7月1日にはファースト・アルバム『BO & GUMBO』をリリース。さらに9月には日本でボ・ディドリーと共演ツアーを行い、10月から翌年1月まで中野サンプラザでマンスリーライブを展開……と、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのアクションを見せた1989年だったが、ある意味ではデビューの1年で、どんとが当初思い描いたバンドとしての夢はほとんどが叶ってしまったのかもしれない。つまりバンドの核心がギュッと凝縮されていたのが、1989年のボ・ガンボスなのだ。

デビュー前から解散まで繰り返し披露されてきた代表曲の多くを収録したアルバム『BO & GUMBO』、そして初の映像作品『宇宙サウンド』。そこに収められた音/収めきれなかった音を深く掘り下げることで、彼らが求めていた音楽や、目指していたバンドの姿に近づけるのではないか──本稿から7本連続で続くコラムで、その一端に触れてみたいと思う。

ボ・ガンボス『BO GUMBOS 1989』

ボ・ガンボス
『BO GUMBOS 1989』

(ソニー・ミュージックダイレクト)


*『BO GUMBOS 1989』は完全生産限定盤です。
 詳細は 『BO GUMBOS 1989』特設サイト を参照ください。

special_bogumbos-160x90

TAP the POP 特集 ボ・ガンボス



おまけ
ボ・ガンボス「ダイナマイトに火をつけろ」 TVK『ライブトマト』出演時の映像(1989)


初期のボ・ガンボスで、ラストに演奏されることが多かったロックンロール・ナンバー。イントロで語りかける言葉からして、今の時代に響くフレーズばかり!

イントロ どんとMC書き起こし

音楽が好きな人でも、過激な人もいます。
さぁさぁさぁさぁ、社会に楯突いていきたいあなた!
あなたのために、ボ・ガンボスが歌を作りました。
革命を起こしたいあなた!
この歌と一緒にやりましょう。
イェイイェイイェイイェイ!
登校拒否の方も、仕事が嫌な方も、一緒に歌いましょう!
イェイイェイイェイイェイイェーイ!

嫌なことならすることはないよ 好きなことでも大変なのに
嫌なことなどする暇はねぇぜ そんなもんは燃やしてしまおう!
いくぜー! ダイナマイトに火をつけろ!


●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから


TAP the POPメンバーも協力する最強の昭和歌謡コラム『オトナの歌謡曲』はこちらから。

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[Extra便]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ