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久世光彦特集~スーパーマンの欠陥商品だったというパーマンのエンディング・テーマ曲

2015.03.06

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作家の久世光彦はTBSテレビの演出家で、脚本家の向田邦子と組んだ『時間ですよ』や『寺内貫太郎一家』、『ムー一族』などを手がけ、やがてプロデューサーもかねるようになり、作詞家としても活躍した後に、小説やエッセイがメインの文筆家として活躍した。

耽美的で懐古調の小説『一九三四年冬―乱歩』で認められ、小説と評論の他、歌に関する多くのエッセイも残している。
独特の味わい深い文章は、いかにも文学者のものである。

歌謡曲の作詞や脚本家としてのペンネームは、市川 睦月(いちかわ むつき)、小谷 夏(こたに なつ)、林 紫乃(はやし しの)など、女性を思わせるようなペンネームを使い分けていた。

レコード大賞に輝いた香西かおりの「無言坂」ほか、約150曲の楽曲を残したのだが、最も意外なのはアニメのエンディング・テーマ曲「パーマンはそこにいる」ではないだろうか。


藤子・F・不二雄の原作によれば、スーパーマンには及ばないということで「スー」をとってパーマンとなったのが由来だという。

しかしこの歌では”欠陥スーパーマン”なので、”スーがスーッと消えて”しまったと歌われている。
それにしても”スーッと消えて”という歌詞は、さすがに上手いなと思わせる。

シュガーの「ウエディング・ベル」で知られる作曲家の古田喜昭は、パーマンの作曲を依頼されてデモテープを制作して提出する際に、意図が伝わりやすいようにとかなり表情を付けて歌ったという。
そうした事情から予定外で、作曲者が自ら歌うことになったと述べている。(注)

プロデューサー、レコード会社、制作会社が出席する会議の席上、いきなりプロデューサーが「この歌を歌ってるのは誰?」
、、やばいと思いつつ「僕です」、、と答えました。
(調子に乗って歌いすぎたかな??)
「あ、そう。これ古田君に歌ってもらうのはどう?」
、、レコード会社と制作会社の人達が「それ、いいですね!!」
、、「えっ。。」
、、さあ大変!
本番のレコーディングに備え、なんと自分で歌った歌を自分でコピー(物マネ)するはめになりました。


サビで”パ”の音が繰り返されるところはスカの軽快なビートで、2013年にヒットした大友良英の「あまちゃん オープニングテーマ」よりも30年早かった。
歌詞で欠陥商品だったと歌っている割には、たいへんに良く出来たポップスだったのである。

そしてイントロが特にそうだが、テーマつながりで全体が『笑点のテーマ』にも通じる、そんな懐かしさを感じさせるところも親しみやすい。

ところで中村八大が作曲したおなじみの「笑点のテーマ」は、1969年11月に立川談志が司会を降板した後から新しくテーマ曲としてが導入されたものだ。

現在では『笑点』だけでなく、日曜夕方の代名詞ともなっている。
このままいくと後4年半で半世紀を迎える、歴史的な長寿のテーマソングになるかもしれない。

(注)作曲家の古田喜昭さんの文は「パーマン研究白書」からの転載です。http://www.pawatch.com/fulta_message.html 投稿者:fulta 投稿日:2006年08月30日(水)19時27分00秒

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