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ジョニ・ミッチェルの歌から学ぶ“本物の表現力”とは?

2015.04.05

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カナダ出身の伝説的フォークシンガー、ジョニ・ミッチェル(71)が3月31日(アメリカ時間)、ロサンゼルスの自宅で意識不明の状態で発見され、病院に搬送されたことが明らかになった。
ロサンゼルス消防署のスポークスパーソンによると、通報を受けて救急治療隊がベルエア地区にある自宅に駆けつけ、午後2時30分頃に彼女を病院に搬送したという。
彼女の公式サイトには、「ジョニは今日の午後、自宅にて意識不明の状態で発見されましたが、ロサンゼルス地区にある病院へ向かう救急車の車内で意識を取り戻しました。現在は集中治療室で各種の検査を受けており、意識もあり元気です。今後も状況が分かり次第お知らせします。キャンドルを灯して歌いましょう。みんなで彼女にお見舞いの気持ちを送ってください」と書かれている。[MTV JAPANニュースより]
今日は彼女の回復を祈りつつ…リスペクトとエールを込めて綴ったコラムをご紹介します。

♪「A Case Of You」/ジョニ・ミッチェル



ジョニ・ミッチェルの歌に「A Case Of You」という名曲がある。
それは彼女が1971年に放った不朽の名盤『Blue』に収録されていた。
当時から画家としての才能も発揮していた彼女は、このアルバムをキャンバスに見立てて“自由で複雑難解な女心”をリリカルに歌い描いたのだ。
この曲タイトル“A Case Of You”を直訳すると“あなたの場合”みたいな意味となるのが、彼女がこの歌詞で表したものはちょっと違ったものだった。
あなた(You)をワインに喩えて「あなたなら1ケースだって飲み干せるの」と彼女は歌った。
つまり「あなたの事となればどれだけでも受け入れられる」という、女の恋心を表している言葉なのだ。
また、彼女はあるインタビューでこんなことを語っている。


「一般の家庭なら親が子供に聖書を読んで聞かせるのですが、わたしの母は違ってたわ。母はロマンチストで、わたしにシェイクスピアを読んで聞かせてくれたの。」


それは、彼女のルーツを垣間みるような貴重な発言だった。
この曲に出てくる“I am as constant as a northern star.”という歌詞は、シェイクスピア作品の『ジュリアス・シーザー』という悲劇に出てくるセリフから引用されたものである。


Just before our love got lost you said
“I am as constant as a northern star”
And I said “Constantly in the darkness
Where’s that at?
If you want me I’ll be in the bar”

二人の愛が終わる前…あなたはこう言った
「僕の心は北極星のように揺るぐことなくいつも同じところにあるんだよ」
だからわたしは言ったの
「いつも暗闇の中にいるってこと?」
「あなたが私を欲しいなら私はバーにいるわよ」



そう言い放った主人公の女は、今度はそのバーカウンターで故郷の地図と彼氏の似顔絵を、コースターの裏側に落書きする。
ジョニ・ミッチェルの歌には、何気ない言葉やどうでもいいような行動の下にも、ワインのように濃く赤い人間の血が流れていることを教えてくれるのだ。


On the back of a cartoon coaster
In the blue TV screen light
I drew a map of Canada
Oh, Canada
With your face sketched on it twice.

絵が描かれたコースターの裏
テレビのブルーの光の中
カナダの地図を描いたわ
そう、カナダの地図よ
その上にあなたの顔を二度重ねて描いたの

Oh you’re in my blood like holy wine
You taste so bitter and so sweet
Oh I could drink a case of you darling
Still I’d be on my feet
oh I would still be on my feet

あぁ、あなたは私の血の中を流れる聖なるワイン
とても苦くて、とても甘い
あなたなら1ケースだって飲み干せるの
それでも私はちゃんと立っていられるわ
きっとこの足で立っていられる



この歌に限らず、ジョニ・ミッチェルの紡ぐ歌詞には、ダイレクトな「I Love You」や「I Miss You」などという言葉がほとんど出てこない。
愛しさや寂しさを、その言葉を使わずに表現するのが“シンガーソングライター”だとしたら、彼女こそが“それに当てはまる存在”といえるだろう。
この名曲「A Case Of You」は、何気ない風景や恋人との会話を綴りながら、女心に潜む“愛情と孤独”を見事に表現したラブソングなのだ。

Oh I am a lonely painter
I live in a box of paints
I’m frightened by the devil
And I’m drawn to those ones that ain’t afraid

私はひとりぼっちの絵描き
絵の具箱の中で暮らしている
私はとても怖がりだから
恐れを知らない人に惹かれてしまう

I remember that time you told me you said
“Love is touching souls”
Surely you touched mine
‘Cause part of you pours out of me
In these lines from time to time

あなたがこう言った時のこと、よく思い出すの
「愛とは魂にふれること」
そう、あなたはたしかに私の魂にふれた
だからあなたの一部がときどき歌になって
私の中からあふれ出す

I met a woman
She had a mouth like yours
She knew your life
She knew your devils and your deeds
And she said
“Go to him, stay with him if you can
But be prepared to bleed”

ある女性に会ったわ
あなたによく似た口元をしていた
彼女はあなたの人生を知っていた
あなたの内側にいる悪魔も、あなたの行いも知っていた
そして言ったの
「彼のところに行けばいい
できるものなら、一緒にいればいいわ
でも血を流すことは覚悟しておいてね」

Oh but you are in my blood
You’re my holy wine
You’re so bitter, bitter and so sweet
Oh, I could drink a case of you darling
Still I’d be on my feet
I would still be on my feet

あぁ、あなたは私の血の中を流れる聖なるワイン
とても苦くて、とても甘い
あなたなら1ケースだって飲み干せるの
それでも私はちゃんと立っていられるわ
きっとこの足で立っていられる


JoniMitchell-Blue

ジョニ・ミッチェル『Blue』

(1971/Warner Bros.)

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