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ジェシ・ハリス&ペトラ・ヘイデン公演直前インタビュー〜極上のアメリカーナ・サウンドを紡ぐ二人のSSW

2016.04.11

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抜群のメロディ・センスを持ち、現代のミュージック・シーンを牽引するSSWふたりが共演作を携えて、4月27・28・29日の『ブルーノート東京』に登場する。フォーク/カントリー/ロック/ジャズをつなぐアメリカーナ・サウンドはどのように生まれたのか。インタビューを通じてその源を知ることができた。(interview&text/Atsuko Nakayasu)

共鳴し合うふたりが出会い、奏でる“心を満たす”音楽

ジェシ・ハリス作の「ドント・ノー・ホワイ」は、今もなお多くの人々の記憶に残る名曲だろう。そう、ノラ・ジョーンズの歌で世界的な大ヒットとなった曲だ。ヒットの後もジェシはソロ作を重ね、音楽家としての名を不動のものにしたことはご存知のとおり。その彼の新作はシンガー、ペトラ・ヘイデンを迎えた『シームド・ライク・ア・グッド・アイデア』。しかしこれはジェシの新作というよりは、Petra Haden sings Jesse Harrisとサブタイトルに記されているように、ペトラとジェシのデュオ作と捉えるべきだろう。

ペトラはジャズ界に大きな足跡を残したベーシスト、チャーリー・ヘイデンの娘であり、シンガーであり、ヴァイオリニストでもある。またベックやビル・フリゼールらのレコーディングに参加した経験もある多彩な活動歴の持ち主。ジェシとの出会いのきっかけは2013年、L.A.のクラブにふたりがゲストとして出演したときのこと。当時のことをジェシは語る。

このとき以前にもN.Y.で会ったことはあったけど、ただ挨拶しただけだった。L.A.で会ってお互い自分のアルバムを交換したけれど、ペトラのアルバム『Petra goes to the movies』は圧倒的に素晴らしかった!ペトラも僕のアルバム『Borne away』を気に入ってくれて、次のアルバムをプロデュースして欲しいと言ってきた。もちろんYESと言ったよ。でも僕はN.Y.に住んでいるし、彼女はL.A.なんで次に会うまでしばし時間を必要とした。そして遂に今回一緒にレコーディングすることが出来たのさ


レコーディングはとてもスムーズだったようで、かかった日数はたったの4日間。呼吸もピッタリだったのだろう。

ジェシの音楽は本当に素晴らしいわ。私が彼の音楽をみんなに説明するとき、「聴く人を掴んで話さない、心を満たすその源となるもの」と言うのよ。彼のアルバムを聴いたあと、一緒に音楽を作ろうと彼に言わなきゃね!と思ったわ


アルバムは「ドント・ノー・ホワイ」に通じるシンプルでいてニュアンスに富んだメロディや、フォーキーな素朴さと都会的な洗練を兼ね備えたジェシの持ち味がフルに発揮。さらにはしっとりとしたセンチメンタリズムや、聴き手の心を刻むメロディの妙など、彼のソングライティングは深化したことを思わせる。ペトラの歌声は、爽やかな風のようであり、それだけでは終わらない豊な含みとでもいうような味わいもあるのは、日常に音楽がいつもある家庭環境で育まれたセンスであるように思う。

今日のヴォーカル・アルバムと違って、新作には昔風に作曲家が曲を提供して歌い手が歌うというテーマがある。たとえば、フランク・シナトラや、ハリー・ニルソン、さらにはエリス・レジーナやガル・コスタらがやっていたようなそんな作品にしたかった。このテーマは最後の最後に出てきた。当初、このアルバムはペトラ・ヘイデンのみの名義で作るつもりだったけれど、ほとんどが僕の曲だし、彼女の提案もあって僕の名前を入れることにしたんだ。彼女が僕の曲を歌ってくれることは誇りに思うし、お互い楽しんで作ることができたね


コール・ポーターやアントニオ・カルロス・ジョビンの作品を歌ったフランク・シナトラ、ランディ・ニューマンを歌ったハリー・ニルソン、またブラジルのシンガー、エリス・レジーナやガル・コスタらは母国の音楽家たちの作品を歌い継いでいることはファンならよく知るところ。ジェシはペトラという音楽の新しいミューズを得て、先人たちにならった懐かしくも新しい歌の作品集を生み出したと言えるかもしれない。

ところでペトラの父、チャーリー・ヘイデンはジャズ界で先鋭的な作品を数多く残しているが、彼は両親がカントリー音楽の音楽家という一家に生まれ、幼いころより家族とともにツアーに参加していたという。そんな父から彼女はどんな影響を受けたのだろう?

父がハーモニーを試みたり、即興演奏したり歌っているのを見て、子どもながらに興味を持っていたわ。父が色々な形で音楽を表現し、それが音楽的に成り立っているのが不思議だったの。彼はメロディやすべての音を意味のあるものとして演奏していたわ。演奏を楽しんでいる父の姿が、私に一番影響を与えたわね


父から多大な影響を受けたペトラと、フォーク風味を漂わせつつもそれだけの範疇には収まらない現代的な才能の持主、ジェシ。ふたりから生まれたアルバムは、ここ数年のアメリカ音楽の潮流のひとつでもある「アメリカーナ」、つまりフォークやカントリーなどアメリカの伝統的な音楽を見直し、今日的に捉えるという流れから生まれたフレッシュな作品と言えそうだ。最後にふたりの日本公演に向けた言葉を紹介しよう。

メンバーはベースを除いてアルバムと同じになるよ。確実に楽しいツアーになるね。僕もステージでは歌う予定なんだ


日本でショウができることが本当に楽しみ!東京の美しい街を散歩することも楽しみにしているわ。素晴らしいメンバーとのショウを期待してね



4月27・28・29日の『ブルーノート東京』公演の詳細情報はこちらから
ステージではふたりの個性が交わり、フォークやカントリーなどアメリカの伝統的な音楽を、都会的なセンスをもって現代に蘇らせる洗練されたサウンドが披露される。ペトラだけでなくジェシのヴォーカルも聴ける今回のショウで、アメリカーナの真髄をぜひ体感して欲しい。

ジェシ・ハリス
ニューヨーク生まれのシンガー・ソングライター。98年にノラ・ジョーンズと出会い、彼女のデビュー作を全面的にバックアップ。「ドント・ノー・ホワイ」でグラミー賞を受賞し、2003年に『ザ・シークレット・サン』でメジャー・デビューを果たした。

ペトラ・ヘイデン
ニューヨーク、マンハッタンにて世界的なベーシスト、チャーリー・ヘイデンの三女として生まれる。ヴォーカリスト、ヴァイオリニスト。90年代に活躍したバンド「ザット・ドッグ」の元メンバーで、ベック、ウィーザーやビル・フリゼールとも共演している。

インタビュー&文/中安亜都子
音楽ライター。ノン・ジャンルで音楽を聴き自分なりの言葉で伝え表現したいと思う。音楽のほか美術、映画、モードなどのアートに触れ、感動したときが人生最大の喜び。好奇心と探究心を持ち続けていたい。PEN、FIGAROなどに寄稿。

『シームド・ライク・ア・グッド・アイディア』

『シームド・ライク・ア・グッド・アイディア』

(キングインターナショナル)
アメリカーナのノスタルジックなムードと都会的感覚もまとった曲がラインナップ。アーロン・パークスをはじめ、盟友そしてふたりを支えるミュージシャンが参加。

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