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佐々木モトアキ〜それでも本当の大人になって、人のために嘆こうとする「唄うたい」

2016.06.01

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奇妙に子供っぽい大人が増殖している。それはここ20〜30年における経済情勢の浮き沈みや、それと密接な関わりを持つ社会問題の影響かもしれないし、ネットやSNSなどによるメディアとコミュニケーションツールの劇的な変化、あるいは男女間の意識のあり方の変化のせいかもしれない。

様々なことが起こっては絡み合い、それが人々の目に映り、記憶され、次第に言動の一つ一つに現れて、空気となって漂っていく。生きる術なのだから、時代の流れに合わせることは決して悪いことではない。だが、子供の数が減り続けて高齢化社会が避けられないこと。男は強く優しく確固たる美学を貫かなければならないといったダンディズムの完全崩壊などは、そんな「子供っぽい大人」が増えたことと関係しているように思えてならない。

時々こんなことを想う。父親は今の自分の年齢と同じくらいの時、もっと大人ではなかったか? 戦争を知っている今の70代後半以上の世代が20歳だった時、年を取るということにはもっと重みがなかったか? 1969年の30歳は学生たちから“向こう側の大人”として扱われる羽目になったのに、どうして2010年代の30歳や40歳はまだ“こちら側の若者や女子”でいられるのか? 一体いつまで偽りの若さを前面に押し出さなければならないのか?  

音楽を友にしている人なら誰もが知っている。1960年代のビートルズやディランの1年1年には「その時代に相応しい大人」になろうとする彼らの姿があった。例えロックが反体制の象徴であったとしても、その中で彼らは覚悟を決めて成長しようとした。今のロックバンドが5年あるいは10年掛かってやることを、彼らはたった1年でやらなけれはならなかった。

ジョン・レノンとかボブ・ディランが唄ってたね
国境のない世界 変わってゆく時代
戦争を知らない大人達のために…誰が何を唄えるのか?


佐々木モトアキの新曲「唄うたい」を聴いていると、かつての若者がもう若者ではなくなった事実と向かい合わずに、消費や若さのために躍起になる姿が蔓延る日々の中で、「それでも本当の大人になろうとする歓びと哀しみ」が伝わってくる。

あんたが唄った街の歌 死んでしまった友達の歌 
あんたが何より大切に唄った…母さんの歌


長い沈黙を破って再び歌うことを決意した47歳の佐々木モトアキが歌い上げる「唄うたい」は、「人や風景のために嘆こうとする心だけは捨て去ることはできない」ことを知った同年代の人々を、ピアノとアコギだけで救済するバラード&ブルーズでもある。

唄うたいは あんたの人生を歌うよ
喜びも悲しみも…忘れられてゆく時代も
どうしようもないことも
どうしようもないことも
どうしようもない…心を


最後の力で暗闇をこじ開けると、眩しく差し込んでくる一筋の光のように。この歌にはそんな真っ直ぐな魅力がある。(テキスト/中野充浩)


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佐々木モトアキ(Photo by HIRO)
福岡県出身。1988年、アルバム『TOO MUCH “GAMBLER”』(The Sham)でデビュー。1990~2007年、THE HUNDREDS(ザ・ハンドレッズ)のフロントマンとして活動。俳優・モデル・ライター・アパレル業など様々な経験を通じて“表現者”としてのベースを築く。2008年、福岡に帰郷。2010年、二度目の上京。2014年より佐々木モトアキ meets NOBUYAN’として「出会い」「再会」をキーワードに、アンプラグド・スタイルの新たな音楽活動を再開。『TAP the POP』の執筆メンバーでもある。

シングルCD「唄うたい」

シングルCD「唄うたい」

2016年6月1日リリース。タワーレコード、ディスクユニオンにて販売。
(作詞・作曲・歌/佐々木モトアキ、ギター/NOBUYAN’、ピアノ/足立幸太、Sound Producer/高木フトシ)

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