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【来日直前!特別インタビュー】ライアン・アダムス〜聴く者の左胸に風景を残す本物のミュージシャン

2016.11.22

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待望のライアン・アダムスの初単独来日公演が、12月9日(金)に東京・新木場スタジオ・コーストで開催される。過去2回のフジロック出演。2005年は嵐の中ということもあってステージを途中放棄してしまったこともあるが、昨年のステージでは素晴らしいショウを魅せてくれた。

ライアンは1974年11月5日にノース・カロライナ州ジャクソンヴィルで生まれた。高校在学中にバンド活動を始め、94年に“オルタナ・カントリー”の期待の星となるウィスキータウンを結成。あの伝説グラム・パーソンズを彷彿とさせる才能の登場に歓喜した。

バンド解散後はソロに転向し、デビュー作『Heartbreaker』(00年)を発表。エミルー・ハリス、ギリアン・ウェルチ、デヴィッド・ロウリングスらが参加したこのアルバムは、彼の個人的な失恋を綴ったアルバムであり、聴く者の左胸に深い余韻と風景を残す名盤となった。

翌年には『Gold』を発表。9.11同時多発テロの1週間前に撮影されたという「New York, New York 」のビデオが話題となり、スマッシュ・ヒットを記録。その後は毎年新作をリリース。『Rock N Roll』(03年)、『Jacksonville City Nights』(05年)、『Easy Tiger』(07年)、『Ashes & Fire』(11年)、『Ryan Adams』(14年)をはじめ、多作家として様々な音楽性でファンを魅了し、キース・リチャーズやウィリー・ネルソンなどにも通じる本物のロックとカントリーの伝承者であり続ける。

また、昨年はテイラー・スウィフトの同名作を丸ごとカヴァーした『1989』をリリース。斬新な解釈にテイラーは大喜びだったという。ソロ・デビューから16年。ライアン・アダムスの伝説必至のステージを見逃してはならない。

ライアン・アダムス〜スペシャル・インタビュー〜

──初めての単独来日公演を控えているけど、今の気分はどんな感じ? 今回の来日はThe Shiningではなく新しいバンドを率いてのショーということで、メンバー編成を教えて。

すごく楽しみだよ。早く日本に行って演奏したいな。新しいバンドのメンバーは、ドラムにNate Lotz。Nateはテイラー・スウィフトのアルバム全曲カバーをやった時のドラマー。ホールジーなんかでも叩いている。彼が今の僕のドラマーで大親友でもある。ベースは前からおなじみのCharlie Stavish。

そしてギターとキーボードに新たに加わったのが、Grace Potter & Nocturnals のメンバーであるBenny YurcoとBen Allemanの二人。すごく嬉しいよ。彼らがマイクとダニエルの代わりになったんだ。レコーディングは基本的に僕が一人で全部やってるから、この新しいバンドでやるのは日本が初めてってことになるね。


──新作の制作風景をよくSNSに掲載してるよね。1ヶ月前くらいに「C’mon Release Day!」とインスタにあげてたけど、今はどうなってるのかな?

僕のマネージメントはタイミングをすごく重視してくれてるから。僕は音楽とアートの部分をやる。それ以外は彼らが真剣に考えてくれてコントロールしてる。僕はそのあたりに関わることはないんだ。


──ニューアルバムはどんな内容なの? インスピレーション源とか、言える範囲で構わないので教えて。

前作と当時のバンド(The Shining)を経験したことで、僕自身が音楽作りの原点に戻れた気がするんだ。つまりフルバンドで、エレクトリック・ギターたまにアコースティック・ギターを弾いて作る曲、という意味でね。サウンド面では、僕が影響を受けてきたいろんな時代のサウンドが一つの場所に集まったかのような感じだよ。つまりどういうアルバムかっていうと・・・とにかくすごく・・・(しばらく考え込む)ごめん、言葉じゃ説明できないや(笑)。

とにかくギターがいっぱい。ペダルとかも。すべてその場でのライヴ・レコーディング。ギターのオーバーダブはどうしても1回じゃ録れないけど、壮大な感じが必要とされる時だけに限ってる。一種の”失われた”レコード。だけどすごくエキサイティングなレコードだと思う。


──最近は特にジョニー・マーやザ・スミスの画像投稿が多いみたいだったので、今回のアルバムにも影響が強いのかなと思ってた。

これまでのアルバムすべてにその影響はあったけど、今回は今まで以上に強いかも。僕はアコースティック・ギターを弾くのが大好きで、僕なりのスタイルではうまく弾けると思ってる。子供の頃から一緒にプレイする友達がいなかったから、一人で弾いてきたんだ。でも夢は誰かと一緒にギターで音楽を演奏することだった。アルペジオとかギターテクニックは大好きだし。

ザ・スミスは大好き。オールタイム・フェイバリットなグループとまでは言わないけど、ジョニー・マーはオールタイム・フェイバリット・ギタリストの一人。ジョニー・マーだけじゃなくて、同時にトミー・アイオミもジェリー・ガルシアも全部好きだよ。それぞれのフレーバーが違う。でもソングライティングの美学っていう意味では、一番自分が好きなのはジョニー・マーだね。


──オアシスをカヴァーしたり、テイラー・スウィフトのアルバムを全曲カヴァーしたり、自分の制作した楽曲に交えて、他のアーティストの楽曲を披露するのは君にとって自然なことなのかな? そこからインスピレーションを受けたりするの?

自分のレコーディング・スタジオがあるおかげで、スタジオではヘンなことがいっぱいできるんだ(笑)。依頼もされていない企業のCMを作ってみたり! もしくは決してリリースされることのないパンク・ロックのアルバムを作ってみたり。そんな何百という、決して誰にも聞かれることのない曲、もしかしたらいつの日か聞かれるのかもしれない、リリースが追いつかないくらい膨大な数の曲を常に作ってるよ。

曲を書くっていう意味では毎日書いてる。商業的な目的、つまりそれをレコードとして売るという意味で書いているわけではなくて、いつかどうにかなればいいなっていう感じで書いているんだ。カヴァーということであれば、僕はキャリアの最初の頃からずっとやってきた。それは自分のレコードを出すのに待たされている時間に飽き飽きしちゃってたからだ。

例えば、数週間オフがあって友達が近くにいたから、あのアルバム(『1989』)をレコーディングしたんだ。何かやることが欲しかったっていうだけ。70年代風のTacoBellのCMを作るのと要は一緒だったんだよ。シリアスな曲をやるかもしれないし、アルバムを1枚丸々カヴァーしようぜ、ということになったのかもしれない。何であれ、要は同じこと。シェフやテニスプレーヤーや登山家、みんな同じだ。

シェフは一種類の料理を作るのではなく、いろんな料理を作る。登山家はありとあらゆる山を登る。テニスプレイヤーは試合で競技をするだけでなく、どんな時だってプレイをするだろう。テニスをすることが好きだから。僕にとっても似たようなものなんだ。人が「何かに飽きてしまった」と言うのを聞くと、かわいそうだなって思うよ。だってやれることは山ほどあるのに。その一つがアルバムを1枚全曲カヴァーってことだったりするわけだからね。


──ステージ上にいつも置いてある猫とピンボールがシンボルになってるけど、その2つは何を意味するの?

猫は猫だ、というそれだけだよ(笑)。今3匹飼っていて愛してるんだ。とてもスピリチュアルで美しい動物だよね。


──ピンボールは?

僕は熱心なピンボール・コレクターでありプレイヤーなんだ。音楽を除けば、僕が一番夢中になっていることの一つだよ。バンドのメンバーとはいつもピンボールで競い合っている。ピンボール台の構造も、バックボックスのライティングも、製造された時代によって異なるキャビネット内部のアートも、複数のボールを落とさぬように操作するスキルも、バンドのメンバーたちとトーナメントで競い合い、ハイスコアを目指すのも、みんな大好きだ。

ピンボールは思われている以上に、複雑かつ面白いスポーツ。実際、ロック・ミュージックにすごく似てるんだ。シアトリカルで、どれにも微妙な差があり、2台として同じピンボール台は存在しない。知れば知るほどもっと探求したくなる。アートと音楽、音と光が一つになった時に生まれる素晴らしい世界。ピンボールはその一つなんじゃないかな。小さなロック・ショウさ。

ロックンロールと密着したサブカルチャーだったんだよ、ピンボールは。でもある時点から衰退してきてしまった。昔のボブ・ディランがピンボールをしてる写真があったりする。トム・ペティも、エルヴィスも。やってないミュージシャンはいないくらい。ピンボールは実にクールなスポーツだったからさ。


──日本では他にどんなことがしたい? 楽しみにしていることは?

日本は僕にとってすべてが新しい経験なんだ。カルチャーも食べ物も。それに何と言っても、僕が大好きな日本でしか買えないコレクターズ・アイテムがいっぱいある。そのハンティングを楽しみにしてるよ。ヴィンテージの『ゴジラ』とか仮面ライダーとか。60〜70年代のモンスターとかプラスチック製のキモいフィギュアとかが大好きなんだ(笑)。あとは、日本でしか買えないヴィンテージのギターペダルも探したいな。日本のものはどれも質が高い。僕はそういったもののオタク的コレクターだからね!


──最後に、日本のファンのみんなにメッセージをお願いします。

早く日本でライヴできるのを楽しみにしているよ。新しいバンドでやる最初のライヴが日本だからね。期待してね!!


*2016年11月9日。LAにて電話インタビュー

【ニュー・アルバムのリリースも期待されるSSWライアン・アダムス
ファン待望の初単独来日公演が遂に開催決定!】

2016/12/9(金)新木場スタジオコースト
Open 18:00 / Start 19:00
Ticket : ¥7,500(税込・1Drink別途)
チケット購入はこちらから。




【執筆者の紹介】
■中野充浩のプロフィール
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http://www.tapthepop.net/author/nakano
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