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追悼・かまやつひろし~武部聡志の生誕60年記念コンサートで披露された「ムッシュかまやつメドレー」

2024.03.01

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音楽プロデューサーでキーボーディスト、作曲家・編曲家として活躍してきた武部聡志の生誕60年を記念したコンサート「武部聡志オリジナル・アワード・ショー」が、2月27日に東京国際フォーラムで開催された。

出演したのは最も関わりが深いユーミンこと松任谷由実を筆頭に、大黒摩季、久保田利伸、ゴスペラーズ、斉藤由貴、さかいゆう、JUJU、スガシカオ、手嶌葵、一青窈、平井堅、miwa、森山良子、それに武部が自ら結成したkōkuaらのアーティスト。
客席の前方に設えられたゲスト用のテーブル席に出演者が座り、その中央にいる武部と観客に向かって、それぞれのアーティストがステージ上で歌とパフォーマンスを披露し、還暦を祝福するという洒落た趣向だった。

オープニングから2時間半を超えた終盤になってから、ずっと客席にいた武部が「うずうずしていました」と自らステージに登場、kōkuaのメンバーとしてキーボードとピアノで演奏した。
そして「今日ほど音楽を続けていてよかったなと思った日はありません」と語った後、かまやつひろしについての思いが観客に明かされた。

今日ここで、忘れてはいけない大恩人の話をします。
その人は、かまやつひろしさんです。
ムッシュは今、病気と闘っています。
本当に来てほしかったんですが、残念ながら今、ここには来られなかった。
でも、いとこである森山良子さんを通じて、病床で手紙を書いてくれました。


武部がユーモアのある手紙を代読し、そこから本編の最後を飾る「ムッシュかまやつメドレー」が始まった。

「あの時君は若かった」一青窈、織田哲郎、寺岡呼人
「ノー・ノー・ボーイ」織田哲郎、miwa
「中央フリーウェイ」松任谷由実、スガシカオ
「我が良き友よ」一青窈、武部聡志
「バン・バン・バン」松任谷由実、武部聡志、スガシカオ、一青窈、織田哲郎、寺岡呼人、miwa

ラストの曲になった「バン・バン・バン」ではサビの繰り返しの部分に、スガシカオが「愛について」、miwaが「結-ゆい-」、一青窈が「もらい泣き」、ユーミンが「春よ、来い」と自分の代表曲を重ねていくという趣向。
かまやつひろしにたいする武部ならではのリスペクトの思いが、「ムッシュかまやつメドレー」から音楽として伝わってきた。

武部は国立音楽大学に通っていた20歳くらいのときによく行っていたリハーサル・スタジオで、かまやつひろしがそこを使っていた関係でバンドに誘われたことをきっかけにプロになったという。

かまやつさんのバンドに参加したのが、僕のプロとしてのキャリアの一番最初です。
ですから、僕の音楽人生の中で絶対に足を向けて寝られない、親代わりとも言える人がかまやつさんなんです(笑)。
かまやつさんと知り合ったことでユーミンとも知り合いましたし、田辺エージェンシーのタレントのバックバンドをやるようになり、その中で色々な人と仲間になっていったんですね。

それで僕も本当に色々な人たちのバックバンドをやるようになって、かまやつさんのバンドをきっかけに、久保田早紀さんの『異邦人』の時は1年中バックバンドをやっていましたし、寺尾聰さんの『ルビーの指輪』のときも1年中バックでピアノを弾いてました。


そしてプロになってまもない23歳の時、かまやつひろしや寺尾聰のバックバンドだった人たちと一緒に、ミュージシャンのためのマネージメント会社を起ち上げた。
当時のミュージシャンをとりまく環境は、まだまだ前近代的なところがあって、個人で仕事をしているとギャラがすぐには支払ってもらえなかったりしたという。
そこで生活の安定や地位の向上に努めたいという思いから、会社という単位でミュージシャンたちがまとまるオフィスを作ったのだった。
 
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かまやつひろしは武部について自著の「ムッシュ!」のなかでこう述べていた。

一緒にバンドをやっていたキーボードの武部さんも、今やアレンジャーやプロデューサーとして大活躍している。
ある時ハワイアンの大御所、大橋節夫さんがフュージョンみたいな感じでハワイアンをやりたいというので、ぼくがプロデュースを担当し、武部さんにアレンジを頼んだ。
このレコードも売れなかったが、武部聡志は、それからすごい勢いで頭角を現していった。
だから、この時期ぼくは何をやっても売れなかったが、ぼくと仕事をしたミュージシャンはみんな出世していった。
ガロもそうだったし。
ぼくは男の”あげまん”みたいな存在だった。


「武部聡志オリジナル・アワード・ショー」の翌日、かまやつひろしは役割を果たしたかのように生涯の幕を閉じた。享年78。



「武部聡志オリジナル・アワード・ショー」のステージの模様は、3月26日(日)18時からWOWOWで放送される。
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