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美空ひばりの生誕80年に向けて出演者が何か大きなものに挑戦していく姿勢が感じられるイベント

2017.03.30

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1937年5月29日に生まれた昭和の歌姫・美空ひばりは、昭和の終わりを見届けるように、元号が平成に変わった1989年の6月24日、52歳の人生に静かに幕を降ろした。

だが日本が生んだ最大のスターの歌への思いや歌声はあたかも”不死鳥”のように、今でも多くの人の心のなかに生き続けている。
さらにはさまざまな形で21世紀にまで歌い継がれることによって、当時を知る人だけでなく若い人たちの間にも新たな魅力が発見されている。

1988年4月11日に東京ドームで開かれた伝説のコンサート「不死鳥 美空ひばり in TOKYO DOME 翔ぶ!! 新しき空に向かって」によって、美空ひばり=不死鳥のイメージが定着した。
それから29年もの歳月が過ぎたが、今年もまた世代を越えた歌手やミュージシャン、アーティストが参加して、21世紀になっても不死鳥のように生きている「美空ひばり」とともに、東京ドームで4月5日にイベントが開催される。

それが「美空ひばり生誕80周年記念だいじょうぶよ、日本!ふたたび熊本地震・東日本大震災復興支援チャリティーコンサート」(ひばりプロダクション主催)である。

世代を超えた22組のアーティストたちと、各々が披露する名曲は事前に発表になっている。(50音順)

  E-girls 「港町十三番地」
  五木ひろし 「みだれ髪」
  AKB48グループ32名 「メドレー(悲しき口笛~越後獅子の唄~あの丘越えて)」
  EXILE SHOKICHI 「終りなき旅」
  華原朋美 「一本の鉛筆」
  きゃりーぱみゅぱみゅ 「東京キッド」
  Crystal Kay 「A列車で行こう」
  ゴスペラーズ 「真赤な太陽」
  坂本冬美 「ひばりの佐渡情話」
  佐々木秀実 「歌の里」
  さだまさし 「悲しい酒」
  GENERATIONS from EXILE TRIBE 「お祭りマンボ」
  清水翔太 「柔」
  JUJU 「われとわが身を眠らす子守唄」
  天童よしみ 「雑草の歌」
  夏川りみ 「津軽のふるさと」
  氷川きよし 「人生一路」
  堀内孝雄 「おまえに惚れた」
  三山ひろし 「芸道一代」
  May J. 「哀愁波止場」
  UNIONE 「歌は我が命」
  Little Glee Monster 「リンゴ追分」


あらゆるジャンルに及ぶ楽曲が並んでいるところに、美空ひばりならではのイベントらしさが伝わってくる。
伝説の「不死鳥コンサート」からスタッフの一人として、母の仕事を支えた加藤和也は以前から次のような考えを表明していた。

私の認識ですが、美空ひばりというアーティストはオールジャンルをこなし、日本の激動の昭和史を歌と芸で生きた人物と思っております。
肉体が亡くなっても、歌も芸もレコード(記録)として残っています。
当然、美空ひばりを知らない方達は大勢います。
そんな世代の人達にも、日本にこんな歌手もいたということを知ってもらうのは、とても大事だと思っています。


日本に西洋音楽が正式に取り入れられた明治維新以降、日本の大衆音楽はつねに海外から入ってくる音楽と日本文化のミクスチャー、つまり「外国の音楽×日本の言葉による情緒や精神」という成り立ちだった。
そのことを前提として考えると、美空ひばりの歌こそがミクスチャー文化の結晶だったことがわかる。

美空ひばりは江戸時代と地続きの小唄や端唄、浪曲、民謡を歌う一方で、ジャズやシャンソン、ポップス、演歌、さらにはオペラまで歌いこなしてしまう、まさに天才歌手だった。
 
そういうトータルな音楽家としての美空ひばりを、全員が10代の女性ヴォーカル・グループのLittle Glee Monsterや、昨年デビューした男性ヴォーカル・グループのUNIONEといった若手がどうアプローチするのか。

ブラック・ミュージックのテイストに満ちた隠れた傑作「われとわが身を眠らす子守唄」に、JUJU がどのように新しい命を吹き込んでくれるのか。



また美空ひばりが亡くなった年に生まれたR&Bシンガー、清水翔太がトライする純日本調の「柔」も古賀メロディーへの挑戦として興味深い。

船村徹が残した「哀愁波止場」と「ひばりの佐渡情話」の2曲は、日本の演歌の原点というべき名曲である。だが、並の歌唱力では歌いきれない難曲としても知られている。
坂本冬美と May J. という二人のシンガーは、それをいかに自分の作品にしてみせるのか。

ステージ・シンガーとしての美空ひばりの面目躍如たる「悲しい酒」は、新人歌手が歌ったきり埋もれていた曲をカヴァーしてヒットさせた。さらにはライブで得た感触から、自らの発案で間奏にセリフを入れてレコーディングし直して不朽の名曲と呼ばれるまでにした。
さだまさしという当第一のステージ・シンガーによって、どんな歌の味わいと語り口の「悲しい酒」になるのか。

それぞれの出演者が選んだ楽曲を見ているだけで、何か大きなものに挑戦していく姿勢がイベントから感じられる。
どんな困難な事態になってもめげずに現実へ立ち向かっていく、そのアティテュード(姿勢)こそが美空ひばりが日本に残してくれた最大の遺産なのだろう。





TBSテレビ『美空ひばり生誕80周年特別企画 in 東京ドーム 不死鳥コンサート2017』は、2017年4月10日(月)夜7:00~10:54で放送されます。

番組ページ: http://www.tbs.co.jp/program/misorahibari80-concert_20170410.html

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