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DYGL~日本の各地へ、アジアの各国へ、そして欧米にも普通に出かけていくバンドの時代

2017.08.25

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DYGL(デイグロー)のファースト・アルバム『Say Goodbye to Memory Den』には、どれも小気味いいストレートなロックが全4曲収録されている。

そこにはストロークスやリバティーンズといったインディーロックが持っていた感覚、ロックを演奏することや聴くことの楽しさと高揚感がある。
全曲を英語詞で歌っているにもかかわらず、なぜかそれが日本発の音楽であることを感じさせてくれる。

これはストロークスのギタリストであり、ソロ・アーティストとしても活動するアルバート・ハモンドJr.と、プロデューサーとしてストロークスに関わるGus Obergの2人のもとで、ニューヨークでレコーディングされたことが功を奏しているからだろう。
ロックのレコードとしては音質がきわめて高いので、心地よいサウンドを繰り返し聴きたくなる。

バンドとしての世界観は明し、サウンドとグルーヴは軽快、しかも品がいい。




蛍光色という意味のDYGLは、スラングでは安っぽいとか、ビカビカ光るという意味もあって、両方を含めて気に入ったようだ。

バンドとして結成されたのは2012年、メンバーはNobuki Akiyama(vo,g)、Yosuke Shimonaka(g)、Yotaro Kachi(b)、Kohei Kamoto(ds)の4人である。
大学で知り合ったNobuki AkiyamaとYosuke Shimonakaは初めて言葉をかわしたとき、ストロークスが好きだという共通項を知って、一気に打ち解けたという。

彼らは2015年にアメリカにわたってLAのレーベル「Lollipop Records」のスタジオで、『Don’t Know Where It Is』をレコーディングした。
そしてフィラデルフィアでは友人のホームパーティーで演奏させてもらったが、そのときの様子はout ou townという映像クルーが製作した動画で8月に公開されている。




テキサス州のオースティンで開催されてきたSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)は、1987年に音楽祭として始まったが30年の歴史を経て、音楽だけでなく映画・インタラクティブ・教育の祭典にまで発展した一大イベントだ。

今年の3月にSXSWに参加したDYGLは、そこでも日本のバンドとアメリカのバンドにスタンスの違いを感じることはなかったという。
実際に海外でライヴをやってみて思ったのは、同じ“人間”なんだという事実だったという。

例えばリバティーンズやオアシスなんかは、彼らそのままの“人間”がステージに上がっている感じがして歌詞や音楽にも説得力が生まれる。
でも、その活動には大きなレーベルやマネージメントが関わっていて、彼らはプロモーションのために働いたりもする。
何が純粋で何が不純なのか、それは本人たちの見え方と外からの見え方とでも違うことだし、ロックバンドにとってはすごく難しいテーマかもしれない。
だから、その時その時で考えてやっていくしかないんだと思います。
そもそもロックのレコードをつくって売っていく以上は商業的な面を避けられないし。


大学を卒業というひとつの岐路に立って音楽を選んだ彼らは、目標に掲げていた海外での活動をサポートしてくれるレーベルやマネージメントと契約を結び、音楽家として生きる道に歩み出した。

そのときからDYGLにとっての海外はファンタジックな世界ではなく、日本で地についた音楽活動をしていくこととも地続きになったのだ。
ただし、アメリカで新しい音楽や考え方に触れながら生活しているときの方が、ノイズや雑音から解放されることで創作に集中できていた気がするともいう。

特にニューヨークなんかは、あちこちで色々なことが起きていてシーンや音楽的な畑のことを気にする必要もない。
音楽がやりたければ誰にでも開かれた環境がありました。でも同時に、その環境をどうやったら東京でも作れるのかについても、日々考えています。
最終的に何人のファンやオーディエンスを獲得できるのかというのはあくまで結果論だから、それよりもアーティストとしていかに良い影響を受けて、いかに良いサウンドをつくるという、“自分たちの問題”のほうが重要。


こうした純粋さを保って音楽活動を続けていくことは、なかなかに困難であることは日本の音楽史を見ればすぐにわかる。
それでもDYGLは芸能界などにからめとられず、音楽の創造に集中していこうと独自の活動を行っている。

今年の夏のスケジュールを見れば、彼らの姿勢と志が伝わってくる。

2017年7月30日(日)新潟県苗場スキー場『FUJI ROCK FESTIVAL ’17』
2017年8月11日(金)中国 上海 MAO Livehouse
2017年8月12日(土)中国 北京 YugongYishan
2017年8月13日(日)中国 成都市 Little Bar Space
2017年8月15日(火)中国 西安市 Midie Livehouse
2017年8月17日(木)中国 武漢市 VOX LIVEHOUSE
2017年8月18日(金)中国 広州市 T:union
2017年8月19日(土)中国 深圳市 Bio Live
2017年9月 6日(水)岩手県 the five morioka
2017年9月 7日(木)宮城県 enn 2nd
2017年9月 8日(金)福島県 郡山 CLUB #9
2017年9月10日(日)北海道 DUCE SAPPORO
2017年9月29日(金)長野県 ALECX

マネージメントに聞いた話しによると中国各都市でのライブでも、それなりの利益を出して帰国することができたそうだ。

僕たちはアメリカ人になりたいわけでもイギリス人になりたいわけでもない。
かといって、日本人としてのアイデンティティを武器にしようとも思わない。
あくまで普遍的な音楽を作ることが僕らのテーマなので。


日本各地へもアジアへも、そして欧米にも普通に出かけていくバンドが活躍する時代が始まった。





(注)Nobuki Akiyamaの発言は、「Interview with DYGL – LIFT by STUDY」からの引用です。http://liftbystudy.com/interview-with-dygl/

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