季節(いま)の歌

冬の星座〜19世紀に生まれたアメリカの歌に日本語詞をのせたのは浅田飴(あさだあめ)創業者の三男だった〜

2016.01.24

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木枯らしとだえて さゆる空より
地上に降りしく 奇(くす)しき光よ
ものみないこえる しじまの中に
きらめき揺れつつ 星座はめぐる

ほのぼの明かりて 流るる銀河
オリオン舞い立ち スバルはさざめく
無窮(むきゅう)をゆびさす 北斗の針と
きらめき揺れつつ 星座はめぐる


この「冬の星座」は、1947年に中学の音楽教科書に掲載された唱歌で“冬の歌”として知られており、2007年には日本の歌百選の1曲に選ばれている。
原曲は、19世紀に活躍したアメリカの作曲家ウィリアム・へイス(1837-1907)によるもので、1871年に「Mollie Darling(Molly Darling)」というタイトルで発表されたのが初出である。
ウィリアム・へイスと言えば、賛美歌からミンストレル・ショー(19世紀アメリカの大衆芸能)の作曲まで多岐にわたり、生涯で300曲を超える作品を残した人だ。
ちなみに、彼と同時期のアメリカで活躍していた作曲家に「大きな古時計」を作詞作曲したヘンリー・クレイ・ワーク(1832-1884)がいる。


Won’t you tell me, Mollie darling,
That you love none else but me?
For I love you, Mollie darling,
You are all the world to me.

僕に言ってくれないか 愛しのモーリー
僕以外の男は愛さないと
だって僕は君を愛しているんだ 愛しのモーリー
君は僕にとって世界のすべてなのだ

O! tell me, darling, that you love me,
Put your little hand in mine,
Take my heart, sweet Mollie darling,
Say that you will give me thine.

おお!言ってくれ 僕を愛していると
君の小さな手を握らせてくれ
僕の心をあげるよ 愛しのモーリー
君の心を僕にくれると約束してくれ

Mollie, fairest, sweetest, dearest,
Look up, darling, tell me this;
Do you love me, Mollie darling?
Let your answer be a kiss.

最高に美しく、一番甘くて、誰よりも可愛いモーリー
顔を上げて さあ言っておくれ
僕を愛してくれているよね?
返事はキスでしておくれ


原詞の内容は、モーリーという女性に対して「僕のことを好きだと言ってくれないか」と情熱的に求愛をする男の心境を歌ったラブソングだ。
現代の女性が聴くと(読むと)、少し引いてしまうほどの“偏愛っぷり”なのかもしれないが…今も昔も、男には“そういうところ”が往々にしてあるから厄介だ。
「Mollie Darling」と「冬の星座」の歌詞を読み比べてみると、一見何の関連性もないようにも思えるが…2番以降の歌詞の「星」を用いた表現において二つの歌が“点と点で結ばれた”星座のように重なってくるのだ。

Stars are smiling, Mollie darling,
Thro’ the mystic vail of night;
They seem laughing, Mollie darling,
While fair Luna hides her light;

星が微笑んでいるよ 愛しのモーリー
夜の神秘的なベールの向こうから
星たちが笑っているようだね 愛しのモーリー
色白のお月様は光を隠しているのに

O! no one listens but the flowers,
While they hang their heads in shame.
They are modest, Mollie darling,
When they hear me call your name.

おお!花たちの他は誰も聞いていないよ
花もみんな恥ずかしがって頭を垂れているし
僕が君の名前を呼ぶのを聞くとき
花は奥ゆかしいね 愛しのモーリー


そして、この歌に「冬の星座」というタイトルで日本語詞をのせたのが、堀内敬三(1897-1983)という作曲家・作詞家・音楽評論家だった。
彼は1897年、株式会社浅田飴(あさだあめ)の創業者である堀内伊三郎の三男として生まれる。
大正10年にミシガン大学、次いでマサチューセッツ工科大学大学院を修了。
本来は工学専攻であったが、ミシガン大学併設の音楽学校でも学び、帰国後は作曲・作詞活動を始めた他、音楽之友社創立(1941年)にも携わった人物である。
外国で入手した楽譜と語学力とを活かして優れた訳詞を行い、ドヴォルザーク「新世界より」第二楽章から「遠き山に日は落ちて」、スコットランド民謡「アニーローリー」、アイルランド民謡「春の日の花と輝く」など数々の有名な作品を残した。


Mollie, fairest, sweetest, dearest,
Look up, darling, tell me this;
Do you love me, Mollie darling?
Let your answer be a kiss.

最高に美しく、一番甘くて、誰よりも可愛いモーリー
顔を上げて さあ言っておくれ
僕を愛してくれているよね?
返事はキスでしておくれ

I must leave you, Mollie darling,
Tho’ the parting gives me pain;
When the stars shine, Mollie darling,
I will meet you here again.

お別れだよ 愛しのモーリー
僕にとって別れは辛いものだけれど
星が輝くときには 愛しのモーリー
またここで君に会うよ

O! goodnight, Mollie, goodbye, loved one,
Happy may you ever be,
When you’re dreaming, Mollie darling,
Don’t forget to dream of me.

おお!おやすみモーリー さらば愛しい人
君がいつも幸せでありますように…
君が夢を見るとき 愛しのモーリー
僕のことを忘れないでおくれ


──昔の人たちは、冬の夜空に広がる星座をどんな気持ちで見上げていたのだろう?
厳しい寒さの中、焚き木で暖をとりながら…きっと、オリオン座、スバル(おうし座)、北斗星に愛する人の顔を重ねていたのだろう。


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