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月刊キヨシ

ジョニー・キャッシュ〜ほつれかけの星条旗

2016.12.31

次の大統領、トランプが、アメリカはもはや、「世界の警察官」ではないと言い出したが、残念ながら介入で立ち直った国の噂は聞かない。

「Ragged Old Flag」は、郡の庁舎のポールに掲げられたみすぼらしい星条旗を前に、ベンチに腰をおろした年老いた男ふたりが言葉をかわすところから始まる。
すっかりほころびてしまっているが、その旗には建国以来、アメリカがたどってきた怒涛の歴史が刻まれている。
ワシントンがデラウェア川を渡って勝利した独立戦争、南北戦争、そして、メキシコ軍に全滅させられたアラモの砦・・。あるときは勝利を、あるときは、非業の死を悼む旗として、星条旗はいつも誇り高くはためいきてきた。

ジョニー・キャッシュはしかし、「Ragged Old Flag」を、きれいごとで終わらせようとはしない。
自由と愛のシンボルだったばかりではない。軍事大国として、世界に乗り出して以来、世界大戦、朝鮮戦争、ヴェトナム戦争と、どれほど多くの若者たちが、星条旗に包まれた棺で送り帰されたことだろう。

アンクル・サムに行けと命じられるままに、彼女(歌詞のなかで、星条旗は女性になぞらえられている)は送られた。「インディアンもブラックもイエローも、すべては彼女のために赤い血を流した」と、歌詞は続く。

国を出れば、踏みにじられ、ガソリンをかけて燃やされた星条旗の命運を思えばさながらに、ほころびた旗を愛おしむ気持ちが尽きないと、キャッシュは歌う。

1971年、ベトナム戦争のさなか、彼は慰問でサイゴンを訪れている。退役帰還兵でもあった彼が、アメリカにはじめて深い疑念を覚えたのは、その時だった。
本国で聞くのと違って、戦況は悪化の一途たどり、コンサートの最中でさえ、14人の負傷者と7名の若い命が失われている。
なんとか、若者たちを一刻も早く国に帰さなければならない。
ほとばしる気持ちをありのままの思いを綴ったのが、「Singi‘n Vietnam Talkin’ Blues」であり、彼はこの曲を「Man in black」に収録している。

ジョニー・キャッシュはマスコミに対し、政治的な発言を不思議なほど残していない。
「観客の前で自分を偽ってはならない。伝えることはすべてステージの上で・・・」
自伝に書きつけた自らの姿勢を最後まで貫いた歌い手だったのだ。



(2013年10月26日公開)

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