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『孤独なランナー』~ストーンズに憧れた少年が抱いた夢と現実

2015.01.20

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ジャクソン・ブラウンがロックンロールの洗礼を受けたのは1964年、16歳の頃だった。

アメリカ・ツアーでカリフォルニアに来ていたローリング・ストーンズのコンサートを観に行ったジャクソンは、女性用の下着が何枚も宙を飛び交うという想像だにしない光景を目の当たりにした。

「だれかがパンティで灰皿をくるんで重さをつけて、それを投げたら、キースに当たってね。ぼくと一緒にいた女の子はすっかり正気を失ってしまった。で、僕は思ったね。“ぼくもこれを仕事にしなきゃ”ってさ」


stones-zurich

かくしてミュージシャンになることを決めたジャクソンだが、傾倒していたボブ・ディランの影響もあってこの時はロックではなくフォークの道を進んだ。
その後、ニューヨークでアンディ・ウォーホルのお気に入りであるニコのバックバンドでギターを弾いたり、フラワー・ムーブメント咲き乱れるカリフォルニアに身を置いたりしながらミュージシャンとして成長、1971年には念願のレコード・デビューを果たす。
フォークやロック、カントリーなど様々なジャンルを取り入れた聴きやすいサウンドと、聴くものの心を掴む叙情的な歌詞で次々とアルバムをヒットさせ、ジャクソン・ブラウンはミュージシャンになるという夢を見事に叶えてみせた。

そんなジャクソンが、ロックンロールを主題にしたライヴ・アルバムを構想したのは1977年のことだ。
10年以上に渡って音楽の世界を渡り歩いてきたジャクソンは、ロック・スターが魅せる華やかでエキサイティングなステージの裏にある世界を間近で、あるいは当事者として見てきた。
そこにあったのは、ロックに付きもののセックスやドラッグはもちろん、ツアーの中で蓄積されていく疲労や遠く離れた家族や恋人への想い、そしてツアーを支える多くの人たちの存在だった。
その一つ一つに魅力を感じたジャクソンはバンドメンバー、さらにはスタッフも加えて詩を完成させていく。

ライヴ・アルバムを制作するにあたり、ジャクソンはステージでの演奏だけでなく、楽屋でもホテルでも演奏するときはところ構わずテープを回した。
そうして残された膨大な録音の中から、何曲かがアルバムに収録されることになった。
「コカイン」という曲はコカインの匂いが充満するホテルの一室で、ツアーバスの運転手について歌った「ナッシング・バット・タイム」は車の音が鳴り響くツアーバスの中で録音されており、音や言葉と一緒に歌詞の世界に漂う空気感までもが伝わってくる。

「『孤独なランナー』はロックンロールの神秘を暴こうとしたアルバムだよ、ロックンロール体験だね。ともかく現実的な世界じゃないよね。危ういものなのさ。でも、そういうロックンローラーの生活というものをみんなに見せられたんじゃないかな」


ロックンロールの神秘は、かつてローリング・ストーンズを見て夢を抱いた少年によって暴かれることとなった。
ミュージシャンやスタッフがツアー中に送る日常を追体験できるライヴ・アルバム、『孤独なランナー』は1977年12月6日に発売されてから累計で700万枚以上を売り上げており、ジャクソン・ブラウンにとって最大のヒット作となっている。




ジャクソン・ブラウン『孤独なランナー』
ワーナーミュージック・ジャパン

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