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唸る轟音でビートルズの記録をも塗り替えたグランド・ファンク・レイルロードの大躍進

2023.09.29

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1970年。ビートルズが解散を発表し、ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリンといったロックの象徴的な存在が立て続けに亡くなった。

ロック史における1つの時代が幕を閉じる一方では、レッド・ツェッペリンの3rdアルバム『レッド・ツェッペリンⅢ』が全米アルバム・チャートで4週連続1位となり、注目を集めていたスーパーバンド、CSN&Yもまた『デジャヴ』が首位を獲得するなど、ロック・シーンには新たな風が吹き荒れていた。

そんな激動の年に最大の成功を収めたバンドは、ミシガン州フリントから現れた3人組のバンド、グランド・ファンク・レイルロード(GFR)だった。

五大湖に隣接するミシガン州はデトロイトを中心とする工業地帯で、仕事を求めて南部からやってきた黒人とともにブルースが広まった地域だ。
1960年代半ばになると地元のレーベル、モータウン・レコードが、ダイアナ・ロス&シュープリームスを筆頭に次々とヒットを生み出した影響でR&Bやソウルの人気が高かった。
だが、ビートルズやストーンズの影響を受けた若者も数多く、この頃からイギー・ポップ率いるザ・ストゥージズやMC5といったロックバンドを輩出し始める。

GFRを結成することになるドン・ブリューワーとマーク・ファーナーは、デトロイト北部の町フリントの出身で、テリー・ナイト&ザ・パックのメンバーとして活動していた。
しかし1967年にバンドリーダーであるテリー・ナイトは、音楽での成功を夢見て単身でニューヨークに行ってしまった。
この出来事が、のちにドンとマークの運命を大きく変えることとなる。

いくつかのレーベルを転々としたテリーは1968年、キャピトル・レコードに就職を果たした。
A&Rの仕事の第一歩としてテリーはバンド仲間だったドンとマークに連絡を取り、クリームやジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのような3ピースバンドをやってみないかと持ちかける。
その案に乗ったドンとマークは、新たなベーシストとして同じフリント出身のメル・サッチャーを誘い、グランド・ファンク・レイルロードが結成された。

1969年7月、GFRはアトランタ・ポップ・フェスティバルという、大舞台のオープニングアクトにいきなり抜擢された。
レコード・デビューすらしていないGFRにとって、それはまさに千載一遇の好機だった。
エネルギッシュな演奏で10万人近くいたとされる観客を熱狂させたGFRを、テリーはキャピトル・レコードと契約させることに成功する。

フェスティバルの1か月後には1stアルバム『On Time』がリリースされて、無名の新人としては異例の100万枚を売り上げた。さらに同年末には早くも2ndアルバム『Grand Funk』をリリース、プラチナレコードを獲得したGFRは瞬く間にスターダムを駆け上がった。

とは言ってもすべてが順風満帆というわけではなかった。
批評家たちからは騒がしいだけのバンドだと酷評されたし、オンエアするラジオ局も少なかった。
しかし、そういった逆風もGFRの勢いの前では無力に等しかった。

GFRの人気はとどまることを知らず、年が明けた1970年はどこのコンサートもチケットが即完売となった。
躍進の第一歩となったアトランタ・ポップ・フェスティバルにも再び出演し、オールマン・ブラザーズ・バンドやジミ・ヘンドリックスと共演している。
1971年にはニューヨークのシェア・スタジアムでのコンサートが、わずか72時間でチケット完売となり、ビートルズが保持していた同スタジアムの記録を塗り替えた。


それから1週間後には初来日を果たしている。
GFRの3人が飛行機を降りると悲鳴を上げるファンたちが出迎え、ドンによれば「まるでビートルズの映画みたいだった」という。
7月17日に後楽園球場に3万5000人の観客を集めた、雷雨の中での素晴らしいパフォーマンスは、今もロック・ファンの間で語り継がれている。

ロンドンのハイドパークで行われたフリー・コンサートでは10万人を動員するなど、GFRの旋風はアメリカのみならず、世界中へと拡散していくのだった。

この時代のライブを収めた『Live Album』は、ミックスや重ね撮りといった編集を一切しておらず、生々しいサウンドで彼らの魅力を余すことなく伝えてくれる。

グランド・ファンク・レイルロード『ライヴ・アルバム』
EMIミュージック・ジャパン




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