TAP the LIVE

偉大なる兄弟たちのもとで再び歌ったジャニス・ジョプリン

2015.04.14

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ジャニス・ジョプリンがサンフランシスコで人気のロックバンド、ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーのメンバーとなったのは1966年のことだった。

その当時、ジャニスは地元のテキサスで暮らしていた。
というのも、1963年にミュージシャンとして成功することを夢見て一度はサンフランシスコへと飛び立ったのだが、酒とドラッグに溺れてしまい、このままでは命に関わると感じて、そうした生活から足を洗うべくテキサスの実家に戻っていたのだ。

一方、ビッグ・ブラザーのメンバー4人はバンドの力強い演奏に対抗できるようなボーカルを探していた。
サンフランシスコにいたときのジャニスを気に入っていたマネージャーのチェット・ヘルムスは、バンドにジャニスを加えないかと提案し、テキサスにいるジャニスにオファーを送る。
サンフランシスコに行けば再び酒とドラッグの日々に戻ってしまうかもしれない、ミュージシャンとして成功する保証もない、という不安から迷ったジャニスだったが、最終的にはサンフランシスコへと戻ることを決断した。

ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーはその名のとおり、家族のように結束の強いバンドだった。
何事もみんなで話し合って決めるのがモットーで、一時はそれぞれの家族もひっくるめて同じ屋根の下で暮らしていた。
ジャニスを加えたビッグ・ブラザーはエネルギッシュな演奏と圧倒的なボーカルによってますます人気を集め、1967年6月にはモンタレー・ポップ・フェスティバルに出演してその名は一気に全米へと知れ渡る。
詳しくはこちらのコラム「モンタレー・ポップ・フェスティバルが生んだ伝説~ジャニス・ジョップリン」へ

これがきっかけとなって大手レコード会社のコロムビアと契約し、翌年8月にセカンド・アルバム『チープ・スリル』をリリースすると8週間連続1位という記録的なヒットとなった。

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しかし、このような輝かしい成功の中でスポットを浴びるのはジャニスだけだった。
バンドは“ジャニス・ジョプリンとビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニー”と呼ばれるようになり、レコード会社やマネージャーも彼女をソロで売り出そうと考える。
またジャニスもロックバンドではなく、オーティス・レディングやアレサ・フランクリンのような腕の良いブラス・バンドをバックに歌いたいと感じ始めていた。
そして1968年秋のある日、ジャニスはホテルの自室にメンバーを呼ぶと「私はビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーを脱退するわ」と伝える。
ギタリストのサム・アンドリューもジャニスについていくかたちでバンドを脱退し、ビッグ・ブラザーは活動中止となった。

ジャニスがバンドを脱退して新たなスタートを切ったことに多くのメディアが期待する一方、サンフランシスコのファンやメディアは裏切り行為だとしてジャニスを非難し、翌1969年にジャニスが新たなバンド、コズミック・ブルース・バンドを従えてサンフランシスコでコンサートをした際にはブーイングの嵐を浴びせた。

一方のビッグ・ブラザーは新たなメンバーを加えて活動を再開し、サム・アンドリューも戻ってきて7人体制となる。
そして、バンドを脱退したジャニスがコンサートに顔を出すと彼女を温かく迎えた。
ゲストとしてステージに招き入れると、ジャニスは前に出ないでバンドの後ろでバック・コーラスをしていたという。
そんなある夜、コンサートを観に来たジャニスに、バンド・メンバーはジャニスをリード・ボーカルにしてセッションをしようと提案した。

「すっかり盛り上がっちゃってね。みんなと抱き合ってキスしたわ」


これがきっかけとなって、4月4日にはフィルモア・ウェストでジャニス・ジョプリンを加えたビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーによる復活ライブが催されることとなる。
そしてステージでは、彼らがともにバンドを組んでいた時代の曲が多数演奏され、サンフランシスコのファンたちもビッグ・ブラザーのジャニスを歓迎した。

※演奏は1分11秒から



このときのステージについてジャニスは「温かく愛すべき一族にふたたび受け入れられた放浪娘のような気がした」という。
しかし、ジャニスがそのままビッグ・ブラザーに戻ることはなく、自身の新たなバンド、フィル・ティルト・ブギー・バンドを結成して新たなスタートを切った。
ジャニスがそうして前進することができたのは、ビッグ・ブラザーという帰る場所があったからかもしれない。

しかし、それからちょうど半年後の1970年10月4日、ジャニスは新アルバムの制作中にアルコールとヘロインの過剰摂取により27歳でこの世を去ってしまう。
彼女の死から2年後の1972年には、生前のライブ音源を集めたアルバム『ジョプリン・イン・コンサート』がリリースされ、その中にはビッグ・ブラザーとの最後のステージの中から2曲が収録されている。

ジャニス・ジョプリン『ジョプリン・イン・コンサート』
Sony

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