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ビートルズ~来日公演に訪れた、束の間の静寂

2013.11.12

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1966年6月30日、日本武道館には1万人もの若者が集まった。
お目当ては世界中を席巻するイギリスの人気ロックバンド、ザ・ビートルズであった。

ファンによる暴動を防ぐという名目で、会場内には警察によって前代未聞の厳重な警備体制が敷かれた。何しろアリーナには観客を一人も入れず、ステージには絶対に観客を近づけないという徹底ぶりだった。

それでもビートルズが登場すると、会場内はたちまち割れんばかりの歓声に包まれた。
1階席、2階席をファンが埋め尽くし、アリーナには警察官が立ち並ぶという異様な空間の中で、1曲目の「Rockn’Roll Music」が始まった。

警察の厳しい監視によって観客は席に座ることを強要され、立ち上がった観客はすぐに押さえつけられた。

それでも気を失う人が出るほどの熱狂が続き、演奏中でも曲の合間でも歓声が止むことはなかった。

しかし、7曲目の「Yesterday」が始まった時だけ、場内はふっと静かになった。

昨日まで、全ての苦しみは遠く離れた場所にあると思っていた

それが今やすぐそこにまで迫ってきている

ああ、今が昨日であればいいのに

この曲が終わるまで日本の観客が自分たちの演奏を静かに聴いてくれたことで、ポールはようやくリラックスして演奏できるようになったという。この日の日本公演は欧米以外の地域でビートルズが行なった最初のライブで、誰もが緊張していたのだった。

次の「I Wanna Be Your Man」が始まると再び場内は熱気に包まれ、11曲目の「I’m Down」が終わると、35分という短いコンサートはあっという間に幕を閉じた。

「あの時のコンサートは出来がよくないんじゃないか、と言われたことがある。当時はそうかな、そんなもんかな、と自分たち自身の技量を疑ったこともあった。でも、そうじゃない。そんなことはないんだ。あのコンサートはベストだった。」(ポール・マッカートニー)

Yesterday(1966 Japan) / Beatles

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