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ジミ・ヘンドリックスが初めてギターを燃やした日

2016.03.31

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歯でギターを弾いたり、背面でギターを弾いたりと、数多くの衝撃的なパフォーマンスを生み出したジミ・ヘンドリックス。
中でもギターを燃やす有名なパフォーマンスが生まれたのは、1967年3月31日のことだ。

その日、ロンドンのとあるライブハウスでは、ウォーカー・ブラザーズの解散ツアーが初日を迎えていた。
前座として出演するバンドの中には、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの名も連なっていた。

アメリカ北西部のワシントン州で育ったジミは、当時からすでに誰も寄せ付けない神業的なギターの腕前だった。
だが、黒人差別が根強く残っていたアメリカよりも、イギリスのほうが受け入れられやすいだろうという理由から、前年の9月に活動の拠点をニューヨークからロンドンに移していた。

この日の出演者はウォーカー・ブラザーズ、エンゲルベルト・フンパーディンク、キャット・スティーヴンスら名のあるアーティストたちだった。

まだ無名だったジミはどうすればライブをもっと盛り上げられるかと、出番を待つ合間にスタッフと楽屋で話し合っていた。

「もしジミがギターに火を点けたらどうなるだろうね(笑)」


ジミの広報を担当していたキース・アルサムは冗談のつもりで言ったのだが、「悪くないね」と思ったジミはスタッフにライターを買いに行かせたという。

その日の夜。
ジミのライブは「Foxy Lady」から始まり、「Can You See Me」「Hey Joe」「Purple Haze」と続いた。
そして最後の曲、その名も「Fire」で伝説のパフォーマンスは生まれた。

俺が熱望するものはたった一つ
お前の火で卒倒させてくれ


曲が終わろうというところで、ついにジミはギターに火を点けた。
前代未聞のパフォーマンスを目の当たりにして、観客が唖然としたのは言うまでもない。
この時、手に軽い火傷を負ったジミは、出番が終わるとすぐに病院に向かったという。

この事件によってジミの名はさらに広まり、6月にはポール・マッカートニーの推薦もあってアメリカ最大のフェス、モンタレー・ポップ・フェスティバルに出演することになる。

そこで圧倒的なライブ・パフォーマンスを披露するとともに、再びギターに火を点けたことによって、ジミ・ヘンドリックスの本当の伝説が始まろうとしていた。


(2013年11月19日に公開/2015年3月31日に改訂)

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