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15年ぶりのツアーで最高のパフォーマンスを披露したレナード・コーエン

2017.11.07

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毎年いくつかのアーティストが追加されているロックの殿堂。
2008年に殿堂入りを果たしたのはマドンナ、ベンチャーズ、デイヴ・クラーク・ファイヴ、そしてレナード・コーエンだった。
カナダを代表するシンガソングライターの一人であり、そして詩人でもあるレナード・コーエン。
数々のミュージシャンにカバーされて、今やスタンダードといっていいほどに親しまれている「ハレルヤ」や、80年代に大ヒットした「哀しみのダンス」など数多くの代表曲を持っている。

そんなコーエンの殿堂入りが発表された3月、同時に15年ぶりとなるツアーをスタートさせることが明らかになった。
このとき御年73歳、もうコンサートはしないのではないかとも噂されていたが、そこにはのっぴきならない事情があった。
なんとマネージャーがコーエンの口座から500万ドルもの大金を着服していたことが発覚したのだ。

ケリー・リンチは15年以上もコーエンのマネージメントを務め、彼女とコーエンは家族ぐるみで付き合うほどに親しい間柄だった。
最初におかしいと気づいたのはコーエンの娘、ロルカだ。
そこでコーエンの銀行口座を確認してみると、ケリーの利用しているクレジットカードの会社に7500ドルが支払われており、さらには預金のほとんどがなくなっていたのである。

遡って調べた結果、着服は1996年から始まっていた。
その頃コーエンは仏教を学ぶため、そしてうつ病を直すために表舞台を下り、禅センターに篭って修行していた。
コーエンの目が届かないという状況が引き金になったのだろうか。

全てを知ったコーエンは、500万ドルを盗まれたとしてケリーを訴えた。そして裁判の結果、ケリーは950万ドルを支払うよう命じられたのだが、彼女にそのような大金を支払う術はなかった。
盗まれたお金が戻ってくることはなく、貯蓄の大半を失ったコーエンは、コンサート業を再開することで、損害を何とかしなければならなかった。

15年ぶりのツアーの裏にはそのような事情があったのだが、ファンにとってツアーの発表はこの上ない朗報であり、チケットが発売されるとどこの会場もすぐに完売となる。
コーエンは半年間で20カ国以上を回り、80回を超える公演の累計来場者数は70万人にものぼった。

そのうちの7月17日にロンドンのO2アリーナで開催されたコンサートは、『ライヴ・イン・ロンドン』と名付けられてCDとDVDでリリースされ、最高のライヴ・アルバムとして賞賛された。

コンサートで観客を驚かせたのは、コーエンが長いブランクと高齢による衰えを感じさせるどころか、エネルギーに満ち溢れ、地の底から魂を揺さぶってくるかのような低い歌声はより深みを増しているということだった。
セットリストはデビュー曲の「スザンヌ」からヒット曲、新曲まで幅広く取り上げらており、ファンにとって満足のいく内容なのはもちろん、入門にも打ってつけの内容となっている。

そのハイライトはやはり「ハレルヤ」だろう。
家族同然の親しい付き合いをしていた人間に騙され、深く傷ついたコーエンは神に問いかける。

♪ 神は上の世界にましますのだろう
  だが私が愛から学んだことといえば
  私を撃とうとする人間を先んじて撃つことだった
  夜、聴こえてくるのは
  光を見た、と叫ぶ人の声などではなく
  冷たく、壊れてしまったハレルヤだ
  ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ ♪




Lenard Cohen『LIVE IN LONDON』
Columbia

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