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40年のときを経てようやく思い描いていたかたちとなったストーンズのライヴ・アルバム『ゲット・ヤー・ヤー・ヤズ・アウト』

2017.12.05

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1969年11月に始まったローリング・ストーンズの全米ツアーは、67年春のヨーロッパ・ツアー以来、実に2年半ぶりだった。
「カム・オン」で1963年にデビューしてから、彼らはほぼ休むことなく年中イギリスとアメリカを中心に世界中を旅していた。その忙しさを思えば、2年半は必要な充電期間だったかもしれない。だが、同時にツアーが恋しくなる頃合いでもあったようだ。

7月にはブライアン・ジョーンズの追悼コンサートとなったハイド・パーク・コンサートで、久々にファンの前で歌った。新メンバーのミック・テイラーも徐々にバンドに馴染んで、ツアーの準備は万端だった。
11月7日、コロラド州での公演を皮切りにスタートした全米ツアーは、大盛況のまま11月30日にフロリダ州のウェストパームビーチで幕を下ろした。

そして12月、アメリカでは『ライヴァー・ザン・ユール・エヴァー・ビー』なる海賊盤が出回り始めた。
無地にスタンプが押されただけの簡素なジャケットで、一見しただけでは何のレコード分からないが、その中身は11月9日のオークランドにおけるストーンズのコンサートだった。
翌年2月にはローリング・ストーン紙でその内容が高く評価され、セールス的にも、正確な数字は定かではないが、アメリカにおけるゴールド・ディスクの認定ラインである25万枚を超えた、と言われるほどの大ヒットとなる。



ストーンズが所属していたデッカ・レコードは、当然この事態を面白く思わなかった。
そして69年の全米ツアーを収めたライヴ・アルバムのリリースに踏み切る。

アルバムタイトルの『ゲット・ヤー・ヤー・ヤズ・アウト』は、かつてデッカからレコードを出し、1941年に亡くなったブラインド・ボーイ・フラーの「ゲット・ユア・ヤズ・ヤズ・アウト」から名付けられたものだ。



ドラムのチャーリー・ワッツと楽器や双眼鏡をぶら下げたロバによる印象的なアルバムジャケットにも元ネタがある。こちらはボブ・ディランの「ジョアンナのヴィジョン」に出てくる「宝石と双眼鏡がラバの頭にぶら下がっている」という一節がヒントになったと言われている。(なお当初はゾウを用意しようとしたが、ゾウはおろかラバも用意することができず最終的にロバになったようだ)

『ゲット・ヤー・ヤー・ヤズ・アウト』は、ブライアンの離脱やミック・テイラーの加入といったメンバーの変化だけでなく、キース・リチャーズがオープンGと呼ばれるチューニングを使いはじめたという点においても、それまでのストーンズのライヴとは違った、新たな時代の到来を予感させるサウンドとなっている。



アルバムを出す際、メンバーはオープニング・アクトを務めてくれたB.B.キングとアイク&ティナ・ターナーの演奏も加えて、2枚組にしようと考えていたが、レコード会社に却下されてしまう。
その経緯についてミックはこのように話している。

「デッカは彼らがだれだか知らなくて関心もなかった。いつまでたってもきりがないから、最終的には俺たちが折れたんだ」(『ローリング・ウィズ・ザ・ストーンズ』より引用)


そうした事情もあって『ゲット・ヤー・ヤー・ヤズ・アウト』は1枚のアルバムとしてリリースされるのだった。

しかし2009年、コンサートから40年を祝してデラックス・エディションが制作されることになった際、当初の意向を組んでB.B.キングやイク&ティナ・ターナーの演奏も収録されることになった。
40年のときを経て、ようやくメンバーが思い描いていたアルバムが実現したのである。



ザ・ローリング・ストーンズ『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!<40周年記念デラックス・エディション>』
Universal

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