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ピラミッドで太陽の光に照らされたデヴィッド・ボウイ

2018.07.24

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デヴィッド・ボウイにとって1960年代は、いわば不遇の時代だった。
しかし1969年に発表したアルバム『スペイス・オディティ』のヒットによって、一躍注目のアーティストの一人となる。翌1970年11月にアメリカで先行リリースされた『世界を売った男』は、ローリングストーン誌で「今年もっとも興味のあるレコード」と称賛された。
そして1971年。デヴィッド・ボウイのもとに、イングランド南西部の農場で催されるロック・フェスに出演してほしいという依頼が舞い込んできた。

のちに世界最大級の野外ロック・フェスと呼ばれることになるグラストンベリー・フェスティバル、その第1回が開催されたのは1970年のことだ。
このときはピルトン・ポップ・ブルース&フォーク・フェスティバルという名称だった。

主催者は農場のオーナーだったマイケル・イーヴィスという男だ。彼はレッド・ツェッペリンの野外コンサートを見て触発され、自身の農場でフェスをやろうと思ったのだという。
入場料はわずか1ポンドで、コンサートのトリはT・レックスに改名する前だったティラノザウルス・レックスだ。
来場者数はわずか1500人だったが、イーヴィスは自身の農場でフェスをするという目標を見事に実現してみせたのだった。



そんな彼のもとを訪ね、再びフェスをやろうと持ちかけてきたのは、アンドリュー・カーという作家だった。
彼は1970年の第3回ワイト島フェスティバルに足を運んでいた。
5~60万人をも動員したといわれ、さらには暴動が発生して大混乱となったこのフェスを目の当たりにした彼は、フェスとはフィールドを大観衆で埋め尽くすことではなく、皆が音楽を聴いて頭を振り乱すような、もっと崇高な祭りであるべきだと考えた。
そうした自身の願望を実現できる場所はないかと探していたアンドリューは、とある農場で小さなフェスが開催されたという情報を聞きつけ、イーヴィスのもとへとやってきたのである。

名称はグラストンベリー・フェアと改められた。60年代のヒッピー文化や当時の思想を受け継ぐことを目的のひとつとし、入場料は無料とした。
また、グラストンベリー・フェスティバルではお馴染みのピラミッド・ステージは、この年にはじめて作られた。このときはギザのピラミッドの1/10サイズというコンセプトで設計されている。
そこからはただのお祭りではなく、「祭り」という言葉が本来持っている神秘的なものにしたい、という主催側の意図が伺える。



当初はピンク・フロイドとグレイトフル・デッドをメインに考えていたが、両方ともスケジュールが合わなかった。そこで次の候補として挙がったのが、T・レックスと同じ事務所で人気急上昇中のアーティスト、デヴィッド・ボウイだった。

1971年6月20日。
会場では音楽にとどまらず、ダンスやサーカス、コメディなど様々な催しを見ることができた。
また、この日はあいにくの雨で地面が泥沼と化し、ウッドストックさながらの光景が広がっていた。

ヘッドライナーであるデヴィッド・ボウイの出番は日が沈んだ夜頃に予定されていた。
ところが進行が大幅に遅れてしまい、ようやくボウイがステージに上がったときには、間もなく日が昇ろうとしていた。
観客の多くはテントで寝ており、これ以上ないほど最悪なタイミングでの出番だった。
案の定、音楽で起こされた観客の機嫌は決してよくなかった。

ところが、そこに文字通り光明が差したのである。
それは「フリー・フェスティバルの思い出」を歌っているときだった。
『ジギー・スターダスト』にバッキング・ボーカルとして参加することになる女優でシンガーのダナ・ガレスピーは、その光景をこう語っている。

「ちょうど朝日が丘の上に顔を見せ、彼を照らし、みんなすっかり気持ちよくなってしまったの。
ステージは大成功。みんな本当に感動していたわ」
(『デヴィッド・ボウイ 神話の裏側』より引用)



太陽のマシンが降りてくる
そして僕らのパーティーがはじまる




ピラミッドに差し込む光、それに照らされて歌うデヴィッド・ボウイ。
それが息を呑むほど神秘的な光景だったであろうことは、想像に難くない。

そんなデヴィッド・ボウイが再びピラミッドの舞台に上がるのは、それから29年後のことだ。

最高のパフォーマンスと讃えられるデヴィッド・ボウイのグラストンベリー・フェスティバルはある2人の“悪戯”によって実現した



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