街の歌

新宿の歌〜長渕剛が描いた“昭和から平成へ”変わりゆく街と人情〜

2015.04.26

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続けざまに苦しそうなせきばらいをしてた
西新宿の飲み屋の親父が昨日死んだ
「俺の命もそろそろかな」って吸っちゃいけねえタバコふかし
「日本も今じゃクラゲになっちまった」と笑ってた

わりと寂しい葬式で春の光がやたら目をつきさしてた
考えてみりゃ親父はいい時に死んだのかもしれねえ
地響きがガンガンと工事現場に響きわたり
やがて親父の店にも新しいビルが建つという

銭にならねえ歌を唄ってた俺に
親父はいつもしわがれ声で俺を怒鳴っていた
錆びついた包丁研ぎ とれたての鯛をさばき
「出世払いでいいからとっとと食え」って言ってた

「やるなら今しかねぇ 
 やるなら今しかねぇ」
66の親父の口癖は
「やるなら今しかねぇ」



1990年(平成2年)に長渕剛が発表した「西新宿の親父の唄」という歌がある。
彼はまさに時代が”昭和から平成へ移り変わった頃”に、この歌詞を綴った。
発売当時、ザ・ブルーハーツで活躍していた甲本ヒロトが「全ての曲が完成されており嫉妬も覚える。あんな作品を自分も残したい。」 と賞賛したというアルバム『JEEP』に収録されたこの名曲は、TVドラマ『北の国から’92 巣立ち』(フジテレビ系列)の挿入歌として使用され、一般に広く知られることとなった。
この歌の舞台となった西新宿は、再開発によってずいぶんと様変わりした。
年号が昭和から平成に変わり…人の心はどうだろうか?
長渕剛の歌には、どんな時代でも人々が忘れてはいけない“人情”が描かれている。


この歌は自身の実体験に基づいて紡がれたものだという。
長渕は、2009年8月29日TV音楽番組『MUSIC FAIR』(フジテレビ系列)に出演した際にこんなことを語っている。

「僕がまだ売れない頃にね、西新宿のあるお店にいつも行ってて、その親父がね、ご飯をねやっぱり食べさせてくれるっていうのかな…その時に親父が言ってたのは“お前今しかねぇんだからな”ってね。その親父の言葉は今でも脳裏から離れないね…。」

今から58年前に、彼は警察官の父親と母親の次男として鹿児島の地で生を受ける。
上に姉がいる2人姉弟の長男として育てられたが、実は乳児期に病死した兄がいた。
子供の頃のあだ名は「レオン」で、幼い頃は体が非常に弱くて頻繁に喘息発作を起こし、病院通いが欠かせなかったという。
そんな彼がシンガーソングライターとしての道を歩むきっかけとなったのは、高校時代に体験した吉田拓郎のコンサートだった。
大学に進学して彼は様々な洋楽も聴くが、基本的には吉田拓郎、加川良、友部正人、遠藤賢司といった1960~70年代に活躍していた日本のフォークシンガーからの影響を強く受けたという。
1977〜1978年のデビュー当初は、痩身で長髪のフォークシンガーというイメージだった彼。
その頃はすでにフォークブームが過ぎた後であったため“遅れてきたフォーク青年”と呼ばれたりもした。
1980年代の半ばから発声方法を変え、ロック色の強いサウンド・歌唱法となった時期もあったが、1980年代後半からは原点であるアコースティックに戻り、より深みのある歌声でファンを魅了し続けている。
ボブ・ディランの歌声への憧憬から、焼酎やルゴール(消毒液)の原液で何度もうがいをし、歌手の命でもある喉を焼き切っていたという逸話もある。
長いライブ活動を続けていくうちに、現在の歌唱法と楽曲のスタイルが培われたという。
昭和から平成へ。
フォークからロックへ。
自らの声質を変化(進化)させ、肉体を改造し、ファンを魅了しつづける彼の“プロ魂”は、還暦を目前に控えた今もまったく衰えることなく現在進行形だ。
変わってゆくもの、変わって欲しくないもの…。
長渕剛の歌には、どんな時代でも人々が忘れてはいけない“人情”が描かれている。


古いか新しいかなんてまぬけな者たちの言い草だった
俺か俺じゃねぇかで ただ命がけだった
酒の飲めない俺に無理矢理とっくりかたむけて
「男なら髪の毛ぐらい短く切れよ」ってまた怒鳴った

西新宿の飲み屋の親父に別れを告げて
俺は通い慣れた路地をいつもよりゆっくり歩いてる
すすけた畳屋の割れたガラスにうつっていた
暮らしにまみれた俺が一人うつっていた

「やるなら今しかねぇ 
 やるなら今しかねぇ」
66の親父の口癖は
「やるなら今しかねぇ」



【長渕剛 オフィシャルサイト】
http://www.nagabuchi.or.jp



長渕剛『JEEP』

長渕剛『JEEP』

(1990年/東芝EMI)


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