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街の歌

ブルー・ライト・ヨコハマ〜横浜からヨコハマへと街の色を変えた一曲

2016.05.01

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1968年のクリスマス(12月25日)にその歌はリリースされた。
当時、二十歳だった歌手・いしだあゆみにとって26作目のシングルだった。
なんと!発売日に10万枚のレコードが売れ、それが10日間続いたというから驚きだ。
結果、3ヶ月で200万枚近くを売り上げるミリオンセラーを記録する。
時代は“全共闘・全国学園闘争”の真っただ中だった。
ベトナム戦争に反対する若者達が、新宿西口広場などで集会を開き、機動隊と衝突していたあの頃…。
パンタロンやマキシスカート、そしてシースルールックが流行し“ヒッピー族”が街を闊歩しながらフォークソング口ずさんでいた時代にこの歌は生まれた。
作曲者は筒美京平。
彼にとってこの歌こそが、自身が手掛けた楽曲で初のオリコン週間1位を獲得する出世作となった。
筒美はこの楽曲で第11回日本レコード大賞・作曲賞を受賞する。
一方、作詞を手掛けたのは“グループサウンズ関連で最も売れた作詞家”としても知られる橋本淳だった。
奇しくも筒美京平と橋本淳は青山学院中等部からの盟友だったという。
当時の“青学”と言えば、ハイカラで上流階級の子供達が学ぶところとして知られていた。
学内には多数のジャズサークルがあり、二人は別々のバンドだったが、共に音楽を志す仲間だったという。


──この歌にはどんな想いが込められ、どんなチカラがあったのか?
橋本によると、歌詞のイメージは港の見える丘公園(横浜市中区山手)から見える横浜と川崎の工業地帯の夜景と、自身がかつてブルー・コメッツと共に降り立ったフランスのカンヌで見た“ある光景”が重なり合っているのだという。
カンヌの空港は滑走路が海に突き出ていて、海から陸地に向かって降りていく飛行機の中から見たカンヌの夜景に橋本は強烈に心を奪われたのだという。

「日本はまだ戦争の傷痕が癒えていない“錆れた風景の残る時代”だったので、地中海の青い海にショックを受けました。」

そしてもう一つ。
若かりし頃、ニューヨークの美術館で見たピカソの“青の時代”の頃の絵画が彼の心に強烈な印象を植え付けたのだという。
以来、彼の創作の根底にはいつも“青(ブルー)”があったという。
ピカソのブルーと、カンヌで見たブルーの世界が彼の心から離れることはなかった。

そんなある日、いしだあゆみが移籍したばかりのレコード会社(日本コロムビア)から作詞の依頼を受ける。
「彼女が歌うための“横浜の曲”を作ってくれ。」
横浜には青学時代の友人がいたこともあり、街は知り尽くしていた。
当時を振り返りながら橋本はこう語る。

「東京に住んでいても、横浜はおもしろいところだと感じていた。あのころは、もっと暗い、尖った、危ない人たちが集まってくるような街だった。」

気がつけば、橋本の足は横浜に向かっていたという。
港の見える丘公園から本牧方面へ…坂道を登り下りしながらイメージを探った。
だがそこで見た景色は、あのピカソの絵やカンヌで見た“ブルー”とはほど遠かった。
錆びた貨物船のドッグなどが広がる光景に「これが日本なんだ…」と、小さなため息をつきながらホテルの一室で歌詞を綴ったという。
レコーディングを翌日に控えた夜、橋本は滞在先のホテルで筒美からの電話を受ける。
書き上げたばかりの「ブルー・ライト・ヨコハマ」の歌詞を受話器越しに伝えたのはその時だった。


街の明かりが とてもきれいねヨコハマ 
ブルー・ライト・ヨコハマ
あなたと二人 幸せよ



筒美はその晩、徹夜で歌詞にメロディーを乗せて曲を完成させたという。

「ピカソでいう“青の時代”の感覚ですかね…。」

と、当時を振り帰りながら語る橋本。
その時代の流行歌といえば、不幸をテーマにしたものや、貧しい暮らしの中から生まれた“人情もの”が多かった。

「希望に満ちた未来の幸せより、今ある“ほんのひとときの幸せ”を歌にしたかった。それが時代にマッチしたのでしょうか…。」

この歌は、橋本にとって「ブルーシャトー」(ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)に次ぐ大ヒットとなった。
彼がこだわった“ブルー”によって、一つの街の色が変わった。
この「ブルー・ライト・ヨコハマ」のヒット以降、横浜の夜景は青が基調となる。
野球チームや駅伝のユニフォームもブルーがベースとなった。
歴史あるレンガ色の建築物や、情緒豊かな港町の風景を残しながら…街は“横浜”から“ヨコハマ”へと変化していく。
あれから48年の時が流れた今も、ヨコハマには青(ブルー)が似合う…。

<引用元・参考文献『東京歌物語』/東京新聞編集局・編著(東京新聞出版部)>


由紀さおり&ピンク・マルティーニ『1969』

由紀さおり&ピンク・マルティーニ『1969』

(2011/EMI JAPAN)

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