街の歌

Santa Lucia〜世界で最も美しい港町の歌、目をくりぬかれた聖ルチアの伝説〜

2017.05.21

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日本で言う「日光を見ずして結構と言うことなかれ」と同じように、イタリアには「ナポリを見てから死ね」ということわざがある。
そう、ナポリ湾一帯の風景を見ずに死んでしまっては“生きていた甲斐がない”というほど、その港町は美しいというのだ。
ナポリ、そこはギリシア植民地の一つとして紀元前7世紀に作れた最古の港町と言われている。
この「Santa Lucia(遙かなるサンタルチア)」は、伝統的なナポリ民謡(カンツォーネ・ナポリターナ)の中でも特に人気の高い歌である。


テオドロ・コットラウが編曲し、1849年にナポリのバルカロール(舟歌)として出版した。
コットラウがナポリ語をイタリア語に翻訳したのは、第1次リソルジメントの時期で、ナポリの歌にイタリア語の歌詞が付けられた初めての作品となった。
彼はナポリ生まれのフランス系イタリア人で、父親も弟も作曲家という音楽一家で育った。
イタリアの人気作曲家ガエターノ・ドニゼッティのオペラ『ルクレチア・ボルジア』のプロローグで歌われる「あの魔法使いのなんて美しいこと」という独唱歌からヒントを得て、この曲を編曲したという。
オリジナルのナポリ語の歌詞は、ナポリ湾に面した絵のように美しい波止場地区、ボルゴ・サンタ・ルチアを讃え、船頭が自分の船に乗って夕涼みするよう誘いかけている内容だったという。
アメリカでは最初、トーマス・オリファントによって英訳され、ボルティモアのM.マキャフリー社により出版された。
20世紀のレコーディングでおそらく最も有名なのは、ナポリの偉大なオペラ歌手エンリコ・カルーソーのものであろう。
また、エルヴィス・プレスリーが1965年にリリースしたアルバム『Elvis for Everyone!』にも収録されている。



では、ここに歌われているサンタ・ルチアとは一体何のことなのだろう?
その正体は…聖ルチアという女性キリスト教徒のことだという。
彼女は紀元後304年にシチリア島南東部の都市シラクサで殉教した。
時のローマ帝国の皇帝ディオクレティアヌス帝は国力の衰退と共に台頭するキリスト教を迫害しキリスト教信者の殲滅を図る厳しい政策を取り、熱心な信者であったルチアは密告により捕われ拷問にあって目をくりぬかれる。
しかし、奇跡が起きて…彼女は目がなくとも見ることができたという。
このような伝説と、ルチア(Lutia)という名がラテン語で“光”を意味するルクス(Lux:照度を表す単位)に由来していることから、暗闇を照らす“光の守護神”とされている。また、彼女は“目の守護神”としても崇められ続けている。
ナポリのあちこち奉ってある彼女の像に、漁夫たちは日々航海の安全を祈って海に出るという。

──世界で最も美しい港町の一つと言われたナポリで、輝く海、空、風、太陽、そして月灯りを満喫できるのは聖女ルチアのご加護の賜物だと感謝を歌ったこの名曲は、今も世界中の人々から愛され続けている。


<参考文献『世界の愛唱歌』長田暁二(ヤマハミュージックメディア)>


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