街の歌

帰れソレントへ〜名立たるオペラ歌手たち、エルヴィス、そして美空ひばりが歌い継いできた100年以上前の名曲

2017.12.17

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ごらん、なんて美しい海だろう
豊かな感情があふれている
君の優しい言葉が
僕を夢心地にするように…

ごらん、この庭を
このオレンジの花の香りを感じて
繊細な香りが
心にしみ入るようだ…

なのに君はさよならと言う
僕の心から遠く離れてゆく
そして恋の思い出がつまったこの地からも…
本当に戻る気はないのかい?
行って欲しくないんだ
僕を悲しませないで…
帰れソレントへ
僕を助けてくれ


イタリアのナポリ市、その南にソレントという美しい町がある。
現在は人工集中と工場の増加で都市化が進んだナポリよりも、古代ローマの歴史と自然が生き続けるソレントの方が観光でも人気だという。
この歌「Torna a Sorrento(帰れソレントへ)」は、そんな魅力的な町を舞台にしたカンツォーネ(イタリア民謡)の代表曲の1つである。
今から100年以上前…1902年9月15日にソレントを訪れた、時の首相ジュゼッペ・ザナルデッリのために作曲されたという。
生っ粋のナポリっ子として地元で生まれ育った兄弟ジャンバッティスタ・デ・クルティス(作詞)とエルネスト・デ・クルティス(作曲)が書いたとされているが、一説では、ある音楽出版社の社長が歌詞を変えることを提案し、改訂したものが広く知られているという。
同時代に大活躍していたナポリ出身の天才テナー歌手エンリコ・カルーソーが歌唱することによって、たちまち世界中で愛されるようになる。
1960年には、エルヴィス・プレスリーが「Surrender」と言うタイトルで英詞で歌ってアメリカでNo.1ヒットを記録している。


ごらん、ソレントの海を
海の底には宝物が眠っているよ
世界中を巡った人々も
こんな場所は見たことがないはず

あたりをごらん、*セイレーンたちが
(*ギリシア神話に登場する半身女性の姿をした海の魔物)
心奪われ君を見つめているよ
僕は君を大切に思っている
口づけしたいほどに…

なのに君はさよならと言う
僕の心から遠く離れてゆく
そして恋の思い出がつまったこの地からも…
本当に戻る気はないのかい?
行って欲しくないんだ
僕を悲しませないで…
帰れソレントへ
僕を助けてくれ


ソレントの人々は、今でもクリスマスやニューイヤーになると、ワインを片手にこの歌を合唱するという。
また、ソレントにあるリゾートホテル、インペリアル・トラモンターノのロビーには「このホテルのテラスで“帰れソレント”が作曲された」と書かれた碑銘があり、観光客たちの記念撮影スポットの一つになっている。
日本では、大正中期から昭和初期にかけていくつかの日本語詞が出版されており、1932年(昭和7年)にテナー歌手の藤原義江が歌唱によってレコード化された。
現在は徳永政太郎訳による日本語詞を歌唱した美空ひばりのバージョンで知る人が多いのではないだろうか。
名立たるオペラ歌手やテナー歌手、エルヴィス・プレスリー、そして日本の美空ひばりまでが歌い継いできたこのメロディー。
どうか100年先も美しい町の風景と共に残して欲しいものだ…


うるわしの海は うつつにも夢む
君の声のごと わが胸をうつ
オレンジの花は ほのかにも香り
恋に嘆く娘の 胸にぞしむよ
あわれ君は行き われはただ一人
なつかしの地にぞ 君を待つのみ
帰れよ われを捨つるな
帰れソレントへ 帰れよ

ソレントの海は たぐいなき海よ
貴き宝を 底にうずむや
惑わしのシレンは 君の手をとりて
いと甘き声に 君を誘うよ
あわれ君は行き われはただ一人
なつかしの地にぞ 君を待つのみ
帰れよ われを捨つるな
帰れソレントへ 帰れよ

(日本語詞:徳永政太郎)

<参考文献『世界の愛唱歌』長田暁二(ヤマハミュージックメディア)>

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