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Horses〜アルバムジャケットの誕生秘話、写真の中の瞳が世代を超えて語るメッセージとは?〜

2015.08.23

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私はモノクロのジャケットを見つめた。
私はアルバムの隅々まで眺めた。
私は全ての曲を盤が磨り減るまで聴いた。
全てが計り知れない意味を秘めていた。
それは私の人生を変えた。
『Horses』は深く精神的な影響を私に与えた。

──D・D・フェイ(ロンドン在住のジャーナリスト、ニック・ジョンストンの友人)


パティ・スミスと“特別な関係”にあった写真家ロバート・メイプルソープが撮影したカヴァー写真によって『Horses』は、ロックの歴史上“最も有名な”レコードジャケットの一つとなった。
この写真が撮影されたのは1975年の初秋頃だったといわれている。
場所は様々なアーティスト達が根城としていたニューヨークのワシントンスクエア。
同性愛者だったロバート・メイプルソープの恋人としても知られる美術コレクターのサム・ワグスタフが所有する新しいペントハウスで行われた。
パティは、撮影当日の様子をこんな風に回想している。

「その日、わたしは寝過ごしてしまったの。
慌てて、いつもステージや通りで着ている自分の制服のような服に着替えたわ。
ロバートは何も言わず、すぐに仕事に取りかかった。
アシスタントは使わなかったわ。
彼が欲しがっていた三角形の影ができていたが、陽は動きつつあり影は消えようとしていた頃、ロバートはわたしにジャケットを脱ぐように言った。
シャツの白さが気に入ったのよ。
わたしはジャケットをシナトラ風に肩に引っかけた。
シナトラの何気ない大胆さが出るように。」


ロバートは、自然光を使い、天使の翼のようにパティの肩から逆光が跳ね返るように撮影した。
アイロンのあてられていない白シャツとタイトなジーンズは、70年代当時のキース・リチャーズやボブ・ディラン風の着こなしだった。
そのファッションは明らかに男物だったが、細く長い首、そしてシャツの袖から胸元に伸びる手首や指先は、むしろ“女性らしさ”を強調していた。
アルバムの発売元だったアリスタレコードは、この両性具有的に写ったパティの写真を良しとはしなかった。
アリスタはボサボサの髪の毛をエアブラシで修正することなど“売るため”の提案をしてきたが、パティはそれを拒否した。
「この写真はロバート・メイプルソープとの共同作業によってもたらされたものであり、芸術上の決定権は自分にあるのだ。」
と言ってアリスタに主張したのだ。
元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルがプロデュースした彼女の記念すべきデビューアルバム『Horses』は、同年の12月にリリースされ、アメリカのチャートを47位まで駆け上った。
リリースから長い時を経ても“伝説的なアルバム”として愛され続けた同作は、2003年に『ローリング・ストーン誌』が選出したオールタイム・グレイテストアルバム500で44位にランクインした。
U2のボノは「自分に大きな影響を与えたアルバム」として挙げており、R.E.M.のマイケル・スタイプは「人生を変えたアルバム」とし公言している。
また同作のリマスターCDには、イギリスのロックバンド、ザ・フーが1965年に発表した名曲「マイ・ジェネレーション」のカヴァーバージョンが収録されている。
それに伴ってパティは当時のことを振り返りながら、このアルバムジャケットに関してこんな印象的な言葉を残している。

「今それを見ると、わたしたちの世代に特有の、神聖な歌のような無アート性を確かに捕らえているのが確認できるわ。」

「わたしたちの世代。興奮するため、驚きのため、若さの可能性のすべてを共鳴させようと、新しい風景を探した種族。」




奴らは俺達を押さえつけようとする
ただちょっと目立つからって
あいつらはひどく冷たい気がするぜ
あんな風に歳を取る前に死にてぇよ!

これが俺の世代!
これが俺達の世代なんだ

お前らみんな消えちまったらどうだ?
俺達が言ってること全てを判ろうとするなよ
別に大騒ぎしようとしてるんじゃない
ただ俺達の世代のことを言ってるだけなんだ

これが俺の世代!
これが俺達の世代なんだ



いつの時代にも、どんな世代にも“主張”がある。
「今」を生きる若者達。
「今まで」を生きてきた大人達。
「これから」を生きる子供達。
新しい風景を探す種族=若者達が今、心から“平和な未来”を願っている。
我々は選択を過ってはならない。
このアルバムジャケットに写るパティ・スミスの瞳は…世代を超えて言葉以上の何かを語り続ける。


世界は今、戦争の方向へと向かおうとしています。
戦争はすべて道徳に反しており、間違ったものです。
戦争の結果は、あなた達の祖先が経験した
悲惨なものでしかありません。
戦争の悲惨さを日本ほど理解している国はありません。
自分達の歴史を学び、子ども達に教えて、世界の見本となって下さい。
広島や長崎の悲劇を、私達は忘れてはなりません。

私は戦後、1946年に生まれた者として、先祖に代わって謝ります。
あなた達の国で起きたことについて謝ります。
原爆を作ったことに対して謝ります。
世界中の子ども達が原爆と言う恐怖に見舞われ、
生きなければならなくなったことを謝ります。

(2002年フジロック・フェスティバルのステージでパティ・スミスが語った言葉より)


PATTI20SMITH20HORSES
パティ・スミス『Horses』
1975年/BMG JAPAN


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