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キース・ジャレット〜クラシックからボブ・ディランの楽曲までジャンルを超えた音楽表現をする孤高のジャズピアニスト

2016.05.08

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キース・ジャレット。
一般に“ジャズピアニストの巨人”の一人として広く認識されている彼だが、実はピアノだけにとどまらず、ソプラノサックス、パーカッション、ハープシコード、リコーダーなど様々な楽器を巧みに操る“天才肌アーティスト”なのだ。
ジャズはもちろんのことクラシックからボブ・ディランの楽曲までジャンルを超えた音楽表現を身上とする。
その指先が奏でるメロディーの美しさもさることながら、中腰の姿勢で、時折うめき声を出しながらピアノを弾く姿が印象的な彼。
今日は、現在70歳を越えた彼の生い立ちと足跡をあらためてご紹介します。


1945年、彼はアメリカのペンシルバニア州で音楽好きの両親のもとに生まれた。
3歳からクラシックピアノを学び始め、音楽的才能を発揮する一方で小学校も飛び級で3年生から入るなど、学力でも優秀な子供だったという。
しかし彼が11歳の時に両親が離婚。
経済的に苦しくなった中でも彼はピアノを続けさせてもらっていたが、15歳の時にそれまで習っていたクラシックのレッスンをやめざるを得なくなり…徐々にジャズに傾倒してゆく。
そして16歳でジャズクラブのピアニストとしての仕事を得る。
さらに18歳の時に奨学金をもらえることが決まり、バークリー音楽大学に入学しボストンに移ったが…たった1年で退学。
この頃の彼は生活が苦しく、地元のコマーシャル音楽などの仕事もしていたという。
1964年、19歳になった彼は高校時代からのガールフレンドとボストンで結婚をする。
しかし、その生活は苦しく…当時は妻の仕事で生活しているようなものだったという。
当時の彼の音楽活動と言えば、バークリー音楽大学で教師だった2人とトリオを組んでの活動だったが“成功”と言う二文字にはほど遠いものだった。
しかし、ある日彼に転機が訪れる。
ボストンのジャズクラブでセッションをしていたところ、キャノンボール・アダレイ六重奏団のサックス奏者チャールス・ロイドがそれを聴き、19歳の彼にニューヨークへ行くことを薦めた。
早速ニューヨークに新たな拠点を移した彼だったが…やはり鳴かず飛ばずの日々が続いた。
彼はグリニッジ・ヴィレッジにあるジャズクラブ“ヴィレッジ・ヴァンガード”に通い詰め、どうにかセッションに参加する機会を待った。
そして幸運にも同クラブで初めて演奏する機会を得た時に、偶然ジャズドラマーとしてその名を轟かせていたアート・ブレイキーがその場にいたのである。
アート・ブレイキーは当時ちょうど自身のバンドの新しい編成を考えており、その日のうちに彼を勧誘したという。
その後、アート・ブレイキーとの関係は4カ月ほどで終わってしまったのだが、これをきっかけに彼の名前はある程度広まることとなった。
1967年にはトリオ編成を組み初のリーダーアルバムを制作。
その後はマイルス・デイビスグループに参加するなど、着実に成功への階段を昇りつめてゆく。
翌年に発表したアルバム『Restoration Ruin』で、彼は11種類もの楽器を一人で演奏しており、その非凡な才能でジャズファンを驚かせた。
また、その直ぐ後に発表したライブ盤『Somewhere Before』で、彼はボブ・ディランの「My Back Pages」を取り上げ、ジャズファン以外からも注目を集めるようになる。


その後、当時の新進ジャズレーベル・ECMに移籍して発表した彼の作品は、歴史的名作として名高い『Solo Concerts』(1973年)『The Köln Concert』(1975年)をはじめ“キース・ジャレットのスタイル”を完成させたものとして広く知られるようになる。


1980年代に入ると彼は積極的にクラシックを演奏するようになる。
しかし、その演奏経験を通じて結局は「ジャズこそが自分の音楽である」ということに気づいてゆく。
その後も順調に活動していたが1996年のイタリアでのコンサート中に慢性疲労症候群という病気になり約3年間活動を休止した。
休養後に『The Melody At Night, With You 』(1999年)、『Whisper Not – Live in Paris 1999』(2000年)で復活し、2年連続してスイングジャーナル誌のジャズディスク大賞を受賞するという快挙を成し遂げている。
その後も精力的に活動し、2003年には“音楽界のノーベル賞”とも言われるポーラー音楽賞を受賞した。





キース・ジャレット『The Melody At Night, With You』

キース・ジャレット
『The Melody At Night, With You』

(1999/ ECM Records)


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