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真実を語る“詩人の血”

2013.12.29

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「パティ・スミスは、詩という物の中にどれほどのロックンロールがあり、ロックンロールという物の中にどれほどの詩があるかを示して見せた。」

スウェーデンのカール16世グスタフ国王の前で、彼女はこのように紹介された。
2011年8月、パティ・スミスは“音楽界のノーベル賞”とも言われるポーラー音楽賞を受賞したのだ。
それは、音楽における創造性や発展への功績を讃える国際的な賞で、過去にボブ・ディラン、ポール・マッカートニー、B・スプリングスティーン、ジョニ・ミッチェルも受賞している。

ロック&ポップス界には、ディランを筆頭に「詩人」として高く評価されているアーティストが数人いる。
代表的なところでは、レナード・コーエン、ジム・モリソン、トム・ウェイツ、そして2012年のポーラー受賞者ポール・サイモンなどの名前があげられる。
そんな中、彼女もまた「パンク・ロックの詩人」として世界に知られる存在の一人だ。

1975年に彼女が世に放った1stアルバム『Horses』は“ロックの名盤”として名高い。
そのオープニングを飾る「グローリア」は、アイルランドが誇るボーカリスト、ヴァン・モリソン率いるThem(ゼム)が1965年に発表した名曲のカバーだ。
彼女は、その歌詞の冒頭に強烈なメッセージを加えて歌った。

イエスは誰かの罪のために死んだ
でも私の罪のせいじゃない!

この加筆に関して、彼女はこんなコメントを残している。

「(この表現は)自分自身の行動に責任を持つという宣言と、ロックンロールの無政府主義的な喜びとが一つになったもの。」

同曲は、ドアーズ、D・ボウイ、B・スプリングスティーン、そしてアイルランドの雄U2など多くのアーティスト達がステージでカバーしている。

ここまでに触れたアーティスト達には、或る共通点がある。
彼等はアメリカ、イギリス、カナダと生まれた国は違えど、少なからずアイリッシュ音楽からの影響を受けているのだ。
そんな彼等のルーツを辿ると、その多くはアイリッシュやスコティッシュの血に繋がってゆく。
“マッカートニー”や“モリソン”の名が表す血脈。
この賞を授賞したパティ・スミス、B・スプリングスティーン、ジョニ・ミッチェル、そしてD・ボウイやトム・ウェイツにも“その血”が流れている。

「詩人」と呼ばれるアーティスト達の歌は、世相を斬り、時代の姿を映し暴く。
彼等の血統は、長い時間(とき)の旅を経て、国境・人種・宗教の壁を超えてきた。
いつの時代も「真実」を語るのは“その血”なのかもしれない。

♪「Gloria」/パティ・スミス


【解説】
パンク・ロックの詩人
彼女は十代の頃から詩人ランボーに憧れ、ディランの詩や歌声に触れながら、徐々に「表現者」として目覚め始めた。23歳の頃にNYのチェルシーホテルに移り住み、ビート詩人と呼ばれたアレン・ギンズバーグやウィリアム・バロウズなど様々なアーティスと達との交流を経て、独自のスタイルを確立させていく。

PATTI20SMITH20HORSES
パティ・スミス『Horses』
1975年/BMG JAPAN

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