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Happy Birthday To You〜世界で一番歌われている曲の原曲は“おはようの歌”だった

2017.09.03

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「この曲を知らない人はいない」と言っても過言ではだろう。
世界で一番歌われている曲としてギネスワールドレコーズに載り、音楽著作権で史上最も稼いだ曲の第1位に選出されている。
1962年にマリリン・モンローが、当時のアメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディの誕生日祝いでこの曲を歌ったのはあまりにも有名なエピソードだ。


誕生日を祝うこの“おめでとうの歌”には原曲があり、その内容は“おはようの歌”だったという。
1893年にアメリカ人のヒル姉妹(姉のミルドレッド・J・ヒルと妹のパティ・スミス・ヒル)が作詞作曲した「Good Morning to All」という曲があった。


それを元にして1920年前後に現在一般的に知られている「Happy Birthday to You」が作詞されたと言われているが…その経緯や作者は不明のままだ。
各国語に翻訳されているが、日本などの英語圏以外の国であっても英語で歌われることが多い。
また、日本では「お誕生日の歌」という曲名で、丘灯至夫(おかとしお)による日本語詞が追加されたものがあり、主に日本コロムビアから発売された童謡集などに収録されている。


この歌が“おめでとうの歌”として世界中に広まり定着したのは1920年頃。
日本は大正期なので第二次世界大戦以前の歌となる。
それまで日本では誕生日を(今のように)祝う習慣がなかったので、なかなか歌われることがなかったという。
日本には“数え歳”と“満年齢”という年齢表現が存在する。
その昔、日本では誰もが正月元旦と共に一歳ずつ歳をとるものだったという。
そんな習わしを法律的に変えたのが、1902年(明治35年)に施行された“年齢計算ニ関スル法律”だった。
その主文にはこう書かれていた。

「年齢は出生の日より之を起算す」

ところが当時、この法律を誰も意に介さなかった。
庶民の生活はいつまで経っても“数え歳”のままだったのだ。
そんな状況を一気に解消したのが、1950年(昭和25年)の1月1日から施行された“年齢のとなえ方に関する法律”だった。

「従来の習わしを改めて言い回すのを常とするように心がけなければならない」

つまり、政府が国民に対して明治期に定めた“満年齢”を使いなさいと積極的に言い出したのだ。
政府にとってはアメリカから渡ってきたこの「Happy Birthday to You」は、誕生日を定着させるためのキャンペーンソングとしてうってつけのものだった。
その頃の日本と言えば、戦後のベビーブームの真っ只中。
菓子業界はバースデイケーキのキャンペーンを開始し、幼稚園や小学校では“お誕生日会”が毎月開かれ、お約束ごとのようにこの歌が唄われるようになったという。
一説では文部省が指導していたとも言われているが…確かな記録は残っていない。
“満年齢”と共に定着していったこの「Happy Birthday to You」は、ある意味、日本人の生活習慣を変えた歌とも言えるだろう。

<引用元・参考文献『唱歌・童謡120の真実』竹内貴久雄(著)/ヤマハミュージックメディア>

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