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風〜はしだのりひこが紡いだ珠玉のメロディー

2018.02.18

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1969年1月、はしだのりひことシューベルツはデビューシングル「風」をリリースした。
フォークミュージックを基調としながらも、普遍的な歌詞の内容とキャッチーなメロディーが大衆にウケて、58万枚を売利上り上げるヒットとなった。
「帰って来たヨッパライ」や「悲しくてやりきれない」などの記録的なヒットによって人気を博したザ・フォーク・クルセダーズ(略称:フォークル)のメンバーだった北山修が作詞を担当し、はしだが作曲を手掛けた作品である。
はしだ、北山、そして後にサディスティック・ミカ・バンドを結成することとなる加藤和彦が在籍したフォークルは、この楽曲が発売される3ヶ月前(1968年10月)に解散コンサートを行なっている。
新たに結成されたシューベルツのディレクターを担当した橋場正敏(東芝EMI)は、当時のことをこう振り返っている。

「初めから彼らのヒットは約束されていました。フォークルの解散ステージで、はしだはこの“風”を披露しました。デビュー前にしてシューベルツのプロモーションは完璧にできていたんです。」

人気グループの解散を惜しむ若者たちの心に、この歌はどう響いたのだろうか?
時代は学生運動・安保闘争の真っただ中だった。
ベトナム戦争に反対する若者が、新宿西口広場などで集会を開き、機動隊と衝突していたあの頃…
パンタロンやマキシスカート、そしてシースルールックを身にまとった“ヒッピー族”が街を闊歩しながらフォークソング口ずさんでいた時代にこの歌は生まれた。

人は誰もただひとり旅に出て
人は誰もふるさとを振りかえる
ちょっぴりさみしくて振りかえっても
そこにはただ風だけが吹いているだけ
人は誰も人生につまづいて
人は誰も夢破れ振りかえる

プラタナスの枯葉舞う冬の道で
プラタナスの散る音に振りかえる
帰っておいでよと振りかえっても
そこにはただ風だけが吹いているだけ
人は誰も恋をした切なさに
人は誰も耐えきれず振りかえる


2017年12月2日、はしだのりひこの訃報が届く。
長年患っていたパーキンソン病が死因だったという。
72歳で人生の幕を降ろした彼は、最期に何を振りかえっただろうか…
約600人が参列した葬儀では、シューベルツのメンバーだった杉田二郎が音楽仲間と「風」を演奏し、参列者全員が合唱してはしだを見送った。

「思いっきり魂を込めて歌え!」

それは杉田がアマチュア時代にはしだに教えられたことだった。
曲が売れてグループにおいしい話があっても「待て!俺たちのやりたいことは何だ?」と言ってメンバーを諭したという。
葬儀の最後に…杉田は遺影に向かってこんな言葉で語りかけた。

「のりさんと出会って50数年、本当にいろんなことを教えてもらいました。この“風”をずっと大切に歌い続けていきます。」

何かをもとめて振りかえっても
そこにはただ風だけが吹いているだけ 
振りかえらずただひとり一歩ずつ
振りかえらず泣かないで歩くんだ


<参考文献『フォーク名曲事典300曲』/富澤一誠(ヤマハミュージックメディア)>



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