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虹の彼方から聴こえる子守唄〜Over the Rainbow

2020.01.02

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虹の彼方、高い高いところに
そのむかし子守唄で聴いた土地があるというの


誰もが耳にしたことのあるそのメロディーは、1939年にミュージカル映画『オズの魔法使い』の中でジュディ・ガーランドが歌ったものだ。
2001年、全米レコード協会はこの「Over The Rainbow(虹の彼方へ)」を“20世紀の歌(Songs of the Century)”の第1位に選んでいる。

多くのシンガーたち、ミュージシャンがこの名曲を取り上げてきた。
人の数だけ、約束の地があるように、いくつもの歌声が“虹の彼方”へと届けられてきた。
日本の国民的スター歌手、美空ひばりがこの曲を取り上げたのは1961年、24歳のとき。
原信夫とシャープ・アンド・フラッツをバックに、恋する女心を織り交ぜて歌ったものだ。
1989年、ひばりが天国へ旅立ち“伝説の人”となった10年後…まったくの無名だった一人の女性シンガーが海の向こうで脚光を浴びた。
それは、20世紀が終わろうとする頃だった。


エヴァ・キャシディ。
彼女は、生まれ育ったワシントンD.C.にある小さなライブハウスで歌っていた。
ひばり同様、ジャズをベースに古今東西の名曲を独自のアレンジで歌うシンガー・ソングライター。
主にギター1本で弾き語るスタイルで、ある時はハスキーなジャニス・ジョップリンのように、ある時は素朴で繊細なカレン・カーペンターのように、そしてまたある時はソウルフルなアレサ・フランクリンのように…その声を震わせた。

2000年の或る日、イギリスのBBCラジオから彼女が歌った「Over The Rainbow(虹の彼方へ)」が流されると、問い合わせが殺到した。
その“無名の歌声”は、たちまちリスナー達を虜にし、この曲を収録した彼女のアルバム『Songbird』は瞬く間に全英No.1を獲得。
それに呼応するように、全米POPチャートでもNo.1を獲得。
しかし、そのとき彼女はもうこの世の人ではなかった。




その歌声がレコーディングされたのは1992年、彼女が29歳のとき。
それから4年後、彼女は33歳という若さで癌に倒れ“虹の彼方”へと渡った。
夭折した彼女の歌声は人々の想像力をかきたて、静かに注目を集め続けている。
そして、ひばりの歌声もまた、日本が大きな災害などで苦境に直面したとき、人々の“こころの絆”をつなぐ力となっている。


21世紀。
理想の未来を見失った今、子守唄が聴こえてくる。
美空ひばり。
そして、エヴァ・キャシディ。 
歌を愛した彼女達の声が“虹の彼方”から、聴こえてくる…。


Songbird
エヴァ・キャシディ『Songbird』
(1998/Blix Street Records)

20080814_01-03
美空ひばり『ひばりとシャープ −虹の彼方−』
(1961/コロムビア)

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