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ジョー・ペリー少年時代①〜ロックンロールへの目覚め、チャック・ベリーの衝撃

2018.12.30

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1950年9月10日 、彼はマサチューセッツ州北東部にあるローレンスという小さな町で産声をあげた。
母親はボストン大学で修士号を取得して卒業した頭脳明晰な才女だった。
彼が生まれた当時、公立高校で体育の教員をしていて、髪はショートカット、好奇心旺盛で“強くて誇り高いワーキングマザー”として時代を先取りしていたという。
父親もまた学生時代から成績優秀で、ケント州立大学で学んだ後に、ボストンのノースイースタン大学で会計学を専攻していた。
第二次世界大戦の終り頃、在学中の身で空軍に服していたが、終戦と共に大学へ戻り、卒業後は経理係の職を得て働くようになる。


「家族の集まりごとがあると“Turkey in the straw(藁の中の七面鳥)”を皆で歌っていたのを憶えている。父親が奏でるハーモニカ。そしてポルトガル製のウクレレをかき鳴らしているのは大叔父だ。繊細で美しいシェイプをした4弦の小さな楽器。彼らはその楽器(ウクレレ)のことを“カヴァキーニョ”と呼んでいた。その楽器の歴史は、神々からの贈り物と伝えられるギリシャの竪琴までさかのぼるそうだ。その楽器の音は、僕のイマジネーションを刺激した。楽器に触って弦がどうなっているのか知りたいと思った。その音が正確にはどこから出てるのか?知りたくてたまらなかった。」


彼が音楽に強く惹かれるきっかけを作ったのは、父親が購入したメゾネットタイプのアパートの片側を借りて住んでいた家族だった。
お隣さん一家には16歳と17歳の息子がいた。
その兄弟が弾いていたエレキギターの音が、共有の壁を通じて時々聴こえてきたという。

「僕はまだ6歳くらいだったけど、その音色がハートに入り込んできたんだ。時には彼らのプレイをこっそり観察していた。僕みたいな子供にとっちゃ、ジェームス・ディーンのように髪をなでつけ、エルヴィス・プレスリー風のレザージャケットを着込んだ彼らの姿は凄く物珍しかった。彼らが繰り返し練習していたレパートリーは、バディ・ホリーの“That’ll Be the Day”、エヴァリー・ブラザースの“All I Have to Do Is Dream(夢を見るだけ)”、そしてビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツの“Rock Around The Clock”だった。」





格好を真似だけするのは難しくない。
白いTシャツとブルージーンズをはいて、髪をポマードで固めればいい。
彼は音楽にハートを奪われつつも、不良の真似事をする気はなかったという。

「ギターさえ手に入れれば、僕もすぐに似たような音を出せるに違いないって思っていたよ。まだガキだったけど、口先だけじゃなく本当に実行できるって確信があったんだ。あとはトライするだけだってね!」


当時、彼の家で流れていた音楽はというと…アメリカの中流家庭でよく聴かれていた50年代のイージーリスニングだった。
パティ・ペイジのヒット曲、映画『南太平洋』や『回転木馬』の挿入歌など…刺激を求め始めた彼にとっては苦痛でしかなかったという。

「聴きたいのはもっとハードで強烈な曲だった。僕が音楽に興味を持ち始めたことを知った両親は、ギターじゃなくピアノを弾くことをすすめてきた。家のリビングには電子オルガンも置いてあって、レッスンを受けてみろと言われたんだけど…ピアノはどうしても安全なイメージがあって(笑)僕が欲しかったのは危険な匂いがプンプンするエレキギターだったんだ。求めていたのはスリルなんだ。とにかくギターが欲しかった。」


両親は簡単には彼にギターをあたえなかった。
それでも彼の頭の中は毎日、刺激的な音楽とギターのことばかり…
1959年、それは彼が10歳になろうとしていた年だった。
彼は初めてテレビで「Hound Dog」を熱唱するエルヴィス・プレスリーの姿を観た時の事を憶えているという。

「大胆不敵なエルヴィスの危険な香りと、あの刺激的なサウンドが女の子たちをゾクゾクさせていたんだ。世の親たちが到底受け入れがたいと判断したおかげで、その神秘性はますますアップしたわけさ。エルヴィスは確かに素晴らしかったけど、僕の世界を根底から揺さぶったのはチャック・ベリーだった!彼は二つの声を持っていた。歌声とギターが奏でる音だ。彼の歌声は強烈で、聴く者のハートをガッチリつかんで離さない。そしてギターが奏でる声は彼の心の声だ!リズムを刻む声は、火傷するほど曲を熱くするガソリンだった!」






<引用元・参考文献『ジョー・ペリー自伝~アロスミスと俺の人生~』ジョー・ペリー (著), デヴィッド・リッツ (著), 細川真平 (監修), 森幸子 (翻訳), 前むつみ (翻訳), 渡部潮美 (翻訳), 久保田祐子 (翻訳), 木戸敦子 (翻訳)/ ヤマハミュージックメディア>

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